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【第35話】そして結婚式へ

~主な登場人物~


小峰慎志(こみねしんじ)】(30)

本編の主人公。埼玉県所沢市在住。月原千春と婚約している。


月原千春(つきはらちはる)】(27)

本編のヒロイン。埼玉県川越市在住。小峰慎志と婚約している。

挿絵(By みてみん)




結婚式当日。

千葉県浦安市の東京ペイ舞浜ホテル。

当日の昼過ぎに現地入りした僕らは衣装に着替え、リハーサルを行う。

僕にとって、そして千春にとっても、人生のビッグイベントになる。


「いよいよか…緊張してきた」

「私も!式の前からドキドキするね!」

「緊張しすぎて口から心臓が出てきそう」

「それはさすがに大袈裟ね」


そして夕刻、いよいよ結婚式が始まる。


挙式の礼拝堂。

チャペルのガラス窓から覗く夕焼けと夜の帳が混ざったグラデーションの空が美しい。

オルガンの音色が響き渡る。

シャンデリアの光沢の下、壇上へと続くウエディングロードの上を僕は歩き出す。

神父のいない人前式。

僕と千春が考えた結婚式の進行。

戴冠式をイメージして、後から入場する千春のティアラを僕は両手で持つ。

両サイドの参列席からはゲストの方々の視線。

大勢の人に注目され、肩に力が入り、足取りがおぼつかない。

そんな状態の僕を見守るゲストの人たちに向かって、ペコペコ頭を下げながら壇上まで歩く。

まるで鶏みたいな歩き方だぞと新郎側の席から失笑が漏れていた。

壇上に上がった後、新婦の千春とお義父さんの篤さんが入場する。

入口で待っていたお義母さんの万葉さんが、千春のベールを下ろす。

万葉さんは涙を浮かべていた。


ウェディングロードを歩く千春とお義父さん。

事前に千春のドレス姿は見ていたが、綺麗だと改めて思った。

一歩一歩を踏みしめるようにして僕の方へ近づいてくる。

やがて僕のもとまでたどり着いて、お義父さんの篤さんが僕に新婦を託す。

言葉は交わさないが、篤さんから娘の千春を頼んだぞ、と言われた気がした。

僕は力いっぱい頷いた。


結婚誓約書を僕と千春、二人で読み上げる。

僕は「誓約」を「契約」と盛大に読み違えた。

ツッコミが飛ぶが、笑いに変わるので温かい挙式だった。

その後、結婚誓約書にサインし、新郎新婦のそれぞれの友人代表からもサインを頂く。


新婦の顔を覆っていたベールを上げる。

千春は笑っていた。

目を潤ませて。

千春の瞳に映る僕がゆらゆらと揺らいでいた。

僕は何とも言えない気持ちになる。

ここまでふたり、歩んできた。

そして今、この場にたどり着くことが出来た。

それはかげがえのない人生のひとつの立脚点。


戴冠式。

千春の頭にティアラを被せる。

リハーサルでは千春の頭にうまくセット出来ずに、せっかくメイクさんにヘアセットしてもらった髪を乱してしまったわけだが。

本番ではスムーズにいったと思う。

(後で新婦に聞いたら耳にティアラの端が刺さって痛かったと言われた)


結婚指輪は参列席にいるゲストのみなさんを通して、リングリレーで運んできてもらった。

指輪をお互いの薬指につけたその後、僕は片膝を床についてプロポーズ。


「僕と結婚して下さい!」

「はい」


その後、千春の手の甲にキスした。

参列席からの拍手、そして温かい祝福の言葉が飛び交う。

ゲストの方々に温かく迎えられたこと。

僕と千春は感謝して深々と一礼した。



その後、場所は屋外へ。

鐘の音が鳴る中、フラワーシャワーを浴びながら中庭へ移動した。

家で浴びるお湯のシャワーより気持ち良い。

新郎側、新婦側、そして全員で記念写真を撮る。

楽婚でカメラマンを雇っていたけれど、ある友人もカメラマンになりきって、楽婚のカメラマンとポジション争いをしていた。


「目線くださいーっ!」


笑うしかなかった。

そしてブーケトスの代わりに、お菓子をいっぱい詰め込んだ大きなサンタの靴をトスした。

高々と宙に舞い上がった靴。

誰もが注目する中、落ちてきた靴を僕の友人がジャンプしてキャッチ!

