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婚約解消?婚約破棄?


 先生との話も一段落したので、お礼を言い父を呼びに行こうとすると、先生に止められた。


「……おそらく心配して廊下にいらっしゃるのではないかと思います。良ければ少しドアを開けて覗いてみてください」


 私は先生の言葉に従いドアをあけた。


 ……いる。


 眉間にシワを寄せながら廊下を行ったり来たりする父が。


 もう少し分かりやすいと良かったんだけど。でも心配してくれていることが伝わり心なしか気持ちがラクになる。


 ガチャ 


「……お父様、お話しがありますので部屋に入っていただけますか?」


 そのままドアを開き父を招き入れる。


 父は私の声に一瞬ビクッとしたが、そのまま何事も無かったかのように部屋に入ってきた。


「体調はどうだ?」


 しかめっ面で聞いてくる。

 以前の私ならなんだその態度はと怒っていただろうが、今は不器用なだけだと分かり、なんだか父が可愛く見える。


「大丈夫です。実は怪我は保健医に治してもらい、先生に相談があったので痛いふりをしていました。すみません」


「……大したことないならそれで良い。」


 やはり怒ることなく受け入れてくれる。


「それでお父様に相談があるのですが。……私、エリオットとの婚約を解消したいです」


 私は父の目を見て宣言する。

 父も私の目をみながらこくりと頷いた。


「構わない。……遅いくらいだ」


 良かった。婚約は解消しても良さそうだ。


「もし、可能なら破棄も視野に入れています」


「……破棄か。何か具体的にエリオットのお前に対する婚約不履行があるのか?」


「はい、私のことをないがしろにしていることです。体調を崩しても手紙一つよこしませんし、私が歩み寄っても口を開けばこちらを悪く言うばかり。たとえ表面上でも婚約を上手くいかせようとする素振りが全く見えません。陛下の勅命ということも忘れ、学園では聖女の味方ばかり。家と家との契約も疎かにしています。また、今日は私の話を聞かないどころか、自分の考えを押し通すために暴力を振るう始末。どれをとっても私のことを下に見すぎです」


 考えるだけで腹が立ってくる。ただ、浮気などがないと難しいのかな。


「……そうか。お前が辛い思いをしていたのは知っている。陛下には解消の話は通してあるのだが、破棄となると証拠集めや証人の話を聞くなど時間がかかるかもしれない。また、虚偽の証人や証拠などを持ち出すおそれもある。時間がかかるかもしれないが、それでも良いか?」

 

 時間か……。長々付き合うのは面倒くさいし、もし破棄できなければ私が魔王化する可能性も出でくるから、それは正直避けたい。


 でもあれだけ私をないがしろにした相手に目にもの見せてやりたい気もする。


「それにおそらく破棄となれば金銭はもらえるが、エリオットには聖女がいるから、結婚に関してあちら側がダメージを負う可能性は低い。一方のお前は婚約破棄というレッテルが張られるため結婚相手としての価値が下がる可能性がある」


 別に今でも私の評判は最悪だろうから、価値が下がるのは構わないが……どちらを取るべきだろう。


 速さでいくなら婚約解消、気持ちでいくなら婚約破棄。どちらも一長一短がある。


 それにしても、どうしてエリオットはここまで私を嫌っているのだろう。ここまで嫌われてもなおメイリアは嫌いになれないと言っていたから、過去の2人の関係は悪くなかったんじゃないかと思うんだけど……。


「お父様一つ確認しても良いですか?」

「ああ、何だ?」

「私とエリオット様はお父様から見て、いつからこんなに関係が悪化したのでしょう?考えてみても分からなくて……」


「……それが私にも不思議なんだ。婚約を結んだ頃はむしろエリオットの方がお前に執着しているように見えた。ほぼ毎日遊びに来ていたしな。だから、婚約者としても私も認めていたんだが、学園に入学してから連絡一つ寄越さなくなり、聖女と親しいという噂まで立つ始末。まるで何かに取り憑かれたようにお前のことを悪く言っていると聞いて、これは駄目だと陛下に婚約解消の許可を取っていたんだが……」


 なるほど。それなら、聖女の魅了説もまんざらではないかもしれない。


「お父様、魅了魔法というのは存在しますか?」

「魅了魔法か!あるぞ!ただ、我が国ではなく隣国で二、三十年前に使われたケースがあったはずだ。確か隣国には魅了魔法を使っているかどうかが分かる魔導具もあると聞いている……もしかして聖女か?」


 さすがお父様。その可能性にすぐに気づかれる。

 

「はい。今のエリオットには本当に話が通じなくて……昔はそうじゃなかったからもしかしたらと思いまして」


 ただ本当に馬鹿なだけという可能性も高い気もするが。


「可能性はあるな……また、陛下に進言して隣国の魔導具を貸してもらえる手はずを整えておこう」 


 だが、もし魅了魔法にエリオットがかかっていたら、とけたらまた私との婚約話が復活するのでは?


「お父様、もし魅了魔法にエリオットがかかっていたら、婚約話がまた持ち出されませんか?」

「……その可能性は高いだろうな。そもそもお前につり合う年頃の同じ身分の相手が、エリオットか辺境伯の息子くらいしかいないからな」


 無理。たとえ魅了魔法にかかっていたとしても、ここまで私を悪くいう相手と結婚なんて絶対に無理。やった側は忘れても、やられた側は一生忘れられないものだ。今日掴まれた腕の件については今でも思い出すだけで怒りがわいてくるのに。


 私はどうすべきかと途方にくれた。


 

 

 

 

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