【第13話】中国~上海・南京~
~主な登場人物~
【小峰慎志】
主人公。埼玉の所沢市にあるアパートに住んでいる27歳の青年。
仕事も恋愛も上手くいかず、思い通りにいかない人生に嫌気がさしていた。
そんな時、”海外を旅して巡る”という幼い頃の夢を思い出す。
後悔ばかりの過去、不安な未来、閉塞感漂う今の生活。
そういった、あらゆるしがらみを一度忘れて、海外を旅する事を決意する。
【上海】
中国聯合航空便にてウラジオストクから上海へ。
中国大陸に進出。
案の定、飛行機の中で眠れなかったので、疲労で少し足元がおぼつく。
100円ショップで買った首の後ろに巻くクッションが逆効果だったのか、首が痛い。
そんなこんなで広大な黄浦江を眺めながら川沿いを散策する。
川を隔てた市街地の様子が面白い。
浦東の中心街側の建物群は見てて圧倒される。
東方明珠塔やフィナンシャルセンタービルなど、空に迫るような高層ビルが乱立している。
かなり近未来的で東京とどっちが栄えているんだろうと思ったり…。
対して外灘側は情緒的な建物が多く、こちらの方が市民の生活臭がする。
歩道を走るバイク、赤信号でも進む車、止まぬクラクション…。
日本の歩行者優先とは違う、みんな自分に正直に生きてる感じ…(´ω`)
タクシーやバスの乗り方も日本で予習しなかったので分からず、また割高なので貧乏旅ゆえに使わず。
中国では地下鉄を使って移動した。
何より苦労したのは僕のスマートフォンではネット調べが出来ず、wifiが使えなかったことだ。
後々、分かったのだけれども、中国ではグーグルもヤフーも制限されていた(^▽^)
郊外を探索していて特に趣きがあったのは観光地にもなっている豫園。
古き良き中国って感じの建物群が良い味を出している。
結構、欧米の旅行者も目について英語も飛び交ってた印象…( ゜Д゜)
英語も中国語も喋れないから食事や買い物時にジェスチャーしまくった。
ニーハオハオ!って言いながら物を指さしてお土産の値段交渉など…。
これが案外通じる不思議。(笑)
食事は積極的に屋台や地元の人が使う食堂に挑戦!
小龍包に使う筒が山のように積まれていたり、捌かれた鳥が吊るされていたり。
結構、場の迫力感が伝わってくる店がちらほら。
揚げ物は脂っこく、スープ系は辛く…中国の洗礼をもろに堪能(;^ω^)
酸味のある拉麺を食べたあとにスープの中に油が大きな層になって残っていたり。
日本の旨辛を代表する赤からみたいな辛さの中に甘さがなく、僕の舌では辛い一色。
衛生的にどうなのよ?って思う店もあったけど、中国では一度も腹痛に悩まされずに伝家の宝薬”正露丸”の助けは不要だった♪
ただ、水はやはりコンビニでミネラルウォーター買いましたけれども。
市内ではセブンイレブンやファミリーマートをよく見かけた。
馴染みのある日本のコンビニだけど、商品の外装の袋に印字されている中国語の表記が面白かった。
漢字なんだから少しは内容が分かるかな~と意味を読み解こうとするも、何書いてあるかさっぱり分からない。
そして食事は段々と結局は日本のチェーン店やマクドナルドに(笑)
腹ごしらえが済むと活気が出る。とにかく歩きまくるので旅は足が資本。
上海では七宝も印象的な観光地だった。
水郷の古鎮は中国歴史ドラマの世界を疑似体験しているようだ。
「日本人ですか?」
道に迷っていたら話しかけてくれた中国人がいた。
この人には怪しいオーラがなく、ついでに一緒に記念撮影をした♪
日本文化やアニメが好きらしく、色々と話してくれていたんだと思う。
でも中国語が分からずとりあえず相打ちを打って笑顔でやり過ごした(;・∀・)
こういった何気ない人との交流も旅の良い思い出だ。
上海での宿は日本にいた時にトラベルコから予約していた。
しかし予め調べておいたホテルの場所まで行くと、路面でおじさんが卵を売っており明らかに違う。
またしても宿探しで苦戦を強いられた。
異国の地で予約したホテルをネットの力なしで探すのは非常に骨が折れる。
今度こそとたどり着いた場所が空き地だったりして途方に暮れることもあった。
でも非常に幸運なことに道で通りかかった人にホテルを尋ねたら、まさかの長崎の人!
出張で上海に来ているとのこと。
僕が宿泊するホテルの事を調べてもらって、場所が分かったお礼に軽食をご馳走した。
お別れ間際に上海ディズニーランドに一緒に行かないか誘われたが、相手と予定が合わず。
それでも出会いに感謝。
ネットが使えないのは本当に不便。(;・∀・)
しかし、反対に痛い思いをした出会いもあった。
英語で「あなた日本人ね?日本には観光に行ったわ!好きよ」と、
若い現地?の女性で話しかけられ、お膳立てを受ける。
その後に有名なお茶屋を紹介するというから付いていくと、1杯100元もするお茶を飲まされる。
(何故か、そういう時だけ相手が言ってる事が何となく分かる…苦笑)
二杯目を注ごうとしてくるから、すぐに一杯分のお金を渡してお店を出たけれども…(;^ω^)
その後、お茶屋を紹介してくれた女性に日本語で「お茶楽しい」
と言われ、ハグを要求された。
(いや日本語喋れるんかい!)