歓声が飛び、お菓子の入った靴をキャッチした友人が小さな子供に譲って、また歓声が起きた。




挙式と中庭でのセレモニーを終えた後は宴会場へ移動した。


「みなさま本日はお忙しい中、私たちの結婚式に越し頂きまして、誠にありがとうございます!先ほど、皆様に見守られながら、無事に挙式を行えましたこと、心より感謝しております。ささやかではございますが、披露宴を設けさせて頂きましたので、引き続き皆様とご一緒に過ごせましたら幸いと存じます!限られた時間ではございますが、どうぞお開きまでよろしくお願いします!」


そんな感じのウェルカムスピーチで披露宴は始まった。

会場のBGMはディズニーで統一し、持ち込みのアマゾンで買った2メートルのクリスマスツリーを会場の真ん中に飾った。

クリスマスツリーにぶら下げる飾りはゲストの方々に取り付けてもらい、いっぱいになっていた。

余興ではカラオケやビンゴ大会など、ゲスト参加型の披露宴にすると僕らは決めていた。


叔父の乾杯挨拶、新婦の職場の部長(僕と同い年)の祝辞、双方の友人代表スピーチ。

みんなきっと練習してくれたんだろうな。

そして式前に受付をしてくれた友人。

みんな快く引き受けてくれた。

それぞれのテーブル席で談笑しながら食事するゲストの皆さまも含めて、感謝に尽きる。


しかし、僕は挙式に続いてまたしてもやらかしてしまう。

ウェディングケーキ入刀後のファーストバイト。

新婦にスプーンで掬ったケーキを食べさせた後の僕の番。

新郎にケーキを食べさせるスプーンが、めっちゃビッグサイズというまさかのサプライズ!

いたずらに笑いながらケーキをビッグスプーンで掬う千春。

すくわれたケーキは僕の口へ。

大丈夫!食べれる!一口でいけ!そういったゲストの方々からのコール。

しかしあまりに量が多すぎて、大きく口を開けたら顎が外れそうになった。

そして口に運ばれてきたケーキをうまく飲み込めず…

口を上にして、噴水のようにクリームを吹き出してしまったのだ。

飛び散ったクリームが新婦の肩や髪、ドレスに付着…。

ゲストや司会、スタッフもこれは苦笑いするしかない。

この劇的シーンは恐らく一生忘れないだろう。


「このポンコツ~!!」


千春に一生の弱みを握られてしまった瞬間だった。


後で友人に、

「まさかあの場面で顔射するとは最低な奴だな…」

と言われた。

やめて!その言い方はやめて!!



ハプニングはまだあった。

大まかに東西アジアとヨーロッパ、アフリカ、南北アメリカ、オーストラリアに分かれた世界地図を用意し、クジで当たったゲストの方に地図に向かってダーツを投げてもらう、という余興。

ダーツが当たった地域のどこかの国に僕らがハネムーンに行くという催しをやったわけだが…。

どういうわけか、用意された地図を広げると、なんと日本地図だったのだ!

これには僕と千春は絶句した。

しかしもう後には引けず、余興はスタート。


クジで千春の友人が当たり、ダーツを投げることになった。

会場の空気を察した千春の友人は、


「沖縄は海に囲まれて難しいから、北海道を狙います!」


そして会場のすべての人が見守る中、ダーツが放たれる。

ダーツは北海道まで届かず、東北の大地に刺さった。

ダーツが刺さったのは…秋田県!

