第82話:ねぶたに消えた約束 ―青森・夜空を駆けた感電事件の謎―
■Scene1:ねぶた祭、舞い上がる炎と闇夜の叫び
8月の青森市。
私は夏の風物詩「青森ねぶた祭」を初めて訪れていた。巨大なねぶたが街を練り歩き、勇壮な太鼓の音が響く。
「凛奈さん!こっちですよ!」
案内してくれたのは青森の地元刑事・沢村和彦。彼は静かに耳打ちした。
「実は昨日、この祭りの準備中に……ねぶた師の一人が亡くなりました。感電死です」
「感電……?」
沢村刑事の表情は硬かった。
「ただの事故とは思えなくて……」
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■Scene2:ねぶた師の死と残された手紙
亡くなったのは、著名なねぶた師・岡崎慎吾(55)。
彼は長年、青森ねぶた祭の象徴ともいえる存在だったが、ここ数年、祭りの運営方法で主催者側と激しく対立していたという。
彼の遺体の傍に残されていたのは、一通の手紙。
『約束は果たさせてもらう。これは、始まりに過ぎない』
沢村刑事は頭を抱えた。
「岡崎さんには昔、共同でねぶたを作っていた弟子がいました。けれど10年前に、祭りの方向性で喧嘩別れしてるんです」
私は祖母からのキムチを取り出した。
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■Scene3:キムチが見せる、10年前の炎
一口口にした瞬間、私は時間をさかのぼった。
祭り前夜の工房。
若い弟子・戸村彰(当時30代)と岡崎師匠が激しく言い争っている。
「伝統を壊すつもりか!?」
「時代は変わったんだ、師匠!」
突如、火花が散り配線がショートし、戸村の腕には火傷が――
「お前とは、もう二度とねぶたは作れん!」
岡崎がそう言い放つと、戸村は悲しげに去っていった。
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■Scene4:犯人との対峙、封印された感情
私はねぶた工房を訪れ、今では小さな工房を構える戸村彰に直接問いかけた。
「約束って、何のこと?」
戸村は一瞬表情を曇らせ、静かに答えた。
「10年前、師匠は約束したんだ。『祭りの伝統を変えるくらいなら、自分の命を投げ出しても止める』って」
「じゃあ、あなたは……」
「殺してなんかいない。でも、師匠が亡くなった以上、約束は果たされたことになる。師匠はそれを分かってたはずだ」
そこに、沢村刑事が駆けつけた。
「戸村さん、あなたを疑ったのは間違いでした。本当の犯人は、別にいました――」
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■Scene5:真相と新たな約束
真犯人は、祭りの実行委員の一人・早坂英二(47)。
彼は祭りの利権を握ろうとし、それを妨害する岡崎を感電死させる罠を仕掛けたのだ。
ねぶた祭り最終日。
戸村は岡崎師匠の遺作を完成させ、ねぶたは街中で拍手喝采を浴びた。
「凛奈さん、ありがとう。師匠の願いを引き継ぎます」
炎と共に、戸村は新たなねぶた師として生きる決意を固めた。
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■Scene6:青森の夜空に新たな火花
祭りの後、私は沢村刑事と共に静かな居酒屋にいた。
「青森ねぶた、素敵でした。伝統って、やっぱり守られるべきだと感じました」
「事件があっても、人々はまた集い、笑う。それが祭りです」
私は青森の夜空を見上げた。
次の事件は――まだ私を待っているようだった。
「さあ……またキムチを食べなきゃね」
私の携帯に新たな通知が届いた。
それは兵庫県の淡路島からだった。
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