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4話 『事件と予感』



「リョウ、聞いたか?」


「んぁ、どーかしたのか?」


リョウは教室で、ぼんやりと目の前の友人を見る


「今日の朝刊に大きく出てただろう?お前、ちょっとも見ないのか?」


「うっせえよ、俺の脳は新聞なんか読んだら他の事がぜーんぶ消えちゃうんだよ!」


「・・・まぁ、俺には関係ないから構わないけどさ、ちょっと位は見たら?」


「大きなお世話だよ、ミリ!」


ミリと呼ばれたリョウの友人は、苦笑しながらカバンから新聞を取り出した

リョウとミリはこの学園に来てから知り合った、リョウの多いとはいえない友人の一人だ

金髪蒼眼の彼は、人懐っこくリョウとは直ぐに友人の関係になれた


いつも気軽に誰とも付き合えるミリに、リョウはどこかあこがれてもいた


リョウはミリから差し出された新聞を受け取ると、一面を覗く


『深夜に通り魔出没か』


大きく見出しに書かれた文字を追い、リョウはため息をついた

襲われたのは男女1名ずつ、どちらも死んでいたらしい


「まだこんな事件が起こるんだなァ・・・」


「しみじみ読んでないで、先をもっと読めよ」


ミリがせかすようにリョウに言うと、リョウは少し疑問に思いながら先を読む

どうでもいい筆者の見解や、警察などの意見を軽く流し読む

そして、事件の起きた場所などが目についた


「この場所って・・・」


「そう、お前の住んでる学生寮の近くなんだぜ!」


「・・・」


昨日、リョウの住んでいる学生寮の裏側に数十メートル行ったくらいの場所で事件は起きていると書かれている

リョウはこんな事知らないし、周りの一緒に住んでいる学生や、兄からも聞いていない


「お前近くだからよ、何か聞いたりしてないのか?悲鳴とか!」


面白そうなことが聞けるかもしれないとミリはリョウに顔を近づけ、わくわくとした感じに聞いてくる

リョウはそんなミリに首を横に振るしか出来なかった


「・・・何にも」


「だろうなァ。お前、朝刊にかかれてた事も知らないくらいだしなァ」


「その犯人、本当に足がつかないらしいじゃないか」


諦めたようにミリが座っていた椅子の背もたれに寄りかかった時、横からそういわれる


「兄貴」


「ルーハ!」


やれやれといったようにルーハはリョウから新聞を取り上げ、一面を読む


「警察ですら手がかりが無くて参ってるんだぞ?そこらの学生がわかるわけ無いだろうが」


「でもよ!そこから何かを手に入れるのがロマンってもんだろ!学生探偵が誕生するかもしれないだろう!?」


「やめとけミリ、お前には探偵をするほど頭が良くないぞ」


「あンだとぅ!?」


ルーハにからかわれてミリが立ち上がる

しかしルーハはそれに臆する事も無く、ミリに丸めた新聞でぺしんと頭を叩いた


「なぁ、兄貴」


「ん?」


急にリョウに話しかけられ、ルーハはミリに言おうとした台詞を飲み込む


「本当に、何も無かったのかな」


「・・・どういう意味だ?」


「いや、襲われた人は悲鳴も上げられなかったのかなって」


「あぁ・・・」


「それはだな!」


ルーハを遮るようにミリが話し始める

ここが面白いところだと言わんばかりに


「なんでもな、襲われたのはカップルだったらしいんだ」


「カップル?」


「あぁ、つまり恋人同士って事なんだよ」


「そのくらいは解るわ!」


馬鹿にされたような感覚にリョウが怒るが、ミリがまあまあと手を前に出し、話を進める


「ほら、お前の学生寮の裏って、人通りがかなり少ないだろ?周りに街灯も無い」


リョウの学生寮の裏というのは、近くに寮があるものの、かなり人通りは少ない

学生寮の部屋から出る光では数メートル先が良く見えなくなるほど夜になると暗くなる


「だからばれないと思ったんだろうなぁ。死体で発見された時、男のズボンとパンツは足首くらいまで下がってて、女のほうは下着だけで他の衣類は脱ぎ捨てられてたらしいぜ」


「・・・なるほど、な」


ルーハは初耳のようで、納得したように頷いた


「・・・ってことは、これからって所か?」


リョウが少し顔を赤くしながら聞くと、ミリは手を顔の前で横にぶんぶんと振った


「これからってトコじゃない!今まさに、って所だぜ!――――そこで!」


パン、とミリが手を叩き、リョウの顔に指を指す


「何かが起きた」


「・・・」


何もいえなくなるリョウに、ルーハが口を挟む


「リョウ、お前はあまり読んでないだろうから言うが、死体は魔法でやられた可能性が高いようだ」


「・・・魔法で・・・?」


「そうそう!今までに例を見ないような魔法らしいぜ!きっと、どこか巨大な裏社会的な連中が出てきて、世界征服を俺たちの前で宣言するんだ!そして・・・」


勝手な妄想を語り続けるミリを余所に、リョウは首を傾げていた


「・・・どうかしたか、リョウ」


「なんでもないよ、兄貴」


少し気になったのか、ルーハの声が聞こえるが、適当に流しておいた




謎の魔法、昨日見た夢―――



(きっと気のせいだ、不思議な事がおき続けてるだけ)



そう、自分が不思議な経験をした後に、たまたまこんな事件が起きただけなのだ

だから、リョウは夢の事をルーハに言わずにしておくことにした


きっとミリと一緒に自意識過剰だと笑われるから

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