こうしてハネムーンは秋田になった。

想定外の出来事だが、会場は盛り上がった。


その後も余興は進み、景品を用意したビンゴ大会。


飛び入り参加可能なカラオケは、主に新婦側の親族の希望で用意したので、ほとんど千春の祖父が歌った。


そして手作りの生い立ちムービー上映。

僕と千春の馴れ初めなどを紹介した内容だが、数分の動画を作るのに本当に苦労した。


会場の照明を落としたまま、各テーブルに設置されたキャンドルに火を灯しに行く。

なかなかゲストひとりひとりに声を掛けられる時間がなかったので、この時に各テーブルを回りながら改めてお礼を言った。


そして披露宴は終盤へ。

楽婚スタッフの気の利かせ方や司会進行はやっぱりプロだと思った。


新婦、千春から両親への手紙。

内容は両親への感謝。

しかし僕に対しての話もあり、ポンコツな僕をかなり持ち上げてくれた内容だった。

千春の夫になると同時に、責任も感じた。


そして小峰家、月原家がみんなの前に出て並ぶ。

両家を代表して僕の父さんが祝辞を述べる。

当日の行きの新幹線で何を言うか考えたのだと後で聞いた。


小峰家、月原家の両親に僕と千春からクマのぬいぐるみをプレゼント。

ぬいぐるみの重さは僕と千春、それぞれの出生時の体重だ。


そして最後に僕の締めの言葉。


「本日は私たちにとって忘れられない素敵な一日となりました。これからは夫として妻の千春さんと一緒に人生を歩んでいきます。どんな未来が待っているのか、考えるとワクワクして胸が高鳴ります。未熟者の私です。メンタルの弱い奴だと職場では言われております。しかしこれからは気を確かに持ち、もっと強くなって千春さんの足を引っ張らないように、 夫婦で仲良く暮らしていく所存です。今日一日、これだけ多くの方々に優しい目で見守って頂き、温かい祝福を頂きましたことに 改めて感謝を申し上げまして、私の挨拶とさせて頂きます!ありがとうございました!」


そして両家で皆さまに一礼。

ゲストの方々からの温かい拍手に包まれて、結婚式は無事?に終わるのだった。

過ぎてみればあっという間だった。

久々に達成感で胸がいっぱいになった。

人生でここまで辿り着けたことに万感の想いを抱く。

そして重ね重ね、僕の、そして千春の人生に関わってくれた皆さまに感謝である。


ーーーーーーーーーー


「一生に一度…」というブライダル業者の魔法の言葉にかかり、当初の見積もりから大幅に膨れ上がってしまった結婚式だが、抑える所と拘る所、そのメリハリは付けられたと思う。

プランナーの原田さんにも感謝だ。


で…実際に使った金額はいくらなのか。

結婚式にかかったお金を振り返る。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

司会者¥20000

キャンドルサービス¥14000

プロジェクター¥40000

カラオケ¥30000

フラワーシャワー¥15000

エスコート¥10000

印刷物:招待状キャンペーン使用¥13000

衣装 :タキシード&ドレスセット貸¥100000

ドレス二着目貸・お色直し¥70000

写真 :カメラマン¥50000

引出物:小物・お菓子・バック¥250000

その他:プロデュース・コーディネート¥98000

食事・会場使用¥1530000

チャペル¥60000

タダ :ウェルカムドリンク・乾杯酒¥0

ウエディングケーキ¥0

ホテル宿泊・翌日朝食バイキング¥0

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


ブライダル業者に支払った合計額は…2,300,000円!


これだけじゃない。

結婚に伴い、式以外で使ったお金もある。


☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

贈り物:赤ちゃん時の体重ベア¥11000

写真たて¥5000

内祝い¥40000

余興景品各種¥8000

サンタ靴のトス¥2000

プチギフト¥12000

装飾 :ベール・ティアラ・手袋¥18000

ネックレス・イヤリング¥5000

結婚指輪¥200000

下着各位¥5000

演出 :クリスマスツリー¥12000

リングリレーリボン¥2000

次席表・名札¥15000

小物 :ウェルカムテーブル置物¥10000

音楽CD¥5000

結婚証明書¥4000

運送¥7000

戸籍手続関係¥3000

郵便¥4000

親族宿泊¥100000

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★


以上、合金額は…468,000円!



以上を全てトータルして、結婚にかかったお金は…


¥2,768,000円!!



凄い買い物だった。

今までの人生で一度に払った額で一番高かったのはなんだっただろうか?

車の教習所費用で確か30万円だった。

今回はそれをぶっちぎりで更新した。


しかしお祝儀で頂いたお金も大きく、結局甘えてしまった。

最後にお金を現物でプランナーに渡したわけだが、差し出す時の僕の手は震えていた。


結婚式は最高の思い出となった。

しかし費用や準備の苦労も大きいものだった。


一大イベントが終わって、燃え尽き症候群になる暇なんてない。

人生は止まらずに動き続ける。

これからは伴侶となった千春と共に、新たな日常をスタートさせるのだ。

どんな未来が待っているのだろうか。

いざ、人生の新章へ!

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