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新たな婚約者


「ふむ。メイリア様も侯爵様も考えが行き詰まっておられますな」

 

 今まで口を挟まずに黙って聞いていてくれた先生が口を開いた。


「私が思うに早く婚約解消して、新しい婚約者と幸せになることを考えられてはどうでしょうか?」


「新しい婚約者?」


 先生それは少し、話が飛躍し過ぎでは。それに今の状況ではかなり難しい気が……。


「いや、あながち悪い案ではないな。他国に視野を広げたらもっとマシなヤツがいるはずだ」


 いや、父よ。他国って、自国についてもよく分かってないのに無理じゃないかと……。


 ところが私の思いとは裏腹に、父と先生はどんどん新しい婚約者を迎える方向で話を進めていく。


「私もそう思います。こう見えて顔だけは広いですからメイリア様に何人かはご紹介できると思います」

「いや、先生に頼まずとも私の方で探してみよう」


「お父様も先生も、ちょっとお待ちください。もし学園を離れる方が良いなら私はしばらく修道院でも……」


 むしろそこで幸せに暮らせるならそれも有りだと思う。


「何を言うか、お前が悪いことなど一切ない」

「はい、メイリア様に否がないのに修道院などと考える必要もありません」


 父と先生の圧がすごい。


「……分かりました」


 とりあえず、今のところは引き下がろう。


「婚約破棄の件が長引き、万が一魅了魔法がかかっているとなると必ずエリオット様との復縁話が出でくると思います。……エリオット様も粘着質そうでしたので」


 確かにエリオットは粘着質そう。ただ、私に執着するのは想像できないけど。


「確か魅了魔法は本人の気持ちに隙が無いとかからなかったはずだ。また、同性にはかからないと聞いている。たとえエリオットが魅了魔法にかかっていたとしても、そんな隙をつかれるような相手にはメイリアはやれん」


「……お父様」


 初めて父親らしき言葉を聞いた気がする。


「それに先程から婚約破棄か解消かで悩まれていましたが、どちらになってもエリオット様の将来は暗いと思いますよ。聖女の評判の悪さは折り紙付きですから、すぐに破綻しそうですし。魅了にかかっていたら余計に立場がないと思われます。ですからメイリア様はただご自身が幸せになることを考えられたらよろしいかと」


 ただ、幸せになることか。

 

 芽衣の価値観だと結婚じゃないんだけどな。男性二人にはそれは伝わらなさそう。


「そうだな。早く婚約を解消して、お前にふさわしい人物と婚約したら良い」


「はい。私もそれが良いと思います」


 いやいやいや。

 そんなに簡単に婚約者が見つかるはず……


 ……待てよ、いるじゃない!

 とっておきの婚約者候補が!!


 彼ならエリオットに見劣りしないどころか、今のエリオットなら足元にも及ばないだろう。


「お父様、婚約解消で進めてください。私に一人婚約者になってくれそうな人物に心当たりがあります」


「……分かった。だが、他国も視野に婚約者を探してみるからお前はあまり心配しなくてかまわない。……だがもし本当にいるならお前を幸せにしてくれる相手なら多少の身分差も目をつむろう」


 父なりに私を気遣い、かなりの譲歩をしてくれているのが伝わってくる。


「ありがとうございます」


「いや……」


 父はそれきり黙り込んでしまった。

 でも顔が昨日と同じで心なしか赤い。案外分かりやすい人なのかもしれない。


「話もまとまったようですし、私はこれで失礼します。侯爵様も陛下に伝えられると思いますが、私の方でも魅了の件について陛下のお耳にいれておきます」


 先生が席を立ち、こちらに挨拶される。


「魅了は私の勘違いかもしれません」

「その方が本当は良いので大丈夫です。何事にも備えておいて損はありませんから。ではこれで」

「先生ありがとうございました」


 私は先生に丁寧にお辞儀をすると、父に向き直った。


「お父様いろいろご迷惑ばかりおかけしますがどうぞよろしくお願いします」


「いや……婚約解消の手続きに移る」

 

 そう言うと父はこちらを振り向くことなく、足早に部屋を立ち去った。


 


 


  

 

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