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【第46話】時の流れに身を任せて

~主な登場人物~


小峰慎志(こみねしんじ)

主人公。埼玉県所沢市の賃貸マンションで妻の千春(ちはる)、娘の真桜(まお)と暮らしている。

都内で建物の維持管理サービスを生業とする株式会社マホロバ・ビルサービスの社員。

まだ幼児の娘の面倒見で妻と奮戦。日々、父親として勉強中。


小峰千春(こみねちはる)

夫の慎志(しんじ)、娘の真桜(まお)と一緒に埼玉県所沢市の賃貸マンションで暮らしている。

男勝りな性格で気の強い面もある一方、妙にしおらしい態度を取ることもある。

実家は川越市にあり、父の名は月原篤(つきはらあつし)、母の名は月原万葉(つきはらまよう)


小峰真桜(こみねまお)

慎志(しんじ)千春(ちはる)の間に生まれた女の子。

保育園に通う三歳半。まだ世の中のことを分かっていない故に純粋で無垢。

元気で快活的なおてんば娘。YouTubeを見るのが好き。

挿絵(By みてみん)




季節は移ろいを繰り返し、月日は流れる。

かけがえのない日常。

まるで目に見えない矢印でも追いかけるように。

妻と娘と三人で、駆け抜けるように未来へ進む。

時を越えていく。


そして娘の真桜は3歳半になった。


真桜は見ていて飽きない。

大人からすれば何の感慨も湧かないような事にいちいち反応して、楽しそうにはしゃぐのだ。

子供の無垢で純粋な心。

世界の受け止め方、あらゆるものをありのまま受け入れる姿勢。

何事に対しても関心を抱いて感情を表に出すから面白い。

真桜を見ていると忘れていた”何か”を思い出す。

それは無邪気さというか、素直さというか、何だろう。

僕も幼児の頃は真桜のように振舞っていたのだろうか。

小さい頃の記憶なんて忘れてしまった。

ただ真桜を通して、まるでタイムスリップして幼児の頃の僕を見ているような…。

そんな気分にさせられた。




「もう といれ ひとりで できる」

「お〜!偉いぞ真桜〜!」


朝起きて一番にトイレへ向かい、ひとりでおしっこが出来たと真桜は僕に誇らしげに自慢した。

真桜のオムツが取れたのはつい最近だ。


以前、保育園でオムツを卒業するのが周囲の子より遅れていたこともあり、オムツに頼らないでトイレでおしっこしなさいと怒ったのは逆効果だった。

僕がオムツ卒業を急かしたことでトイレが嫌いになってしまい、かえって悪影響を与えてしまったのだ。

その点は反省である。

というか、父親として反省点はいっぱいある。

子育てとは単純そうで、なかなか複雑なのだ。

難しく考えると余計こんがらがってしまうが。

真桜の成長と比例するように、僕も父親として勉強を積んでいく。


「たいくつ〜!ゆーちゅーぶ みたい」


真桜は簡単な日本語を喋れるようになった。

日本語を教えたつもりはないが、言葉が飛び交う日常生活の中にいて、自然と話せるようになった。

不思議なものだ。

子供はこっちが思ってる以上に周囲の環境から影響を受け、ものすごい吸収力を発揮する。


「朝からYouTubeなんか見ない」


僕は真桜を注意する。

真桜はYouTubeでアンパンマンやベイビーバスの動画を観るのが好きだった。

僕も真桜が静かにしてくれるし楽だからという理由でYouTubeをよく見せてしまうのだが、それがこの歳でテレビっ子ならぬYouTubeっ子にさせてしまった。

何かある度に”YouTube見たい”が真桜の口癖になってしまった。

これまた親として反省である。


「やだ〜 ゆーちゅーぶ みたい!」


「YouTubeばっかり観てたら脳が腐るわよ!」


妻の千春が朝食の目玉焼きを作りながら千春に釘を刺す。


「ぶー!やだー!ゆーちゅーぶ!!」


真桜は頬を膨らませる。

しかし千春は動じない。

僕は真桜に駄々をこねられるとよく屈してしまうが、千春はそのへん堅固だった。

どんなに真桜が食い下がってきても絶対に折れない。

母親は強い。


千春の用意してくれた朝御飯がテーブルに並ぶ。

ご飯に納豆、味噌汁。ほうれん草に目玉焼きとソーセージ。

豪華な朝食だ、ありがたや。


リビングの床には所々に人形やらブロックやら子供の玩具が散らかっていた。


