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新生活に向けて


 夜、私とライオネル父で晩餐をともにする。


「侯爵様、このたびは私と妹を受け入れていただき本当にありがとうございます」

「いや、娘が決めたことだ」

 父は安定の仏頂面である。


「メイリアも妹のことも含め、本当にありがとう」

 ライオネルの飾らない笑顔にドキッとする。……やっぱりかっこい。普段笑顔を見せないからこそ、破壊力抜群である。


「いえ、私なんかと婚約していただけるだけでありがたいですわ」

 婚約解消とはいえ、評判はよくないからね。

 

「……私なんか?」

「……君は十分魅力的だが……」

 父とライオネルが2人で顔を見合わせる。


「……これは問題ですね」

「……だろう。あまりに前の婚約者がひどすぎてな」

「なんとか私の方で信じていただけるように努力します」

「ああ、とにかく君には期待している。よろしく頼む」

 その後2人の会話が弾む。何の話かは分からないが、父とライオネルもうまくやっていけそうで何よりである。


 食事が終わり、ライオネルにエスコートされて自室に戻る。


「ミシェルちゃんは夕食も食べられた?」

 

「ああ、昼よりも量も食べられたし、顔色もよくなった。本当にありがとう」

 またも、笑顔である。

 ……さすが主人公。眩しい。

 赤くなった顔をごまかすように私は早口で告げる。

 

「いえ、それでミシェルちゃんをのことで何点か注意してもらいたいことがあるの」

「分かった。メモをとっても構わないか?」

「もちろん。1つ目、食べ物は全て別宅で作られた物にすること」

 昔芽衣だったとき、アレルギー物質を食べてないのに症状がでた例を聞いたことがある。別の物を作る工程で混入したと言っていたから万が一は避けたい。


「分かった」

「2つ目、1日一回は中庭にでて日光浴か散歩をすること」

 陽の光にも力がある。植物じゃないけど、浴びると元気になるからね。それに体力も少しずつつけていかないといけないし。


「最後にもし万が一症状がでたら、食べるのをすぐにやめること」

 本当はアレルギーにな効く薬があれば良いんだけど、またお爺ちゃん先生に相談してみよう。


「3つともミシェルとサラと共有して守るようにする」

 ライオネルは大きく頷いた。


「この3つを守れば、良くなるはずです。あと、本宅の図書館など特に入ってはいけない場所はありませんので、自由にお過ごしください」

「ああ、本当にありがとう。……明日からは学園まで俺がエスコートする」

 

「……いえ、そこまでしていただかなくても」

 役得だけど、ライオネルに悪い気がする。

 

「いや、俺がしたいんだ。じゃあ、また明日」

 そう言うとライオネルは颯爽と部屋をでて行った。


 明日からが楽しみなような楽しみじゃないような……

 学園で騒がれること間違いなしである。


 ドキドキしながら布団に入る。そのまま夢の世界へといざなわれた。


 次の日朝食を済ませ玄関を出るとライオネルとミシェルちゃんサラさんが待ちかまえていた。


「ミシェルちゃん大丈夫なの?」

 急に動くと反動がすごそうだけど。

 

「はい!ぜひお義姉様に朝の挨拶がしたくて……」

 確かに昨日より、顔色は良い。

 

「それは良かった。でも、無理は禁物よ。まだまだ一緒に過ごすんだから、今日はこれで部屋にお戻りなさい」

「はい!いってらっしゃい、お兄様、お義姉様」

 満面の笑顔で見送ってくれる。


 可愛い。

 シスコンになりライオネルの気持ちもよく分かる。

 

 ミシェルちゃんはメイドのサラさんに手を引かれそのまま別宅へと戻っていった。


「じゃあ、行こう」

 ライオネルに手を握られ、馬車の中にエスコートされる。


 正直芽衣だった頃も異性との付き合いは皆無で、慣れてないせいか手を握られるだけで顔が赤くなる。


「顔が赤いが大丈夫か?」

「大丈夫です!!」

 ライオネルに顔を覗き込まれて慌てて答える。やっぱり顔が良い。

 

 婚約者として、申し分なさすぎて逆に困る。


「俺は領地経営科に所属してるから、もし困ったことがあればいつでも来てくれ」

「はい。分かりました」

 

「ちなみに、エリオットには婚約解消は伝わっているのか?」

「それが、今騎士科が遠征に行っていてまだ伝えられていないんです。ご両親はご存知ですが」

 本当は早く伝えてスッキリしたいのだが。

 

「そうか……じゃあ、まだ学園ではあまり一緒にいないほうが良いか。昼食などはエリオットに伝えてから一緒に食べるとしよう」

「いえ、学園での級友との交流も大切でしょうし、朝も晩もお会いできるので昼食は別で大丈夫です」

 さすがに朝、昼、晩と一緒は束縛しすぎだろう。そこまでいったら契約の域を超えそうだ。


「いや、俺が一緒に食べたいんだ。もちろんメイリアの交友関係を邪魔する気はないから、一緒に食べられる日はまた声をかけてくれ。とりあえずはエリオットに伝えてからだがな」


 本当にできた婚約者である。


 これが本当の婚約だったら良いのに……と不相応な思いをちらりと抱いてしまったのは内緒である。


 

 

 


 

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