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第66話:琵琶湖のほとり、秘密を抱いた足跡 ―松の浦別邸の影


■Scene1:琵琶湖の朝、松の浦別邸にて


「おお……これは素敵……」


目の前に広がるのは、鏡のように静かな琵琶湖の水面。そしてそのすぐ前に建つのが、今回の宿泊先――「松の浦別邸」。木の温もりと洗練されたデザインが融合したこの邸宅は、なんと“柴犬と一緒に泊まれる高級宿”として、密かに話題の場所だった。


私は、宿のロビーでチェックイン手続きをしていた。同行しているわけではなかったが、偶然にも別の家族と出会った。


「こんにちは、凛奈さんですよね?」


振り向くと、にこやかに立っていたのは梨紅りくくん。隣には妹の美香ちゃん、そして父の敏幸さんと母の馨さん。そして、柴犬の龍くんと花ちゃんが静かに尻尾を振っている。


「あっ、はい……あの、もしかして黄金さんのご親戚の……?」


「ええ、社長から聞いていますよ。韓国で探偵をしてるって。すごいですね」


「ありがとうございます。こちらこそ、柴犬たち可愛いですね〜!」


そうしてご挨拶を交わしたあと、私はチェックインを済ませ、部屋で荷をほどいた。窓の外には、松の木立を抜けて、キラキラと光る湖面。まるで現実から切り離されたような静寂に、ふっと心が解けていく。



■Scene2:森の小道で発見された人影


翌朝。私は琵琶湖沿いの松林を散歩していた。少し肌寒いが、清々しい空気が気持ちよい。


そのときだった。


「キャーッ!」


鋭い叫び声に、私は思わず駆け出した。声のした方向へ向かうと、柴犬・龍くんを連れた梨紅くんが、木の陰から私を見つけて叫んだ。


「凛奈さん!こっち!倒れてる人が!」


私はすぐに現場へ。そこには30代と思しき女性が、顔をうつ伏せに倒れていた。すでに通報を受けて地元警察も到着し、現場検証が始まっていた。


「彼女、昨夜の宿泊者の一人のようです」


警察官がそう告げると、私はすぐに名刺を出して申し出た。


「私、韓国で探偵をやっている朴凛奈です。この女性について調べることは可能でしょうか?」


「……承知しました。ただし、情報漏洩は厳禁でお願いしますよ」



■Scene3:過去が語る動機 ― キムチの真実


部屋に戻った私は、静かに持参した“祖母の特製キムチ”を一口、口に含んだ。


「――っ」


瞬間、目の前に広がるのは昨晩の情景。被害者の女性はホテルの裏手で、誰かと口論している。男の声。そして……彼女の叫び。


《あなたが横領してたの、全部知ってる!通報するわよ!》


《やめろ……お前には言われたくない……!》


ホテルの元従業員。その人物は、資金を管理していたスタッフで、以前この「松の浦別邸」で働いていた男だった。彼女が彼の秘密を握っていたため、再会の場で口封じを試みたのだ――。


私は映像を閉じて、すぐに警察に詳細を伝えた。男は午後、容疑を認めて逮捕された。



■Scene4:甘さと塩気と、安堵の味


事件の後、私は感謝の意を込めて家族にクラブハリエのバームクーヘンを買い込んだ。しっとりとした甘さに、心がほっと安らぐ。


そして夕食には、滋賀の名物である“鮒寿司”と“焼き鯖そうめん”を堪能。独特の酸味と、鯖の旨味、そうめんの柔らかさが絶妙な一皿だった。


「また来ようかな……」


琵琶湖の水面に反射する月明かりを見ながら、私はそう呟いた。


次は、2週間後。今度は反対側――近江八幡と彦根へ。


探偵と女優、二つの顔を持つ私の旅は、まだまだ続く。


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