端麗な女性でしたが、僕は歩き回って汗をかいて服が濡れていたので断った。
まんまとキャッチに捕まり詐欺にあってしまった。
このお茶代が中国で宿泊代を除いて一番高い出費となった。
地下鉄でも怖い思いをした。
運賃が非常に安く、体感的に日本の半分以下なので移動は地下鉄を利用していたわけだが。
空港にあるような荷物検査があり、毎回それを通すのが面倒だった(´ω`)
そして荷物検査で一回、引っかかったのだ( ゜Д゜)
動揺してると近くの警備員に引き渡され、パスポートの提示を要求された(; ・`д・´)
「日本人か?観光か。重そうなバックだな」怒ってる態度でそう尋ねられたと思う。
(そーいう時だけは何故かヒアリング出来る謎)
「はい!私は中国が好きです」と答えると少しの間の後そのまま良しとなり、解放された。
この時だけ。
空港の入国出国でも引っかからなかったのに、荷物の何が引っかかったのかは今でも謎だ。
無事に着いたホテルでも怖い思いをした。
部屋のベッドに横たわり、旅の疲れを癒そうとまったりしていたら轟音が響き渡った。
とにかくやばい。何が起きたか分からないけど避難は必要か!?
とりあえず部屋を出て通路に出ると…なんと少し先の廊下の壁が崩壊して砕けたコンクリートがそこらへんに散らばっていたのだ。
従業員や宿泊客が集まったが、すぐに何事もなかったかのように解散していく。
みんな冷静で肝が据わってるなぁと感心した。( ゜Д゜)
上海散策では他にも印象に残ってることがある。
それは公園で雨も降っていないのに沢山の傘が開かれずらーっと並んでいたことだ。
周囲にはおじさんおばさんが大勢いて、傘を祭る中国の伝統行事かなと思った。
しかしそれぞれの傘には紙が貼ってあって、誰かのプロフィールやら望んでいる異性の要求項目が記載されている。
こういうのは何となく読めた。
どうやら息子、娘のお見合い、恋人探し?婚約者探し?をしている模様( ゜Д゜)
びっくりである。日本じゃこういうのはない。やはり世界は広いなあと。
女性が男性に求める条件でよく見かけたのは3K!
高身長!高学歴!高収入!
アイヤー!!日本と同じネ!!…僕は条件にかすりもしない(;^ω^)
じろじろ見て回たらおばちゃんに声をかけられた。
「僕はリーベンレン!」
って答えたら逆に興味持ってくれた様子で、日本人は人気ある?かもしれない。
旅に疲れて移動せずに過ごしたい時は最寄りのショッピングモールで引きこもった。
子供を乗せたトーマスが走っていたり…
どでかいドラえもんの像が置いてあって、どら焼きを売っている店が繁盛していたり…
本屋では村上春樹のコーナーがあって、”騎士団長殺し”がトップ棚に山積みになっていたり…
本屋には習近平さんが滅茶苦茶イケメンに加工された顔が表紙の本があって…笑ってしまった。
【南京】
前々から行ってみたいと思っていた場所があって、その為に江蘇省の南京市へ。
新幹線を使っての移動を試みた。
そう、中国で新幹線に乗って南京市まで行くこと。
新幹線に乗る為の手続き、思い返してみるとこれがこの旅で上位に来る難易度だった。
まるで空港のように広い(空港も併設されてる?)虹橋駅で右往左往あーでもないこーでもない!
ネットが使えない状況で、事前にもっと詳しく調べるべきだったと後悔しても遅い。
そして腹の調子が悪いわけではないのだけれども便意がじわじわと…
ようやく切符を購入出来そうな窓口を発見。
前の団体が口論してて並んでる列が一向に進まず滞り。
前の列に並んでいた人が「賑やかな連中だよねー」って言ってて器の大きさをひしひし感じた。
心に余裕って大事だな…と肝に命じつつ、いざ自分の受付の番になったらめっちゃ取り乱した。
「新幹線乗りたいんです!切符下さい!!」
「何言ってんだこいつ?」
みたいな相手の対応。
僕も何を伝えたいんだか釈然としない。
とりあえず時間と行きたい場所を日本の漢字で書いたメモを渡してひたすら乗りたい!とアピール。
後ろから早くしてくれオーラが迫り、焦りまくり、便意も蘇る。
うまく切符買えるのか不安が募るも、無事に発券された。
とにかく僕は新幹線で南京まで行きたいんだ!!
という情熱、熱意だけで言葉の壁とかそういうのに関係なく”なんとかなる”もんだな…ってこの時再確認した。
新幹線を待っている間にトイレに行く。
トイレの前に電光掲示板があって、どこの個室が開いているかが一目瞭然。
凄いぞ!中国!日本でもこれやってください!