千春が真桜に告げる。


「真桜!朝御飯食べる前にオモチャを片付けなさい」

「やだー!」

「オモチャ片付けられないならオモチャで遊ぶ資格ないわね。捨てるわよ!」

「ひとりじゃできない!かなしい!!」


おしっこやうんちもひとりで出来るようになったが、遊んだ玩具を玩具箱に入れて片付けるのはひとりでは出来ないらしい。


「あなたも真桜に注意してよね!私ばっかり」

「千春の作る味噌汁は美味しいなあ」

「ごまかさない!ってか、それインスタントの味噌汁だから」


朝食を食べ終え、仕事に向かう支度をする。


「はぁ…仕事、憂鬱だな…」


昨年、僕は配属の異動があった。

かつては建物設備部の巡回課に所属し、都内の小規模ビルを複数担当していた。

しかし今は大型オフィスビルでの常駐勤務になったのだ。

大型物件の常駐現場でも経験を積んで欲しいという人事部の裁量だった。


残念なのは常駐型勤務になってから給料が下がってしまったことだ。

基本的にこの現場は残業がないので、残業代が稼げない。

それはそれで定時上がりで嬉しいといえば嬉しいのだが。

常駐勤務はノルマなどの数字に追われる必要もないのでそこも精神的に楽だ。

一長一短かな。


振り返ると仕事量だけいえば、以前の巡回課勤務の方が忙しかった。

しかし基本一人で裁量などを調整して仕事が出来るメリットもあった。

ある意味、仕事の充実感みたいなものは前の方が感じやすかったかもしれない。


今の常駐勤務はそんな環境ではない。

うちとは別会社の不動産会社の所長が上司となり、彼の指示の下、うちの会社の常駐員が複数人で仕事にとりかかる環境だ。

この所長がまた曲者で竹を割ったようなぶっきらぼうな人だった。

勤務中は監視するように僕らを見て、あーだこーだ言ってくるし疲れる。



仕事に行くのが億劫だなと思いながらも身支度を済ませる。


「そういえば真桜は今日お遊戯会だよね?」

「そうよ」


今日は地区の公民館で地域の保育園合同のお遊戯会。


「真桜のとこは演劇するんだっけ。何の役するのか知ってる?」

「海藻役。緑の草を身体中につけてひたすら腰を振るんだって」

「まお がんばるよー!」


真桜が拳を振り上げ、目を輝かせて海藻役の意気込みを表現する。


「…あはは、ビデオ撮っといてね」


「車で行くからどこかでガソリン入れないと」


そう、我が家も遂に車を購入した。

千春が必要になったのだ。

ダイハツのミライース。

車はそれ相応の維持費がかかり、所持することを敬遠していたが。

持っているとやはり便利だった。

単純に生活圏が広がった。


「それじゃあ行ってくるね」

「うん。いってらっしゃい」

「ぱぱ おしごと いってらっしゃい」


「千春、行ってきますのチューは?」

「は?」


千春が真顔になり冷たい視線を向けてくる。


「悲しいな〜、代わりに真桜チューして」

「わかったー」


真桜は千春と違い、嫌な顔せずに僕の頬にチューしてくれた。


「よっしゃ、今日も頑張るか〜!」



いつもの駅始発の電車、快速急行に揺られて都内の勤務地まで向かう。

途中の停車駅で人が雪崩のように乗車してくる。

座っていた人が降車の為に立ち上がると空いた席に座ろうと人が駆け寄る。

毎朝展開される椅子取りゲームは見慣れた光景だ。

みんな仕事前から必死なのである。


ぎゅうぎゅう詰めの満員電車。

電車が揺れると乗客も一同に揺れる。

それも一瞬のこと。

やがて何もなかったかのように、また乗客は直立不動に戻る。

みんな不満はあるだろうが、誰もそれを漏らさない。

電車内はまるで秩序が保たれたみたいに静寂だ。

音を発するのは電車の走行音とアナウンスだけ。

時々、誰かのイヤホンの音漏れが申し訳程度に聞こえてくる。



電車を乗り換え、地下鉄に乗る。

ここからは僕も座れずに立たねばならない。

揉みに揉まれる電車内。

人口密度が尋常ではない。

ここまでしてみんな毎日仕事へ向かうのである。


生きる為に仕事しているのか。

仕事の為に生きているのか。

分からなくなってしまうような生活。


ふと思う。

僕は社会人として成長しているのだろうか。

転職ばかり繰り返してきた僕だが、今の会社は長く続いている。

それは知識や経験を積んだことで技能が向上した賜物なのか?

