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フィリスの謝罪

 フィリス達が食堂に入ると、気付いた他の生徒達は急に静まり返った。


 すると座って食事を摂っていたアーグナー伯爵家の長女『アーグナー・ヘイディール』が気付いて素早く立ち上がり、フィリスの方へと歩いて来た。すると取り巻きの二人も慌てて立ち上がり、アーグナーの後を追い掛けた。


 フィリスはアーグナーを見つけるとすぐに駆け寄って行き、彼女が何かを言う前に膝を付いて胸に手を置くと


「アーグナー様、昼間は無礼な態度を取ってしまい・・・大変申し訳御座いませんでした。」


 と謝罪の言葉を述べた。


 するとアーグナーは、フィリスの思わぬ行動に


「えっ?」


 と驚いた表情をし、一瞬固まった。


 更にフィリスは間髪入れず、


「先程は、私の大切な友人が酷い目に会って居るのを見て取り乱してしまい、きちんとした謝罪が出来なかった事を心苦しく思っておりました。どうか先程の無礼をお許し下さい。」


 と、誰もが見惚れる程に美しくも、悲しげな表情でアーグナーを見上げた。


 するとアーグナー嬢は僅かに頬を赤く染めて


「も・・・もう良いですわっ! 貴族家の子女が、この様な公衆の面前で跪いたりするものでは有りませんわよ!!」


 と言いながらぷいっと顔を背けると、急いで食堂から出て行った。


 するとフィリスは素早く立ち上がり、その場に残った男爵家の娘である『ヘレイン・モズビリエ』と『シーリス・ログアナ』の二人を静かに見つめながら、


「私の大切な友人が随分とお世話になって居たみたいね・・・。次からラムウェンに用事がある時は、まず私に話を通して頂きたいわ?」


 フィリスがそう言うと、二人の少女は悔しそうな顔をして足早に去って行った。


 その様子を見ていた周りの生徒達が


「すげぇな・・・あの二人を追い払ったぞ! さすがは将来の聖女様だな。」


「すごい顔して出て行ったわよね。」


 などと小声で話し始める。


 しかしフィリスは、周りの生徒達の言葉など気にする様子も無く、ラムウェンの方を見ながら、


「さあラムウェン、謝罪は終わったわ。お腹が減ったからご飯にしましょう?」


 と声を掛けると受付に向かって歩き出した。するとラムウェンは、


「フィリス様・・・今、私の事・・・。」


 と小さい声で呟いた後、左右の瞳を順番に指で擦りながら


「はい! 私もお腹が空きましたっ!!」


 と清々しい笑顔でフィリスの後を追い掛けた。





      *      *      *





 翌日の朝食後、フィリスは遂に8人の『聖女様』達に会いに行く事となった。


 神殿一階の左奥に見える扉の前は『聖紋石』が置かれており、その前には二人の聖騎士が警備をしていた。『聖女』とは、最強の騎士団が自ら警護をする程に重要な存在なのである。


 そして聖騎士の前にはナディアさんが立っており、フィリス達が来るのを待って居た。


「二人共、時間通りですね。女神様ご降臨の日以外はこの時間で構いませんからね・・・。では早速フィリスさんを『聖紋石』に登録しましょう。」


 ナディアさんはそう言うと、台座の上に置かれた『聖紋石』の上に手をかざして呪文を唱えた・・・。



 結局、扉は二重になっており『聖紋石』の台座も2つ設置されて居た。それぞれ違う呪文によって厳重にロックされて居る為、登録も2回行った。


 3人が部屋に入って行くと、奥から賑やかな女性の声が聞こえて来た。最後の扉を開けると、そこは広い居間になって居る。


 4脚の長椅子やテーブル等が置かれた部屋には、8人の少女の姿が在った。


「ちょっとアスラクテ! ここに服を脱ぐなっていつも言ってるでしょうが!!」


「ちょっ・・・イリーナはまた寝てるんじゃない? 誰か起こしてっ?!」


 部屋の中央に居る黒髪の女性が皆に指示を出しているが、長椅子で寝ている子や、肌も露わな格好でお菓子を食べて居る子も居る。


 すると、ナディアさんが前に出て行って


「皆様、お早うございます。準備は出来て居ますか?」


 と凜とした声で話し掛けると、黒髪の少女は驚いて


「はっ・・・ナディアさん、お早うございます! 皆急いで準備をしている所です!!」


 と言いながら周りの子を見ると、


「お早うございます~~。」


 と皆声を揃えて挨拶をした。


 なんと、先程まで寝ていた子は凜とした姿で立っており、服装の乱れがあった子もキチンと服を着て髪の毛を解いていた。


「ちょっ・・・あんた達ねぇ~~っ?!」


 ナディアさんは見慣れた光景なのか、全く反応を示さずに話し始める。


「今日は、新しく入った『見習い』の子を連れて参りました。ではフィリスさん、ご挨拶を。」


 ナディアさんに促されたフィリスは、スカートの裾を軽く持ち上げ、


「フィリス・クライメル、13歳です。よろしくお願いします。」


 と、慣れた様子で挨拶をした。

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