第72話:岡崎の空に響く声 ―若き映画監督の影―
前回・大阪編を読んでくださった皆さま、ありがとうございました!
今回、物語の舞台は――愛知県・岡崎市。
梅雨の終わり、岡崎城の街で再び私は事件に向き合います。
芸能一家・佐野家、そして消えた若き映画監督。
夢と迷いが交差するこの街で、凛奈はまた一歩、真実に近づきます。
もちろん今回も、
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それでは、岡崎編、開幕です!
■Scene01:再会の街・岡崎へ
梅雨の終わり、私は愛知県岡崎市に降り立った。
雨が上がったばかりの空には微かに虹がかかっていた。私を出迎えてくれたのは、GRT48の佐野芽衣。彼女の父・勇介さんのお願いで私はこの地を訪れたのだ。
「凛奈さん、来てくれて本当にありがとうございます…」
芽衣はどこか不安そうな表情を浮かべていた。
父・勇介さんは俳優であり映画監督、脚本家としても名を馳せている人物。そして母の眞理さんは、かつての名女優であり、現在は東京のシェアハウスの管理人をしている。
芽衣の兄たち、竜也さんと龍之介さんも若手俳優として知られ、妹の葵蘭さんも今や主演級の若手女優。まさに芸能一家――そんな佐野家の“家族のような存在”とも言える、ある若手映画監督が行方をくらましたという。
■Scene02:若手監督・神谷亮の失踪
彼の名は神谷亮、29歳。
2年前に勇介さんの推薦で若手監督コンテストで賞を受賞し、今は大手映画制作会社と契約していた。
「でもね…最近ずっと悩んでたの。芽衣にも言ってなかったけど、私の知る限り、彼は一度も“休む”って言わなかった人。なのに…何も言わず消えたのよ」
勇介さんの妻・眞理さんが静かに語る。
その夜、勇介さんは亮と居酒屋で飲んでいた。
そこに居合わせた40代の脚本家・柳田正嗣が、彼にこう言ったという。
「所詮、お前の映画なんて“勇介のコネ”で作ってるだけだ。独り立ちしてみろよ。今度の新作、お前の名前一つで人は集まるのか?」
■Scene03:キムチの真実
岡崎城公園のベンチに座りながら、私は一人ゆっくりとキムチを口に運ぶ。
独特な酸味と唐辛子の辛みが舌に広がると、意識がふわりと揺らいだ。
―そこに浮かんだのは、居酒屋の空間。
亮は震えていた。柳田の言葉にうつむき、その表情に浮かぶのは“怒り”ではなく“恐怖”と“否定”だった。
「…違う…違う…勇介さんの名前を汚すわけには…」
―そして翌朝、亮は失踪した。
彼が最後に向かったのは岡崎市郊外の古い民家。かつて両親と住んでいた空き家だった。
■Scene04:再会、そして対話
亮の居場所を突き止めた私は、芽衣とともにその家を訪ねた。
埃まみれの障子越しに、彼の怯えた目があった。
「凛奈さん…僕、ダメなんですよ…あんな一言で、全部崩れた気がして…」
「違うよ。崩れたんじゃない、止まってただけ。進む道は…また自分で選び直せばいいの」
私はそう言って、彼に勇介さんから預かった小さなメモを手渡す。
『亮へ。お前が作る映画を、俺は信じてる。
名前なんていらない。お前が語る“物語”を、俺はまた見たい。』
■Scene05:新たなる一歩
数日後、神谷亮は勇介と再会し、再び映画製作に向けた準備を始めた。
柳田にも直接思いを伝え、彼もまた言葉の重みを反省していた。
その夜、芽衣たち佐野家と私は地元の名物“八丁味噌”を使った味噌煮込みうどんを囲み、ささやかな祝宴を開いた。
「また迷ったら、キムチで見てやってくださいよ、未来」
亮のその冗談に、皆が笑った。
そして私は再び次の依頼地へと向かう。
女優として、そして探偵として――
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