はたまた精神力が身についた証拠なのだろうか。

今の僕なら以前、逃げるように辞めていった職場でも通用するだろうか。


⋯いや、通用しないだろうな。

職場でうまくやっていけるかどうかは知識や経験よりも相性次第。

たぶん僕は今の会社、今の職場環境に生かされているだけ。

自分のサラリーマンとしての成長にいまいち実感が持てなかった。


勤務地の最寄り駅に到着。

地下鉄を降り、地上に上がる。

ビルが乱立し、人や車が騒々しく行き交う都会の風景。

最近は観光客とおぼしき海外の旅行者をよく見かける。

その観光客の外国人が行き交うサラリーマン、OLに声をかけ道を尋ねる。

でも誰も立ち止まらない。

皆、朝は忙しく、自分のことで手一杯なのだ。

通勤時間の都内なんて、行き交う人はみんなギスギスしている。

イヤホンで音楽を聴いている人も、外国人に話しかけられてもイヤホンを外そうとしない。

外してくれる人、立ち止まってくれる人の方が稀だった。

無視され続ける外国人の観光客。

日本人は親切なんて、ここでは嘘みたいに思えるだろう。

僕だってそうだ。

申し訳ないが見て見ぬふりをする。

悲しいかな、自ら困っている観光客を助けようという心の余裕は無い。

朝の忙しい時間帯でなければ、立ち止まって助けてあげようという気持ちも湧くのだが。

仕事に遅刻してしまう。


がんばれ、旅人よ。

異国の地で、目新しい世界を見てときめく事もあるだろう。

期待とのギャップに戸惑う事もあるだろう。

それら全て旅の醍醐味だ。


ああ、自分が海外旅に出ていた頃が懐かしい。

バックパッカーとして世界を旅した2カ月ほど。

あの頃と比較して、今の自分は強くなれているだろうか。



ーーーーーーーーーー



「大したことねぇなー」


所長が履歴書を見ながらぼやいている。

うちの現場はビル管理の人員が不足しており、求人をかけているのだ。

現場に応募してくれた人の履歴書を採用目的でうちの会社が所長に見せる度に、それを見て不満を垂らす。

それに関しては採用する側の人間として不自然ではないだろう。

だがうちの所長、送られてきた求職者の履歴書を見て住んでる場所をGoogleマップで検索し、周辺地域や家の間取り、家賃まで調べる。

求職者が卒業した学校の偏差値や、前職の会社の口コミなど一つ一つネットで検索するのだ。

とにかく難癖をつけるためにやっているのではと思うくらい調べる。

採用の為に個人情報をそこまで調べる意味はあるのか?そう疑問に思ってしまうくらいに。

しまいには求職者のプライベート情報を調べつくした後に、大した事ないと不満を吐く。

