第65話:洞窟の奥で聞こえた声 ―龍泉洞、そして厳美渓へ―
■Scene 1:龍泉洞へ――透明な水と透明な嘘
岩手県・岩泉町。
「日本三大鍾乳洞」の一つとして名高い龍泉洞に、凛奈は訪れていた。
水深100メートルを超える地底湖の青は、吸い込まれるように澄んでいる。
「ここが“青の神秘”かぁ……」
同行していた信恵の親友・志芳が小声で言った。
「ねぇ、凛奈ちゃん……実は、撮影スタッフの1人が行方不明なの」
凛奈の表情が変わった。
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■Scene 2:鍾乳洞の“第七湖”にて
その日、撮影で入っていたスタッフの男性が、途中から音信不通になったという。
周囲にあったのは、彼が履いていた濡れた靴と、謎のメモ。
《あなたは、過去の罪を忘れている》
(罪? なにか恨みを買ってた?)
凛奈はキムチを取り出し、深呼吸。
そして――記憶が遡る。
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■Scene 3:過去に響いた怒号
キムチの力で見えたのは、5年前の映像。
そのスタッフは、かつて地元の中学校で教師をしていた。
ある男子生徒がいじめを苦に命を絶った時、彼は「記憶にない」と発言していた。
でも――その日、生徒はこの洞窟の入り口で泣いていた。
「先生……助けてくれるって、言ったじゃん……!」
凛奈はゾクリと背筋が震えた。
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■Scene 4:再会と懺悔
やがて、スタッフの男性は洞窟の奥から無事に発見された。
「自分で入って閉じこもっていた」と打ち明ける。
「過去のことをずっと忘れたふりしてた。でも、今日…許されないって思った」
志芳がそっと凛奈に言った。
「凛奈ちゃん、ありがとう。あなたのおかげで彼、ちゃんと向き合えたみたい」
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■Scene 5:中尊寺金色堂と、厳美渓にて
その翌日、凛奈たちは中尊寺金色堂を訪れ、
続いて厳美渓で名物“郭公だんご”を味わった。
川の流れに揺られる団子に、ほっとする空気が流れる。
「過去も罪も、人の心に深く潜むもの――
でも、正面から向き合えば、未来は変えられるってことだよね」
凛奈は心の中で、洞窟の中で聞こえた“助けて”の声をそっと思い出していた。
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