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第50話:静寂の観光地 ―蔚山・昌原連続殺人事件―


■Scene 1:静けさの中の叫び


韓国南東部――蔚山広域市。

私は、週末の撮影で訪れていた大王岩公園の海風を感じながら、観光地としても有名なその静けさに癒やされていた。

だが、その静けさが――まさか、“死”の前触れだとは思いもしなかった。


「凛奈さん、またです……」

事務所スタッフのジウンが、慌てた声で電話をかけてきた。


「昌原市の韓国民俗村で、20代の女性が遺体で発見されたと……。しかも、数日前にも蔚山で同じような事件が」


私はすぐに、現地へと向かった。



■Scene 2:二つの観光地、二人の死


昌原の現場――“昌原韓屋村”では、古風な韓屋ハノク造りの建物の裏庭に、和装風の服を着た若い女性が倒れていた。

蔚山での第一の被害者も同様に、古民家の中で“古典衣装”を身にまとっていた。


「……衣装、舞台用のものだ」

遺体のそばに落ちていたチラシは、地域イベント『歴史の中の私』の宣伝。

参加者が時代衣装を着て、インスタ映えする撮影を楽しむ新観光アトラクションだった。


「ターゲットは“参加者”……?」



■Scene 3:キムチが語る過去


私は、祖母から受け継いだ特製キムチをひとくち――

瞬間、視界が揺れ、周囲の空気が変わる。


目の前には、被害者の一人である女性――

彼女は衣装を着て、誰かと言い争っていた。


「撮るのやめてって言ったでしょ!」

「でも、君がここにいること、俺だけが知ってるんだよ」


男の顔は見えなかった。だが、手にはスマートフォン。

彼女の目は、怯えと怒りで震えていた。


「……ストーカー?」



■Scene 4:意外な繋がり


昌原の観光局に確認を取ると、イベントの衣装はすべて特定の衣装提供会社が独占的に扱っているとわかった。


会社名は「㈱リ・モダン撮影衣装」――

代表は40代後半の女性。かつて女優を夢見ていたが挫折し、裏方として生きる道を選んだ人物だった。


被害者のSNSを調べると、彼女たちが全員、ある匿名アカウントからしつこいDMや盗撮被害を訴えていたことが発覚。


しかも、そのアカウントのIPは――「リ・モダン撮影衣装」の事務所付近と一致。


「まさか、代表が……?」



■Scene 5:悲しき加害者


代表は逮捕された。


だが、キムチが私に見せた“もう一つの過去”は、胸を締めつけるものだった。


かつて代表は若い頃、自身が観光地のイベントで盗撮被害に遭い、それが原因で芸能界の道を絶たれたという。

彼女は、自分のような被害者を増やしたくない一心で監視を続けていた。


しかし、いつしか“正義感”が“偏執”に変わってしまった。


「守るはずだったのに……私は、また誰かを傷つけた」


警察に連れていかれるその背中は、悲しげだった。



■エピローグ


蔚山の海岸に立つ私のもとへ、祖母から電話が届いた。


「次は、ソウルの“景福宮”だね。チマチョゴリの子役女優、覚えてる?」


「うん。彼女がどうして芸能界を辞めたのか――確かめに行ってくるよ」


私は、潮風に吹かれながら小さく頷いた。



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