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静まりかえる教室


 次の日学園に昨日と同じように登校する。そして教室の席に座っていると、聖女も登校してきた。もちろん一人である。


「あら、クレア様今日はお一人ですか?」

「……ええ、いつもの待ち合わせ場所に二人とも来なくて、体調不良でお休みかしら……」

「そうなんですね」

「二人同時に休むことなど今までに無かったので心配で……」

「大丈夫ですよ」


 聖女はひどく不安そうな顔をしている。それを周りが「大丈夫」となだめている。


 いやいや。恐らく大丈夫じゃないですから。

 私はついうっかり微笑みそうになるのを懸命にこらえ、顔を引き締める。


 ガラガラガラ


 担任の先生が入ってくる。


 聖女を取り囲んでいた人達も慌てて席に着いた。


「出席を取る前に一つ伝えておくことがある。本日をもって、シリン男爵令嬢とケリー男爵令嬢は家庭の事情により退学した。残念だがもう登校してくることはない。家庭の事情なので詳しい事情は分からん。このことについて詮索しないように。以上だ」


 ザワッ


「嘘!何で……」

「お二人同時なんて何かあったのかしら……」

「……もしかして……」


 教室がどよめきに包まれる。


「静かに。俺は詮索するなと言ったぞ。貴族の家庭の事情は首を突っ込むと碌なことにならん。これを言ってもまだ話を続けるヤツは相応の覚悟をしろ」


 シーン


 教室が一気に静まりかえる。


「お前達淑女科として覚えておけ。貴族に仕えるなら何を大切にすべきかを。それが分からなければ恐らく卒業してからもうまくいかんだろう。では、授業を始める」


 その後は皆、始終不安そうな顔つきで授業に臨んでいた。


 なぜ二人がいなくなったのか、先生の言葉で気付いた人間はまだ救いがある。何人かの生徒は周りに気付かれないように私の方を盗み見ていた。


 いや。そりゃあそうでしょ。いくら学園が自由をうたっていたとしても、卒業したら身分の枠組みの中で生きていくのだ。上位貴族に目をつけられたら、今後の人生先行きは明るくない。


 そしてこのクラスの最上位貴族は私である。


 私に睨まれたら終わりだということをどうして誰も気付かなかったのか理解に苦しむ。たとえ、気に食わない相手だとしてもメイリアから絡みにいくことは無かったのだからそっとしておきさえすれば、実害は無かったのに。


 寝た子を起こした者がそれ相応の処罰を受けただけだ。


 お昼休みになっても、ほとんどの生徒が昨日のように明るく騒ぐ様子もなく、しゃべれば罰せられるかのように無言で教室を出て行った。


 ただ、やはり空気が読めない生徒は何人かいる。その筆頭がもちろん聖女である。


「……こんな急に……何があったかは分かりませんが、エリオット様に相談してみますわ」

「そうですわね」

「私もご一緒します」


 退学した二人の後釜狙いなのか、休み時間ごとに聖女に話しかけに行く二人がいる。


 さて、彼女たち二人には私のやり返しポイントが貯まらないことを願おう。


 聖女達のやり取りを横目で眺めつつ、私はお弁当を食べに中庭に出た。


「あの……メイリア様……」


 私が一人で料理長お手製お弁当を食べていると、目の前に3人のクラスメートが現れた。


「はい、なんでしょう?」


 もうすぐ昼休みも終わるから手短にお願いしたい。


「今まですみませんでした」


 3人揃ってきれいに頭を下げられる。


「いえ、あの貴方達に謝られるようなことに心当たりか無いのですが……」


 教室でもどちらかといえば大人しいグループに属している3人である。あまり目立たないし、接点もおそらくない。


「いえ、私達は何もしませんでした。……それが今考えれば間違っていたと。自ら動けなくても家族なりに相談すれば対処の方法はあったと思っています」


 良かった。まだ淑女科にも賢い方がいた。ただ、私自身は別にこの方達からなんら被害を被っていないので特に何とも思わない。むしろ謝るだけ人としてマシな気がする。 


「お気になさらずに、私実害がなければあまり気にならないタイプなんです」


 これは本当である。私自身も私のような人物がいたら出来るだけ関わらないように対処すると思う。


「ありがとうございます。また何かあれば遠慮なくおっしゃってください」


「分かりました」


 3人はもう一度丁寧に頭を下げると教室に戻っていった。


 私は急いでお弁当の残りを食べると、教室に戻った。


 さて、聖女様はどうするかしら?

 


 

 

 

 


 

 

 

 

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