第58話:熱闘の裏に秘めた拳 ―仙台・球場の涙―
■Scene 1:夜の楽天生命パークにて
仙台駅からタクシーで向かった先、ライトアップされた楽天生命パーク宮城は、熱気に包まれていた。
この日は、楽天ゴールデンイーグルス対福岡ソフトバンクホークスの注目の一戦。
私は球場外で、姉・信恵の知り合いの元GRT48メンバー、久保志帆理と詩緒里の2人と待ち合わせしていた。
「凛奈ちゃん、今日は来てくれてありがとう!」
「試合、すっごく盛り上がってるよ。今日、始球式やったの、志帆理なんだよ〜」
彼女たちの間に立っていると、突然背後から大きな笑い声。
「お〜い、凛奈ちゃん!会いたかったぞー!」
振り返ると、楽天応援団の発起人としても知られるお笑いコンビ・サンドウィッチマンの2人――伊達さんと富澤さんが、満面の笑みで近づいてくる。
「信恵ちゃんの妹だよね? うちの伊達なんか、ずっと気にしててさ」
「お二人とも…こちらこそ、ずっとファンです!」
私は恥ずかしそうに微笑んだ。その場はまるでバックステージのようで、笑いと歓声に包まれていた。
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■Scene 2:乱闘、そして沈黙
楽天が勝利し、観客が帰路につき始めた夜――事件は起こった。
球場裏の通路で、楽天の若手エース高橋憲斗と、ソフトバンクの外野手永山健志が激しい口論の末、殴り合いとなったのだ。
2人はかつて高校時代からの親友。にもかかわらず、今夜は互いに顔を腫らし、病院へ搬送された。
翌日、球団からの事情説明は一切なかった。
病院で見舞いを申し出たが、両者とも「話したくない」と。
「これは…キムチの出番だな」
私は宿泊先のホテルで、母から届いた特製キムチを取り出し、一口、静かに味わった。
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■Scene 3:秘めた涙の理由
キムチの辛さと共に、私は“昨夜の球場の裏側”へと時間を遡る。
――球場の照明の下、憲斗と健志は言い争っていた。
「お前、もうわかってんだろ…俺が移籍しなきゃならなかった理由」
「それは…!」
「あのスカウト、俺にだけ言ったんだ。“お前と一緒にいる限り、将来性が見えない”って…!」
――高校時代から常に比較され、互いに支え合ってきた2人。
しかし、プロの世界は残酷だった。
永山は“親友と一緒にプロに行きたい”という夢を封じ、楽天からの指名を断り、ソフトバンクへ。
その結果、チームは別れ、疎遠になっていた――。
そして昨夜、試合中に投げられた一球。
それが、かつての友情の炎に油を注ぎ、ぶつかり合いを引き起こしたのだった。
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■Scene 4:グラウンドの中心で、再び
数日後、球場で行われた記者会見。
そこに並んで立っていたのは、高橋憲斗と永山健志。
「俺たち、またバッテリー組むつもりはないけど…でも」
「でも…お互い、もう一度、“友達”からやり直せる気がします」
2人は顔を見合わせ、そして、しっかりと握手した。
観客席からは温かな拍手が湧き起こる。
私はその中に混じって、静かに見守っていた。
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■Scene 5:光と笑顔と――再会
球場の外。突然、声をかけてきたのは、俳優の黒羽麻璃央だった。
「凛奈さん、信恵ちゃんの妹って聞いてたけど、ほんとそっくりだね。…姉妹で凄いね」
私は思わず照れ笑い。そこに、もう一人の影――
「おう、凛奈ちゃん!仙台まで来てたのか!」
それは、私の大好きな芸人狩野英孝さん!
「あっ、英孝さん!?本物!?」
「あはは、本物だよ。キムチ探偵、テレビで見たよ。すごいな〜。…あのさ、今度ネタの中で“未来が見えるキムチ”って使っていい?」
「どうぞどうぞ!」
みんなで笑いながら、仙台の夜は笑顔で包まれた。
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エピローグ
その夜、私はホテルの一室で再びキムチを一口。
「人の心って、案外、辛さに強い。…でも、甘さも忘れちゃいけない」
心がほんのり温かくなった。
そして、次の舞台は――栃木・あしかがフラワーパーク。
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