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第80話:絹と雪の舞う町で ―金沢・加賀友禅と消えた絵師―


■Scene1:雪の金沢、加賀友禅の工房にて


1月、金沢。

しんしんと雪が降る朝、私はテルメ金沢の女将・美琴さんと共に、観光と視察を兼ねて加賀友禅の工房を訪れていた。


「ここが、石川県でも指折りの友禅作家・三枝真吾さんの工房です」


案内してくれたのは、美琴さんの母・白石美和さん。昔から加賀友禅に造詣が深く、旅館の内装にも生かしていたという。


しかし、工房の前に着いた私たちを出迎えたのは――険しい表情の若い弟子だった。


「先生が……いなくなったんです。3日前から、連絡もつきません」



■Scene2:消えた絵師と“最後の下絵”


室内には、制作途中の友禅反物と、美しくも不穏な図案が広げられていた。

雪の夜に女性が独り立つ構図。その顔は――どこか、美琴さんに似ていた。


「これ……私に似てませんか?」


「ええ。でも……なぜ?」


弟子によると、三枝さんは最近「死んだ妻が戻ってきた」と言い出し、妙な言動が増えていたという。

妻・澄江さんは10年前、冬の雪の日に金沢で“転落事故”で亡くなっていた。


「先生は……あの人の死に、ずっと後悔を抱えてたんです。きっと、何か……」


私は手帳に挟まれた一枚の写真を見つけた。そこには澄江さんと、旅館の中庭で微笑む姿が――。



■Scene3:キムチの記憶と、“隠された過去”


私はテルメ金沢に戻り、静かな一室で祖母のキムチを口にした。


(――三枝さん。あなたはどこへ……?)


脳裏に広がったのは、10年前の夜の金沢城跡。


“戻ってこいよ、澄江……今でも……!”


泣きながら一人叫ぶ男の姿。そして、その背後でこっそり覗き見る一人の女性――


(この女……誰?)


その女性は澄江さんの“親友”とされていた、今は観光ガイドとして活動している久保田理沙。

私は確信した。――澄江さんの転落死は、事故ではない。



■Scene4:真相の夜、凛奈と美琴の対峙


私は美琴さんに真実を告げた。


「澄江さんは……突き落とされたんです。犯人は、久保田理沙」


「どうして……そんなことを?」


「三枝さんに、恋をしていたんです。でも、相手にされなかった」


真吾さんが消えたのは、彼女の言葉で“心を折られた”から。


私は加賀友禅の工房裏にある古い倉庫へと向かった。そこには、やつれた真吾さんが独り、妻の絵の前で涙を流していた。


「私は……何も守れなかった」


「でも、今は誰かのために絵を描ける。その才能を、失わないでください」



■Scene5:絹の街に、新しい光を


事件の真相が報道された後、久保田理沙は容疑を認め、静かに身柄を引き渡された。

三枝さんは数日後、加賀友禅の新作展で“再起”の第一歩を踏み出した。


その作品の名は――《絹と雪の舞う町で》。

モデルは、美琴さんと彼の亡き妻・澄江さんを重ねた姿だった。


「ありがとう、凛奈さん。本当に……金沢に来てくれてよかった」


美琴さんの言葉に、私は少しだけ照れながら言った。


「まだまだ、北陸の謎は終わりそうにないですね」


その時、私のスマホに新たな通知が届いた。


「――次の依頼は、輪島……?」


石川県・能登の先――“再建された町”に、新たな謎が待っている。



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