第76話:嫉妬の連鎖 ―微笑の裏に隠された同僚の狂気-
■Scene1:朝の眉山、そして杏里との再会
翌朝、私は再び眉山公園を訪れた。昨日の事件現場では、警察が設置した規制線が一部残り、地元住民が足を止めてはひそひそと噂していた。
「信恵から聞いたけど……昨日の件、本当にありがとう」
現れたのは、徳島出身の女優・水谷杏里。彼女は昨晩の阿波踊りで一緒に踊った仲間であり、信恵の高校時代の親友でもある。
「どうしても知りたいの。彼女がなぜ、あんな風に倒れていたのか……本当に事故だったの?」
私は静かに頷き、リュックから祖母の手作りキムチを取り出す。
「――確認してみる。きっと何か、見えてくるはずだから」
私は一口、キムチを口に含んだ。
辛さが喉を焼くと同時に、世界が波打つ。
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■Scene2:見えてきた“影”と真相
視界の中で再生されたのは、前日の事件の“前”。
被害女性――名前は松田沙織(32)は、会社の同僚たち数人と徳島に旅行に来ていた。
笑顔で眉山の桜を見上げる沙織。その隣にいるのは、明らかに気まずそうな表情の同僚・白川奈央(28)。
――「旦那さんって、優しいのね。…最近も連絡、してるの?」
何気ない問いかけの中に、鋭く張り詰めた空気がある。
次の瞬間、映ったのは夜のホテルのロビー。沙織が旦那と電話しているのを、遠くから見つめている奈央。
その視線は、嫉妬と怒りに染まっていた。
そして、早朝――
展望広場で1人で座っていた沙織の背後から、奈央が静かに近づく。
「全部、あんたのせいよ……」
その声とともに突き飛ばされた彼女は、桜の根元に頭を打ち、意識を失った。
突き飛ばした奈央は、慌てて去ろうとするも、足を滑らせた痕跡が残っていた――
すべて、ほんの一瞬の出来事だった。
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■Scene3:暴かれた嫉妬と記者会見
キムチの時間旅から戻った私は、現場へ戻り、警察に詳細を伝えた。
浅野巡査と岡村刑事も動き、沙織の同僚に聞き込みを実施。
やがて、奈央が自ら罪を認めた。
「最初は、ただ嫉妬だったんです。でも、あの人の“幸せな顔”がどうしても許せなかった……」
警察署の記者会見で岡村刑事が語る。
「今回の事件は、“感情の暴走”による突発的犯行と見られています。命に別状はありませんでしたが、被害者は今も入院中です」
杏里がポツリと呟いた。
「誰かを羨んで、壊してしまうなんて……悲しすぎる」
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■Scene4:徳島の夜と未来への一歩
その夜、私は徳島駅近くの居酒屋で、杏里とともに地元の名物を堪能していた。
「すだちって、爽やかで美味しいね」
「阿波尾鶏の焼き加減が最高だよね」
続いて、鳴門鯛の煮付け、なると金時の天ぷら、最後に徳島ラーメン。
どれも、心に染みる優しい味だった。
「今回の事件で、もう一度信じられた気がするの。――人の心って、傷つくこともあるけど、きっと修復できる」
私は頷いた。
「その通り。だから、私はキムチを食べ続けてる。誰かの過去の“痛み”を見つけて、癒すために」
やがて列車の時間が近づいた。
次の舞台は、四国最後の県――愛媛。
そして、誰も予想しなかった“超大事件”が、そこで私を待っていた。
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