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第3話:キムチを盗んだのは誰?市場の謎と祖母の秘密


■ Scene1:釜山市場で、まさかの“キムチ盗難”発生!


釜山市場──それは、古くから地元民と観光客に愛されてきた、活気あふれる屋台と商店が並ぶ場所。

その中に、ひときわ人気のあるキムチ専門店がある。


夏栄ハヨンのキムチ屋」


店主はもちろん、凛奈の祖母・朴 夏栄パク・ハヨン、70歳。元・伝説の探偵。現・伝説のキムチ職人。


その朝、事件は起きた。


「ちょっと!あたしの“伝説の壺キムチ”が……盗まれたんじゃよ!!」


市場に響き渡る夏栄の怒声に、周囲の商人たちも駆け寄ってくる。


「え?盗難?あの壺って、あの……“戻れるキムチ”!?」


「うん。30年寝かせてたやつ。ひと口食べれば“1994年”まで戻れるってやつ」


「それは大変なモンじゃろがぁあああ!!」


祖母の怒りは最高潮。

連絡を受けた凛奈は、キムチ配達中の電動バイクをそのまま市場へすっ飛ばした。


■ Scene2:祖母の“過去”が浮かび上がる


「りんっちゃあああん!!!」

「ばあちゃん、叫ぶとシワが増えるよ」


「もうそんな場合じゃないのよォ……あれがないと……あのキムチがないと……あたしの“最後の過去”が消えてまう……」


凛奈は言葉の意味に眉をひそめた。


「“最後の過去”?どういう意味……?」


祖母はしばらく黙ったあと、ポツリと語り始めた。


「……あのキムチはね、30年前、あたしが“ある事件”を追ってた頃に漬けたものなのよ」


「え……?」


「解決できなかった事件。警察でも迷宮入りだった。あれをもう一度……もう一度だけ、あたしは見直したかったんじゃ」


その目には、年老いた探偵の“悔い”がにじんでいた。


「わかった。じゃあ、キムチ探偵の孫として……必ず取り返してくるよ」


「凛奈……ありがとうね」


祖母の手が、そっと凛奈の頭を撫でた。


■ Scene3:防犯カメラに映る“帽子の男”


市場の防犯カメラを確認した凛奈とスタッフ・ミンジュは、壺が消えた早朝5時の映像に注目した。


「……いた。コートに帽子、マスク……」


「完全に怪しい格好だね」


だが映像の男は、市場の裏手の“旧地下通路”へと入っていった。


「うわ、ここって昔、ばあちゃんが秘密通路として使ってた場所だよね」


「そう。つまり、犯人はばあちゃんの“過去”を知ってる人間」


凛奈は舌打ちすると、すぐさま行動を開始した。


「行くよ、ミンジュ。キムチ準備して!」


「え、今ここで食べるの!?」


「過去に戻るには“あの壺の発酵と同じ菌”が必要。それがこの“祖母キムチVer.1”なんだよ!」


「何そのマニアックな設定!!」


■ Scene4:時空を越えて、30年前の釜山へ


キムチを口に入れた瞬間、世界は赤く染まり、風が凛奈の身体を包む。


――舞い戻ったのは、1994年の釜山市場。


そこには、30歳の若かりし頃の祖母・夏栄の姿があった。

今とは違い、きりりとした表情、タイトなスーツ、推理ノート片手に事件を追う姿。


(若っ……ていうか、脚長っ!)


凛奈は見惚れそうになりながらも、壺キムチを隠す怪しい人物を発見。

そして尾行の末、驚きの事実にたどり着く。


──犯人は、夏栄の“元助手”。

過去に事件の誤認逮捕で人生を狂わされた男だった。


「……あんたが、ばあちゃんの過去を奪おうとしてる……?」


「彼女は……俺の人生を……」


「でも!だからって、“壺”を盗む理由にはならない!」


凛奈はタイマーが鳴るのを聞きながら、男から壺を取り戻す。


(間に合え……!)


■ Scene5:祖母の涙と壺キムチの意味


現代へ戻った凛奈は、祖母の元へ“伝説の壺キムチ”を返却した。


「りんちゃあああん……!!ほんまにありがとうよぉ……!」


「でも……その壺、まだ食べる?」


夏栄は、そっと首を振った。


「もう……ええんよ。思い出せた。若い頃、わたし、間違えてたかもしれへん。でも、それを越えて……今の凛奈がおるんやもんな」


「……うん」


「じゃあ、その壺は──未来のキムチとして漬け直そう」


祖母と孫は、手を取り合って市場の片隅に壺を埋めた。


**“未来に戻れるキムチ”**として──。


■ Scene6:市場に戻る日常、しかし…


釜山市場の朝は、また賑やかに戻っていた。


「夏栄ばあちゃん、今日のキムチもらえる?」

「もちろんじゃ、今日は“未来へ向かうキムチ”じゃ!」


笑顔でキムチを配る夏栄。その横で、凛奈とミンジュも手伝っていた。


「……にしても、ばあちゃん。よく“未来に戻れる”なんて名前思いついたね」

「過去ばっかり見とったらあかんやろ?これからは未来へ行くんや」


凛奈は微笑んだ。


その時、どこからか視線を感じた。

ふと見ると、市場の片隅でこちらをじっと見つめる青年がいた。

黒い帽子、マスクはしていないが──

どこか、あの“元助手”に似た目をしていた。


「あの人……まさか……」


凛奈が近づこうとした瞬間、青年は市場の人混みに紛れて消えた。


「凛奈、どうしたの?」

「いや……なんでもない」


凛奈は小さく息を吐いた。


「過去は過去。わたしが守るべきは“今”と“これから”だよね」


そう言って、祖母の笑顔に背を押されるように、もう一度市場を見渡した。


――まだ、この街には知らない“謎”が隠れている気がする。


■ Scene7:新たな依頼、再び始まる探偵の日々


その夜、ソウル支部から1本の連絡が入った。


「凛奈さん、次の案件が入りました」

「え?もう次? 今日はゆっくりお風呂入ろうと思ったのに……」


「依頼主は、お兄様からです。」


「 え⁉︎ 泰亨テヒョンさん?」


「分かった。じゃあ行ってくる。今度は“未来”のために」


電動バイクにまたがり、キムチの香りを残して市場を後にする凛奈。


その背中には、祖母から受け継いだ“過去の悔い”と、自分自身が選ぶ“未来への道”が重なっていた。


そして、釜山の夜に消えていく──。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


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その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


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