第61話:高田城・夜の階段で倒れた影 ―雪と桜と疑惑の螺旋―
■Scene 1:春の夜、高田城に誘われて
新潟県上越市・高田城跡。三重櫓の天守からは、かすかに満開の桜が残る夜の風景が広がっていた。
その日、朴凛奈は偶然にも“夜桜ライトアップ”のイベントの手伝いに来ていた女優の先輩・紫月に誘われて、高田城へやってきた。
「リンナ、せっかくだから階段も登ってみない?」
「うん……でも、ちょっと足元気をつけないとね」
その瞬間――
「キャアアアアッ!!」
高田城三重櫓の階段で、スタッフの1人が倒れていた。
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■Scene 2:階段の影と、滑り止めの謎
倒れていたのは、イベントを仕切る上越文化振興財団の若きスタッフ・村川琴音。
すぐに救急車が呼ばれたが、意識は混濁。階段の途中で頭を打ったらしいが、転倒の原因が不明だった。
現場には、滑り止め用のマットが剥がされた痕跡と、何かの破片。
(事故じゃない。誰かが意図的に“転ばせた”……)
凛奈はキムチをひと口食べ、目を閉じた。
見えたのは――
誰かが暗闇の中で階段のマットを外す姿。だが、顔は見えない。
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■Scene 3:月明かりの城と、過去の影
紫月とともに城跡を歩く中、凛奈は語る。
「昔、高田城ってさ……徳川の監視のために建てられた“裏の城”だったんだって。誰かを“見張る”ための……ね」
そしてもう一つ。高田城のイベントに深く関与していたのが、琴音の恋人・富樫祐一だった。
「祐一さん……少し様子が変だった。事故の直前、“別れ話”をしていたのを見たって、誰かが言ってた」
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■Scene 4:凛奈の再現と、桜吹雪の記憶
凛奈は再びキムチを口にした。今度は鮮やかな記憶――
階段の上、琴音に背後からそっと近づく祐一。そして……何かを彼女の足元に仕掛けて立ち去る姿。
(やっぱり……あなた、やったのね)
だが祐一は否定する。
「俺は別れ話をしただけだ!転ばせたなんて……!」
その時、紫月が拾った“黒い手袋”から、琴音の血痕が検出された。
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■Scene 5:友情と背信の先に
結局、祐一は「事故を装って傷を負わせた傷害未遂」で逮捕された。
「……別れを告げられるのが怖かったんだ」
その言葉に、凛奈は小さくため息をついた。
「人の心の闇って、地層より深いのかもね」
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■Scene 6:夜桜と、わっぱ飯の味
事件の後、紫月と向かったのは地元の名店。
「これが“わっぱ飯”……すごい、ほかほか……!」
ふっくら炊かれた魚沼産コシヒカリに、鮭やイクラ、山菜が彩る。
「ねえ、凛奈。今夜の事件、忘れられそうにないね」
「……でも、桜も人も、また咲く時がある。だから私は、次へ進むよ」
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