第70話:釜山の球音と、アナウンサーの涙 ―生放送の裏で起きた殺意―【前編】
■Scene01:華やかなスタジオ、日韓プロ野球スペシャル
韓国・ソウル。
KBSスタジオには、異様な熱気が漂っていた。
「日韓プロ野球スペシャル」――
今夜の番組には、日韓で人気を誇るスター解説者として、かつての名投手・**安川傑**が登場。
傍らに座るのは、彼の長女であり今注目の日本の(GRT48)アイドル・安川凛音。
「お父さん、今日も熱く語ってくださいね!」
「おう、凛音こそ緊張するなよ。全国生中継なんだから」
凛音はニッと笑いながら、緊張を押し隠して座った。
司会進行を務めるのは、安川傑の妻にして、韓国で元KBOのチアリーダー出身で長年ニュースキャスターを務める朴成旼。
番組は、韓国と日本のプロ野球を繋ぐ大型特番。視聴率は常に20%超え。
華やかなスタジオに、拍手とライトが降り注ぐ――その時だった。
■Scene02:生放送の中の“異常映像”
「……え?」
それは、ほんの数秒の出来事だった。
成旼がニュース原稿を読んでいた大型モニターに、突然“何か”が映り込んだのだ。
砂埃の舞う、暗い廃墟。
そこで背広姿の男が、何者かに刺され、血を流して崩れ落ちる。
一瞬、会場が静まり返る。
「カ、カメラ切って!!」
スタッフが叫んだ。映像はすぐさま切り替わったが、
その数秒で、全国の視聴者の記憶には“殺人映像”が強烈に焼き付いた。
成旼はその瞬間――
自分の夫でも娘でもなく、モニターに映った**“被害者の顔”**を見て、明らかに青ざめた。
■Scene03:数日後、凛奈のもとへ
「…もしもし? お母さん?」
私は、撮影スタジオで次のドラマのリハーサルを控えていた。
久々の主演作で気が張っていたところに、母(梵夜)からの電話。
『あんたに頼みがある。今すぐ釜山に飛んでくれ』
「え? 撮影終わったらじゃダメ?」
『ダメ。これは…成旼(梵夜の妹)からの依頼だよ』
そう告げられたとき、私はすぐに察した。
(…事件が、起きたのか)
私は撮影を終えるとすぐに韓国行きのフライトを予約した。
■Scene04:釜山・市民公園――規制線の向こうに
3日後。
釜山・市民公園。
ここは、先日の映像と“全く同じ構図”が存在する場所だった。
警察が張った規制線の中には、既に遺体はないが、血痕と靴の跡が残されていた。
そこにいたのは――
以前、一緒に事件を追ったことのある40代男性警官・チェ刑事と、初対面の30代女性刑事。
「…パク・リナさん? あの“能力者探偵”?」
「そんな大げさなものじゃないけど。現場、見せてもらえる?」
2人は訝しげに私を見たが、成旼アナウンサーと母の梵夜の名前を出すとすんなり通してくれた。
■Scene05:キムチの力、そして眠りへ
私は、持っていた**“特製キムチ”**を取り出し、1口。
途端に視界がぐらつき、身体から力が抜けていく。
「ちょ、ちょっと!? リナさん?!」
「うわ、寝てる…!」
驚く2人の警官をよそに、私は過去の真実へと“降りていった”。
そこで見えたのは――
殺された男性は、かつて成旼さんが取材していた、政治家と裏社会の“繋がり”を暴こうとした元記者だった。
しかも、彼は一度死んだとされていた“過去の事件”で、密かに生き延びていたのだ。
そして、成旼が生放送で見た“あの顔”に気づいた理由…
それは、彼がかつての“婚約者”だったという過去だった。
■Scene06:目覚め、そして秘密の約束
「…はぁっ、はぁっ」
目を覚ますと、既に夜。
2人の警察官は、私に毛布をかけて待っていてくれた。
「な、何だったんだよあれは…まさかキムチ食って、過去を…?」
「信じられないかもしれないけど、これが“真実”に近づく唯一の手段なの」
「……秘密にする。絶対に誰にも言わない。助けてくれてありがとう」
私は静かに頷き、スマホを取り出す。
(…成旼さんに伝えなきゃ。あなたの過去、そしてその人が命をかけて守りたかったもの)
■Scene07:焼肉と、静かな夜
その夜。
私は釜山の老舗焼肉店「진정한 불고기(真のプルコギ)」で、2人の警官と共に肉を焼いた。
「辛かったか?」
「…悪い意味でな」
「私はお茶全部飲み干しても、まだ辛い!」
私たちは笑った。
だがその笑いの奥には、それぞれの覚悟と秘密があった。
そして私は、次の事件へと向かう準備を静かに始めていた。
――後編へ続く。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。