第78話:加賀の湯煙、そして再会の謎 ―テルメ金沢殺人事件簿 特別編①―
■Scene1:韓国・帰郷と報告
ソウルの探偵事務所に戻った私は、久々に父・洋佑、母・梵夜、姉・信恵の3人と囲む食卓に着いた。愛媛での誘拐事件の詳細と、手元に届いた一億円の小切手について報告すると、家族全員が目を見開いた。
「一億ウォンじゃなくて……一億円!?」
洋佑の驚愕の声に、信恵が苦笑しながら問い返す。
「まさか、お金目的で行ったんじゃないよね?」
「違うよ。ただ感謝の気持ちだって。あの子たちを助けたことに、ね」
母はふと表情を和らげた。
「あなた、本当に……あの子たちの命を守ったのね」
それを聞いた父がぽつりと言った。
「その企業……大王製紙とユニ・チャーム。名前だけは知ってる。今度、日本に行く時に何かお礼の品を持って行かないとな」
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■Scene2:礼と申し出、そして再びの旅へ
2週間後――私は再び愛媛を訪れ、大王製紙の双子の母・綾香さんと、ユニ・チャームの令嬢の母・美智子さんに挨拶へ赴いた。
「今回は、家族を代表してお礼に来ました」と伝えると、2人は目を潤ませた。
「本当にありがとうございます」
私は韓国から持参した高級化粧品とスキンケアセットを渡しながら言った。
「もし、CMモデルを探しているなら、私……立候補させてください。私にできること、それくらいしかないですから」
その言葉に、美智子さんは笑みを浮かべた。
「実はね……あなたのお姉さん、信恵さんにもお願いしたいと思ってたの」
「えっ、姉にも!?」
「もちろん、ご無理は言いません。ぜひ2人で、とも思ったの」
後日、信恵に相談すると、彼女はあっさりと頷いた。
「凛奈と一緒なら、やってもいいかな。面白そうだし」
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■Scene3:穏やかな観光、そして新たな舞台へ
今回の滞在では事件はなく、私は愛媛の風景を心から楽しむことができた。
道後温泉本館でまどろみ、松山城からの眺望を堪能し、鯛めしにじゃこ天、みかんジュースを片手に街を歩く――
ああ、こんな日がずっと続けばいいのに。
だが、休息も束の間。私は再び女優業の仕事のため、石川県・金沢へと向かう。
そして――
金沢放送局のスタジオ入り口で、私は一人の女性とばったり出くわした。
着物姿で、凛とした雰囲気。だが、その奥にどこか柔らかさを湛えた眼差し。
「あなたが……凛奈さんですね?」
「はい。そちらは……?」
「テルメ金沢の若女将、白石美琴と申します」
彼女の名は、かつて祖母が口にした“伝説の女将”の後継者。
そして、この出会いこそが――
北陸に新たな風を呼び込む“事件の始まり”だった。
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