第2話:姉・信恵の恋と幽霊ホテル事件
■ Scene1:深夜のゲストハウスに、謎の足音
釜山・海雲台。
観光客にも人気の静かなエリアにある、築30年の木造ゲストハウス。風情があり、どこか懐かしい空気を纏ったその建物は、凛奈の母・梵夜の親族が所有している。
その一室。夜中の2時過ぎ、姉・信恵はベッドから身体を起こした。
――ギィ……ギシィ……
どこからか、廊下をゆっくりと歩くような音が聞こえていた。しかもその足音は、決まって“2時15分”に現れる。
「……また、来た」
信恵はスマホのライトを点け、恐る恐るドアの外に顔を出す。だがそこには誰もいない。ただ古びた床だけが、わずかにきしんでいた。
「さすがに変だよね、これ……」
そんな彼女の様子を、天井の通気口からじっと見ている影があった。
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■ Scene2:凛奈、出動。姉の恋と過去の影
翌日、凛奈は探偵事務所でパンケーキにキムチをのせていた。
「……これはこれでアリ。アリかも。アリ、かな」
「凛奈!お姉ちゃんが来てるわよ!」
ミンジュが叫ぶと同時に、姉・信恵が部屋に飛び込んできた。目の下にはクマ、頬には寝不足の跡、そして手には“除霊グッズセット”が。
「ねぇ、凛奈……ゲストハウスに“霊”いるかも……」
「……またか……。じゃ、現場行くか。キムチ持って」
信恵がふと顔を赤らめて言う。
「あ、でも……ちょっと恥ずかしいんだけど……“幽霊の時間”と“好きな人”が重なってて……」
「ん? 好きな人……?」
「そう。ゲストハウスに泊まってる外国人の青年。毎晩2時すぎにトイレに起きるの、たまたま見てて……それと同じ時間に足音が聞こえるようになって……」
凛奈の目が鋭く光る。
「……じゃあ、どっちかが幽霊、ってこと?」
「やめてよぉ!」
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■ Scene3:深夜2時15分、凛奈が見た“幽霊”
その夜、凛奈はゲストハウスに潜入していた。屋根裏の収納スペースで、音も立てずに張り込み。
時計の針が2時15分を指した瞬間──
ギィ……ギシ……ギィ……
足音が聞こえた。
凛奈はすかさず、タッパーからキムチを取り出して口に入れる。
「行くよ、キムチ時空!」
視界が赤く染まり、空気が変わった。
そこは3日前の夜。凛奈は透けるような存在となって廊下を走る。
足音の正体を目撃したその瞬間──目に飛び込んできたのは、“青年”ではなかった。
彼はゲストのふりをしていた盗撮犯だったのだ。
「くっ……何やってんだよ、こいつ……! しかもお姉ちゃんの部屋の前で……」
そして凛奈は、スマホでその映像を記録する。
“時空跳躍 残り30秒”
赤い光が彼女を包み、凛奈は現代に戻された。
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■ Scene4:録音と映像で犯人を特定せよ!
事務所に戻った凛奈は、録画映像を姉に見せた。
「この人……泊まってる“ジョン”って名乗ってた人?」
「うん……間違いない。でも……そんな……あの人、幽霊なんかじゃ……」
「幽霊じゃない。現行犯だよ、これ。盗撮魔」
凛奈はその場で警察に通報し、証拠映像と録音データを提出した。
数時間後、ジョンはゲストハウスで身柄を拘束された。彼は過去にも複数の宿泊施設で盗撮行為を繰り返していたという。
信恵は涙ぐみながら、凛奈に頭を下げた。
「ありがとう……本当に、助かった。まさか、幽霊じゃなくて……“本物のクズ”だったなんて」
「まあ、恋も事件も、見た目じゃわかんないってことだね。で、お礼の夕飯は?」
「……キムチ鍋。たっぷり辛いやつ」
「最高!」
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■ Scene5:エピローグ
事件解決後、凛奈は屋上で夜風に当たっていた。
「……ねぇ、ばあちゃん。私、ちゃんと“キムチ探偵”できてるかな?」
風の中、どこかからキムチの香りが漂ってきた。
遠く市場で食材を売る祖母・夏栄の笑い声が、微かに聞こえた気がした。
「……明日はもっと辛い事件、来い!」
そして凛奈は、キムチ鍋を背に今日も叫ぶ。
「キムチ探偵★凛奈、出動完了!」
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