まるでその人の人生を否定するかのように。

はっきり言って気持ち悪い。


「良い奴こねーなー」


机に足を放り出してぼやく所長。


所長はうちの管理会社を雇い、お金を払っている側の会社の人間。

いわばうちの会社にとってはお客様である。

立場も役職としても上の人間なので、僕らはただこの男に従うまでである。


「まーた悪態さらしてるよ、アイツ」


小声で岩本さんが僕に耳打ちした。


あいつとは無論、所長のことだ。


「誰も彼もアイツに馬鹿にされる為に履歴書を送ってるわけじゃないのに。それより早く人を採用して欲しいよな~」

「まったくです」


この現場に異動になって良かったのは、僕より1歳年上で年齢も近い岩本さんがいたことだ。

以前に東京支社で何回か会ったことがあり、もともと顔見知りだった。

彼はもともと常駐課の人間だったが、他のビルから僕と同じようにこのビルに異動となった。

岩本さんは気さくで親しみやすい人だった。

だからすぐに仲良くなった。




「前の常駐現場は天国だったなぁ」


岩本さんの口癖だった。


彼とはよく作業でペアになる。

だから時には所長の愚痴を話しながら作業する。


「所長ってさ、去年、田舎の父親が亡くなって今じゃ母親が一人で暮らしてるんだって」

「はぁ~そうなんですか」

「奥さんに母親をこっちに呼んで同居してもいいか頼んだけど、断られたんだって」

「そうなんですね~、所長の奥さん的には、気疲れしちゃうから嫌だったんでしょうか」

「それで母親も高齢で生活が厳しくなってきたし。老人ホームに入居させて、年金で賄えない分は所長が毎月お金出してるんだって」

「大変ですね…って、岩本さんどこでそういう情報を仕入れてるんですか!?」

「本人に聞いたわけじゃないよ。所長の不動産会社に知り合いがいてね…スパイ的な?フフッ」


情報社会は怖い。個人情報なんてどこで他人に知られているか分からない。



岩本さんとは点検や営繕でよく一緒になる。

だから時には家庭のことなんか話しながら作業する。


「うちは子供がふたりいるんだけど大変だよ~。外食も旅行も今までの倍かかるし」

「子供がふたりは賑やかそうですね。僕のところは娘ひとりだけですけど、もう手一杯ですよ」


「上の子がさ、ピアノやりたいって言うから、ピアノ教室に通わせたんだ」

「ピアノ良いじゃないですか」

「親としては子供がやりたいことはやらせてあげようと思ってさ。でも全然集中力が続かなくて。この間もう辞めたいって言いだして、結局一年で辞めちゃった。無駄だったかな」