苦労の末、新幹線に乗車。
10分も走れば市街地の気配は遠ざかり、川や工業地帯、広大な平野にぽつぽつと民家が見えてくる。
まさかまさかの隣席に埼玉県川口市から出張に来てるという二人組と遭遇。
話の中で1人は中国人とこないだ結婚したんだとカミングアウトし、
「中国人って美人多いですよね!」
とお約束の持ち上げをしたら、満面の笑顔で喜んでくれた。
南京駅に到着後、近くの店で食べた雑炊は本当に美味しかった(#^.^#)
南京滞在中で食べた食事はこれと小籠包屋以外はお菓子でやりすごした(苦笑)
南京に来た日は、近くの玄武公園でまったりした。
複数の観光地をスタンプラリーのように巡るような旅ではないのでゆったり(´ω`)
学校か何かの卒業式なのか?式典のような催しがされており、制服の人たちが賞状のようなものを授与されていた。
とりあえず僕も観覧席に回って拍手する。おめでとう!
公園内のプチ万里の長城みたいなところを猛ダッシュ!!
何十艘もの湖に浮かぶ黄色いアヒルのボートを追いかけ…
香港人に「写真撮って」と言われてストップ。
旅では欧米人にはシェイシェイと言われたりして中国人と勘違いされることもあった。
しかしアジアの人は何を根拠にしてるのか分からないが、日本人だと見抜いてくる(*´ω`)
宿に泊まり、態勢を整えてから南京の訪れたかった場所へ。
入口から”逃げて!悪魔が来た!”という台詞の印字された彫刻が…。
悪魔はそう、日本人。
やって来ました南京虐殺祈念館!(大屠殺遭難同胞祈念館!)
以前から一度は行ってみたかった場所。
ここに来るために南京までやって来た。
歴史に触れる旅…しかし誰かの記憶が歴史そのものになりえるのかはまた別の問題。
しきりに30万人の被害者…というモニュメントが至る所にある。
日本政府の見解と人数が違い、南京虐殺はねつ造だ!という主張もあるけど、どのような形であれ虐殺自体はあったと僕は思ってます。
状況が追い込む人間の性というか何というか…。
無料で入館でき、館内には学生も多かった。
展示物はかなり凝った装飾。
中国語、英語、日本語で各展示物の説明が記載されていたが、後半は中国語オンリーだった。
被害者の遺留品や再現蝋人形、遺跡の発掘場のような被害者人骨の展示。
来館に来た中国人の被害者意識を強める意図というよりは、
”こんなに悲惨だったんだよ~”という、恨みにまで誘導するような感じの展示物はそう無かったように感じた。
何だか見ていて色々な想いが巡り、切なくなる。
歴史を学ぶと、どうしても主観者よりの解釈に傾きそうだけど、思っていたよりは傾いていなかったような…。
しかし日本人として、後ろめたさのような感覚が芽生えてくる。
ひょっとして僕が日本人だとバレたら周囲から袋叩きにされるかもしれない。
なので周囲に日本人と悟られないよう現地人の雰囲気を醸し出したつもりで観覧した。
手紙とかが置かれたコーナーがあったので、翻訳アプリで事前に用意した手紙を置いてきた。
日中友好希望!
これが一つの旅の目標だったので達成!
休憩コーナーで若者たちが話し合ったりしてて、南京虐殺について討論してるのかとおもいきや…。
スマホでゲームしてる人が多くて、言いようのない気持ちになったのを覚えている。(´ω`)
画面覗いたら上海でも見たゲーム画面で、いま中国で流行ってるゲームなのかな。
昼を過ぎ、食事の為に近くのお店へ。
小籠包を頼んだけど上海で食べたやつより安くて美味しかった。
美味しいと店主に「ハオチー!」っていうけどうまく伝わっていない模様。
ついでに「リーベンレン!」って言ってみたら珍しがられた。
美味しいの意図が伝わり店主が笑顔になると、小籠包もより一層美味しく感じられた。
最寄りのコンビニで会計に手こずっていたらまけてくれた…(;・∀・)
日本の1円玉みて「偽銭だめだよ」みたいな事いわれた。
コンビニの人も飲食店の人も、ホテルの受付の人も凄く優しくて泣きそう。
不愛想な人もいたけれど、それは僕が挙動不審な動きをするからか。
南京虐殺祈念館に行った後だからかもしれないけれど、感情が敏感になっているのかもしれない。
その後、ホテルで物思いに老けた。
中国での宿泊ホテルは錦江之星系と格林豪系のふたつにお世話になった。
窓から南京の街並みを眺める。
過去に囚われすぎず、未来をよくするための判断材料として進む。
現在に存在している自分。
生きていて命を成している自分。
過去と今と未来は区別しても良いし、一貫して捉えるのも良い。
どういう経路で思考して解釈するか、それを保留して眠りにつくまでがワンセンテンス(´ω`)




