第77話:感謝と報酬 ―1億円の謝意と未来への誓い―
■Scene01:道後の朝、信じがたい通報
愛媛・道後温泉本館の近く。早朝の穏やかな空気の中、私は旅館の窓から差し込む光で目を覚ました。
――その瞬間、スマートフォンが震えた。
「凛奈さん……今すぐ、お力を貸していただけませんか……!」
電話の主は、ユニ・チャームの専務。
今朝9時、道後公園で行われていた大王製紙とユニ・チャームの合同交流イベント中、3人の子どもたちが忽然と姿を消したという。
紗奈と双子の兄妹・結城隼人と涼花(13歳)――大王製紙の社長の子ども。
倉科美羽(12歳)――ユニ・チャームの社長の娘。
「何かの冗談であってほしい……」そう呟きながら、私は急いで公園へと駆け出した。
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■Scene02:キムチと、怒れる男たちの記憶
道後公園では、警察と報道陣が騒然とする中、2人の親が蒼白の表情で震えていた。
「これを見てください…」
警察官が私に差し出した手紙。そこにはこう書かれていた。
『3人の子どもは預かった。150億円を2社で出せ。理由はそのうち分かる』
私はすぐさま近くのベンチに座り、カバンからキムチの瓶を取り出した。
――パキッ。
蓋を開け、ひとくち。目の前がぐにゃりと歪んで、記憶が過去へと吸い込まれていく。
“会議室。30代半ばの男2人が怒鳴り合っている。”
「十数年、命削って働いて……なんで俺たちだけ切られんだよ!」
「もう後がねえ。金も、家も、家族も……!」
2人は、大王製紙とユニ・チャームの元社員。昨年、同時期にリストラされていた。
彼らは“未来ある子どもたち”を標的に選んだ。復讐の矛先を企業ではなく、その象徴に向けてしまったのだ。
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■Scene03:廃工場にて ―命の瀬戸際
「東温市の廃工場にて、子どもらしき姿を確認!」
警察無線の一報に私はすぐ反応し、特殊部隊と共に突入。錆びた扉の向こうには、怯えた3人の子どもたちが居た。
「……お姉ちゃん……!」
美羽が私を見て泣き出す。私はそっと抱きしめ、頷いた。
「もう大丈夫。誰も君たちを傷つけさせない」
犯人2人も無抵抗で確保された。
「会社は……俺たちをゴミのように捨てた。俺たちには、子どもたちの未来なんて守る余裕、なかったんだ……」
彼らの動機は理解できても、許されることではない。
私は静かに、そして強く告げた。
「大人が自分の傷を、子どもたちに背負わせるのは違う。未来を潰したのは、あなただけ」
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■Scene04:温泉街の感謝と、1億円の封筒
事件から一夜明けた道後温泉の旅館。
その夜、部屋を訪ねてきたのは、紗奈と双子の母・結城綾香(45)と、令嬢の母・倉科美智子(42)だった。
「凛奈さん……これを受け取ってください」
差し出された封筒を開くと、2社からの5000万円ずつ――合わせて1億円の小切手が入っていた。
「あなたがいなければ、私たちの子どもは戻ってこなかった」
「気持ちだけでも十分です。でも、この恩は形にして返したかったんです」
私は一瞬躊躇したが、2人の目の奥にある母の強さを見て、深く頭を下げた。
「ありがとうございます。……この命の重みを、未来に繋げてみせます」
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■Scene05:再会と別れ、そして決意
翌朝、3人の子どもたちと再会した。
隼人、涼花、美羽。(紗奈は誘拐されていない)
↪︎3人は傷が残る身体ながらも、笑顔を見せてくれた。
「ありがとう、お姉ちゃん!」
「凛奈さん、また絶対に会おうね!」
私は3人を優しく抱き寄せた。
「今度は、韓国においで。美味しいキムチ、たくさん用意して待ってるから」
駅のホームで、列車が出発するまで手を振り続けた。
――未来を生きる彼らが、傷つかないように。
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■Scene06:夜の温泉街で、未来を見つめる
夜。私は1人、道後温泉本館の前で立ち止まる。
ほのかな湯けむりと温かな光。
「この力が、また誰かの未来を救うのなら……」
ポケットに入れたキムチの瓶を、そっと握る。
「私は、どこへでも行く。祖母が受け継ぎ、母が繋ぎ、私に託したこの“時間”で――」
次の舞台は、金沢。
かつて祖母が関わった、伝説の女将が遺した未解決の謎が待っている。
キムチと共に、私はその“真実”を見つけに行くのだ――。
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