習い事…か。

真桜は何か習いたい事はあるだろうか。


「小峰っちはさ、実らなかった習い事に意味はあると思う?」


岩本さんは僕のことを小峰っちと呼ぶ。


「え、え?それは~、やっぱ意味はあったんじゃないですか?経験として…」


僕は返答を濁してしまう。

学生時代、かつて僕が所属していた部活やサークル。

大会では結果を残せず凡退したし、かつての仲間とはもう疎遠だ。

はたしてお金と時間に見合うだけの経験や人間関係を築けていたのだろうか。

全て”青春時代の思い出”と肯定して、記憶に仕舞っておけば良いのだろうけど。


「ま~た別の習い事やりたいとかうちの子、言い出すんだろうな。そしたらやらせてあげるんだけどね。その過程で子供も夢が見つかれば良いよなぁ」

「そうですね」


夢⋯か。


真桜の夢はなんだろう。





仕事を終え帰宅し、家族で夕食を摂る。


「保育園のお遊戯会どうだった?」

「真桜ったら壇上に立ってみんな見てるのにずっと鼻をほじってたのよ。保護者として恥ずかしかったわ!」

「あはは…真桜~何で鼻ほじるんだよ~?」

「だって はなくそ おいしいんだもん」


「他の子は落ち着いてるし、それに比べてうちの娘は…」


千春はそう言って肩を落とす。

相当恥ずかしい思いをしたのだろう。


「まぁまぁ、隣の芝生は青いって感じで、隣の子の方がまともに見えることもあるさ」


僕は落胆する千春の背中を励ますように擦った。


「真桜は真桜なりに頑張ってるんだよな?」

「うん!」



晩御飯を済ませ風呂に入り、寝支度をする。


寝る時は三人で川の字になって寝る。

最近は僕も千春も真桜に合わせて22時頃には布団に入る。

早寝早起き。健康にも良い。


日中、職場で岩本さんと話した事を思い出す。

そういえばと思い、僕は真桜に聞いてみた。


「真桜の夢って何だい?」

「ゆめー?」


やはりまだ聞くには幼い年齢か。

千春も気になったのか、真桜に問いかける。


「真桜の将来の夢は何かしら?例えば保育園の先生になりたいとか、テレビに出るような芸能人になりたいとか?」


「んー」


真桜は幼いなりに考えているようだ。


「ままのゆめは?」


真桜から千春への質問返し。


「ママの夢?そうね…。イケメンでお金持ちの旦那さんと結婚することかしら」


「だけど、まま、もう ぱぱと けっこんしてる」


「そう!もう人生最大の過ちよ!」


千春は声をあげて笑いながら僕を蔑んだ。

にゃろう。


「ぱぱのゆめは?」


今度は僕に振られる。


「パパの夢?何だろうな…」


娘に夢を聞くわりには自分が夢を聞かれると悩んでしまう。

僕はどんな夢を持って、何者に憧れていただろうか。

思い出せない。

僕の様子を見かねたのか、真桜が再び聞いてくる。


「じゃあ ぱぱのいまやってるしごとは、ぱぱのゆめだったの?」


僕の夢?今の仕事が?

建物の維持管理を生業とするサービス業に就くことが僕の夢だったのか?


「いいや全然。自分が今の仕事をすることになるとはまったく想定してなかったよ」

「そうてい?」

「自分でも思いがけなかった仕事をしてるってこと」

「いまのおしごときらいなの?」

「う~ん、好きでも嫌いでもないかな」

「じゃあ なんでいまのおしごとしてるの?」


真桜からの質問攻め。

参ったな…。

千春も黙って僕と真桜のやりとりを聞いている。


「たまたま今の会社で求人があって、たまたま応募して、たまたま就職が決まったんだ。それで働いてると色々あるけど、とりあえず今の仕事を続けられている感じ…かな」


何というか、父親として子供に語る内容としては褒められたものではない。

浮ついた動機しか話せない自分がちょっと不甲斐無い。


「そーなんだー」


真桜もいまいちな反応だった。

ここで父親としてかっこよく夢や仕事について語れれば良かったのだが。


「とにかく!真桜は夢を持ちなさい。夢は大きい方が良いぞ?パパは夢が小さかったから、どこかで見失っちゃったよ」


「慎志?」


そこで黙って聞き役に徹していた妻の千春が口を開く。


「親が夢を見なくて子供が夢を見れるわけないわ。あなたも真桜の前では夢を持った大人でいなさい」


「…分かったよ」


千春に諭されてしまう。

しかしそれもそうだと思った。


消灯した部屋。

ベッドに横たわっていてもなかなか寝付けなかった。

暗闇に目が慣れた状態で天井を見つめる。


僕には富も名声もない。

人と比べて優れているところもない。

人に自慢出来るような特技や経歴もない。


だけど…何者にもなれなかったわけじゃない。

千春の夫になることが出来た。

真桜の父親になる事ができた。


それだけで充分だ。



「ねーねーぱぱ」


「何?真桜、まだ寝てなかったの?」


「ゆーちゅーばーになりたい」

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