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病気の妹


「……お兄様この方は……?」

 

 ベッドに横たわる少女は驚くほどライオネルに似ていた。銀の髪に紫紺の瞳、ただし青ざめた顔と痩けた頬、病気のため痩せてしまった体は抱きしめたら折れそうなほど細い。

 確か9歳だったはずだが、6、7歳くらいにしか見えない。


「メイリアだ。私の婚約者になる」

「まぁ、じゃあ私のお義姉様になる方ですね」

 そう言って興味津々な顔を私に見せてくれる。体は細いけれど、思ったより気持ちは元気そうである。


「はじめまして、私ミシェルと申します。こんな姿で申し訳ありません」

「いえ、こちらこそ急に部屋に入ってしまいすみません。メイリアと申します」

 私はミシェルちゃんに笑顔を向ける。

 

「……私嬉しいんです。お兄様が大切な人と出会えて。いつも私のことばかりだったから……」

「ミシェル、そんなことはない。ミシェルといる時間よりも大切なものなんてない」

 ライオネルはミシェルの手を握り語りかける。

 

「ほら、お兄様。既にアウトですわ。私が婚約者だったら今の発言で婚約破棄を考えますわ。これからはお義姉様を一番に考えてください」

「……いや、だが……」

 困った顔をするライオネル様を見かねて私が助け舟を出す。


「ミシェルちゃん、私とライオネル様はミシェルちゃんの病気を治したいという思いから仲良くなったの。たまたま、私が研究していた治療法をライオネル様がミシェルちゃんに試してみたいと言われて……だから私たちの恋のキューピッドはミシェルちゃんよ」

「そうなんですか!私、嬉しいです。私でもお兄様のお役に立てたなんて。しかもこんな美人で優しそうな人が私のお義姉様になってくれるなんて!」

 

 ……眩しい。

 輝くばかりの笑顔をミシェルちゃんは私に向ける。

 嘘は言ってないけれど、多少いやかなり誇張して言ったから少し気まずい。


「ああ、それでメイリアが言う治療法を試してみたいんだが、それにはメイリアの家に行く必要があるんだが構わないか?メイドのサラと俺も付き添うつもりだ」

「もちろんです。治る可能性があるなら、ぜひ試してみたいです。……でも高名なお医者様でも治せなかった病気です。もし、よくならなくても私のお義姉様でいてくれますか?」


 本当に素直で良い子である。ライオネルがミシェルちゃんが可愛いくて仕方がなくて何としても助けたいと思うのも頷ける。


「もちろんよ!でも、きっと治ると私は信じているわ」

「はい。私も信じてみます」


 どうやら、ミシェルちゃんとも良い関係を築けそうである。


「じゃあ、辺境伯家に行く準備に取りかかる。ミシェルも持って行きたい物があれば、サラに申し付けてくれ」

「分かりました」


 ミシェルちゃんの部屋を出ると、ライオネルが私に頭を下げてきた。


「ありがとう。妹に優しくしてくれて」

「いや、これも契約のうちですから……それにミシェルちゃん本当に可愛かったですし」

「いや、それでも普段は見せない笑顔も見せて、あんなに楽しそうな姿は久しぶりに見た。契約だろうがなんだろうが、君のおかげだ」

 そんなに褒められると逆に気まずい。実際に契約のたてにミシェルちゃんをしたわけだし……。


「いえ、お気になさらず。これから3年間婚約者、夫婦としてやっていくんですから、できるだけ互いに尊重できたらと思っただけです」

 ライオネルは私の言葉に軽く頷いた。

 

「……そうだな、まだ時間はある。ゆっくり互いのことを知っていけたらと思う。とりあえず、しばらくは私もミシェルと一緒に滞在しても構わないか?」

「はい。もちろんです」

「では、準備してから伺うようにする」

「分かりました。先に家族に話をするので戻りますね」

「ああ、侯爵様にくれぐれもよろしく伝えてくれ。俺も父に速達で手紙をだす。……念のため君の婚約解消かが決まってからでも構わないか?」

「はい。それでは解消しだい、速達でお知らせしますね」

「頼む。それではまた」


 そこでひとまずライオネルと別れると、待機していた馬車に乗り込んだ。


 これでひとまず婚約者ができた。


 あとは無事に婚約解消を父が陛下から許可してもらえていますように。


 そこが崩れると今回の話の全てが狂う。祈るような気持ちで、私は窓の外を眺めた。


 


 

 

 

 いつも読んでいただきありがとうございます。書き溜めたストックが切れてしまい、少し更新頻度が落ちます。ゆっくりになりますが完結目指して書いていこうと思いますのでまたよろしくお願いします。

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