第74話:緑陰の城下、そして土佐の香り ―高知・植物園と城に舞う一滴の血―
■Scene1:静寂の植物園、そして奇妙な“滴”
高知県・五台山。南国の風に揺れる木々の音に包まれながら、私は高知県立牧野植物園の緑のアーチをくぐった。
高知は、空が広い。空気が澄んでいて、南国ならではのゆったりした時間が流れていた。
「ここが植物学の父・牧野富太郎の足跡をたどる植物園か……」
私はパンフレットを手に、園内を歩いていた。そのとき、温室近くで人だかりができていた。
駆けつけると、スタッフの女性が倒れていた。血のような赤い液体が葉の上に一滴、二滴、落ちていたのだ。
「怪我……じゃない、血じゃない。だけど何かがおかしい」
倒れた女性は意識を取り戻したが、何が起きたか覚えていなかった。しかも、この現場には他にも“花の盗難”や“植物の根が切られる”という被害が続出していたのだ。
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■Scene2:高知城、坂本龍馬の影と謎の封書
植物園の事件の翌日、私は高知市内の高知城を訪れた。天守から望む景色は絶景だった。
坂本龍馬の銅像を背景に、私は城下町の歴史を感じつつも、警察から連絡を受ける。
「昨日、城の石段の下に不審な封筒が置かれていたんです」
そう話したのは地元の警部補。
中に入っていたのは、高知県産の紙で書かれた一通の手紙と、血に似た赤い液体の乾いた痕。
「植物園の事件と繋がっている可能性がある……」
私はその封筒と手紙を持って、高知城下にある老舗の紙屋を訪れ、素材や筆跡の調査を依頼した。
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■Scene3:高知の味覚と“あの味”
その日の夕方、私は「ひろめ市場」に立ち寄った。
カツオのたたきが炙られ、塩と柚子の香りが漂う。
柚子酢をたっぷりかけ、藁焼きの香ばしさとともに味わうと、心がほっとする。
さらに「皿鉢料理」と呼ばれる高知ならではの盛り合わせ料理にも舌鼓を打った。
「……でも、ここに来た本当の目的は、事件の真相を解くこと」
そうつぶやきながら、私はバッグから自家製キムチを取り出し、一口――。
瞬間、視界が滲み、身体が熱くなり、世界が反転する。
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■Scene4:記憶の中の“あの夜”と、真犯人の影
私が見たのは、夜の植物園で何者かが土を掘り返し、花の根を傷つけていた姿だった。
その人影は、封筒を手にしていた……それを高知城に持っていく姿も見えた。
顔は、あの紙屋の二代目――植物園のスタッフの元交際相手だった男。
「彼女が自分を振ったことへの逆恨みと、植物園に新しい施設を作る計画に反対していた」
私は目を開けた瞬間、警察に連絡。すぐに男のもとへ向かうと、彼は驚いた顔で私を見た。
「どうして……そんなことまで分かるんだ」
私は笑って言った。「キムチの力よ。辛くて熱くて、でも真実に近づけるから」
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■Scene5:土佐の風に吹かれて
事件は無事に解決。植物園では再び花が咲き誇り、人々の笑顔が戻ってきた。
私は植物園で買った高知産のハーブティーと、お土産に買った「かつおせんべい」を手に、次の目的地を考えていた。
「さて、次はどこの土地で――キムチを味わおうかしら」
琵琶湖の静けさとはまた違う、土佐の風が頬を撫でた。
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