その後
「……聖女様はどうなったのでしょう?」
ひとしきり泣いて涙が落ち着いた頃、そっとライオネルから体を離して聞いた。
「……聖女は魅了の魔法を使ったことが確認され、また公爵家嫡男を廃人にしたことから神殿の地下牢に入れられることになった。聖女の力が使えるうちは生かされ、その力がなくなったら処刑されることが決まっている。聖女とも一生会うことはないだろう」
聖女。
物語のヒロイン。
そしておそらく私と同郷の唯一の人物。
メイリアが憎くて憎くて仕方がなかった人物。
全てを手に入れることができたのに、全てを失ってしまった人。
私はそんなに良い人じゃないから、私を殺せと命じた聖女の処遇には同情しない。
さんざんメイリアを追いつめてメイリアを芽衣にしてしまったのだから。
でも私も自分の罪からは逃げない。
それが私なりの聖女への手向けである。
おそらく私がメイリアにならなければ聖女は聖女として幸せに暮らせたはずだ。それを私が奪ったことは決して忘れない。
聖女か主人公の物語をバッドエンドに変えたのは私である。
だからこそ今しなければいけないのは……
「……ライオネル様、婚約を解消いたしましょう」
私は静かにライオネルに告げた。
エリオットがいなくなった今、私がライオネルと婚約する必要はない。
「ミシェルちゃんの治療は続けますわ」
そちらも、ライオネルの家に戻っても治療ができる。
「だから3年待つ必要はありませんわ」
ライオネル、もう一人のヒーローには幸せになってほしい。
「どうして急にそんなことを?」
「……ライオネル様、私の話を聞いていただけますか?」
荒唐無稽な話だけど、ライオネルならきっと聞いてくれる。そんな気がした。
私はゆっくりメイリアと入れ替わった日からの話をした。
「……だから、私に縛られる必要はありません。そもそも私はメイリアですらないのですから」
「……それで君はどうするんだ?」
「……そうですね。修道院っていうがらではないので、何か仕事を見つけて将来は働きたいと思います。そして私を愛してくれる方と一緒になれたらと思います」
物語に縛られることなく私は私なりのメイリアとして人生を歩んでいく。恋愛だってしてみたい。
「……そうか……私の気持ちは全く伝わっていなかったんだな。これからはもっと分かるように伝えるとしよう。メイリア=ファビルス嬢、俺が知っているメイリアは君いがいの何者でもない。俺と対等に張り合って妹を大切にしてくれて、意外と涙もろくてよく笑って、そんな君に私は恋をした。3年は契約書に互いを尊重するとあるから、ガンガン君を口説こうと思う。……ということでよろしく頼む」
そう言うと、私の手にキスを落とした。そしてギュッと抱きしめられる。
えっ?
これってどういう状況?
顔が赤くなっているのが自分でも分かる。
「……ほう。押しに弱いのか……」
ライオネルは私と目を合わせ、ニヤリと笑いながら不穏な発言をする。
「いえ、あの、私は……」
自分でもパニックになっているのが分かる。
いや、だって憧れていた人に急に告白されて抱きよせられているんですよ。誰だって焦るでしょう。
その時どこかからか
頑張って
という声が聞こえた気がした。
……メイリア?いえ芽衣?
「とりあえず、お友達からよろしくお願いします」
私は慌ててライオネルから距離をとろうとするが、ライオネルの腕はびくともしない。
ひ――!!
展開が早すぎます。
「……友達、友達から。お願いします」
バンバンライオネルの腕を叩くがニヤリと笑って全く緩めてくれない。
「ライオネルと呼んでくれたら離そう」
いや、早速呼び捨てはハードルが高くないですか。
「お姉様、目が覚めたって……あら、お邪魔でしたか?」
ミシェルちゃんが慌てて部屋に入ってくる。
「……ああ」
「まぁ、じゃあまた後で」
そう言うとミシェルちゃんはすぐにドアを閉めた。
待って、2人きりにしないで!!
「メイリアが起きたって?」
今度は外で叫ぶ父の声が聞こえる。今の状況を見られたら早速の修羅場である。婚前前にはしたないと……。
「ライオネル!!だから、離してください!!」
恋愛初心者なんです。お手柔らかにお願いします。
とりあえず私もメイリアとしてこの世界で幸せになってみせます。
だから芽衣。あなたも幸せにね。
なんとか完結させることができました。更新が滞り申し訳ありませんでした。最後まで読んでいただきありがとうございます!また、聖女視点も書いてみたいなと思います。ありがとうございました!!




