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第63話:斜陽館に残された手紙 ―太宰治と“喪失”の記憶―


――“人間失格”は、誰の言葉だったのか? 一通の古い手紙が導くミステリー。



■Scene 1:斜陽館への旅


青森県・金木町。

そこにあるのは、文豪・太宰治の生家――斜陽館。

朱塗りの重厚な建物を前に、凛奈は息をのんだ。


「太宰……人間失格、走れメロス、そして津軽」


館内は太宰の直筆原稿、遺品、家族との写真などが所狭しと並ぶ。


凛奈が1人、展示室の片隅で佇んでいると――

突然、警備員が慌てた様子でやってくる。


「すみません! 展示室の隅に、落ちていたんです。この“手紙”、どうも太宰本人のものかもしれなくて……」



■Scene 2:謎の手紙と“記されていない女”


手紙には、こう書かれていた。


「私はもう書けない。書くほどに、あの人の名前が滲んでしまう。

再会など、望んではいけない。

だが、津軽の冬の静けさは、まだ私に許しをくれる気がして――」


だが、不思議なことにその“あの人”について、どの文献にも記録がない。


「太宰の最後の恋人……いや、恋人ですらなかった?」


凛奈はキムチをそっと口に含んだ。



■Scene 3:時間の扉、昭和17年の金木へ


目の前に広がったのは、昭和17年の斜陽館。

まだ若き日の太宰が、女性と話している――その女性は、眼鏡をかけた書店員風の人物。


「名前は……志乃?」


凛奈はすぐに気づく。この女性は太宰の作品群に一切登場しない“封じられた存在”だった。


志乃は、実在した。

そして彼女は、太宰の原稿を支える「影の校正者」だったのだ。



■Scene 4:もう一人の“喪失”


現代に戻った凛奈は、金木の郷土史家に会い、志乃のことを調べる。

彼女は太宰が結婚する以前、短期間だけ金木の書店に勤めていた女性であり、戦後すぐに姿を消していた。


「もしあのまま、彼と東京で再会していれば――違う“走れメロス”が書かれていたかもしれない」


凛奈はそう呟いた。



■Scene 5:手紙の真実と、斜陽の温もり


斜陽館の管理人は、手紙を展示するか迷っていた。

だが凛奈は言う。


「これは“喪失”の記録ではない。

太宰が最も“大切にしようとしていた”記憶なんです。

それを、残してあげてください」


夕暮れ。

凛奈は斜陽館を出て、ひんやりとした風に肩をすくめる。


「この町には、まだ語られぬ物語がある。

それが、探偵としての仕事の糸口だね」



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