表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/117

第48話:休暇と犯行 ―目の前で起きた強盗の真実―


■Scene 1:ひとときの休暇、釜山の午後


春の陽射しが降り注ぐ午後。

女優としての連ドラ撮影が終わり、私は久しぶりに完全オフの一日を手に入れた。


探偵事務所の入るビルの隣、路地裏にあるカフェでアイスアメリカーノを飲んでいたときだった。


「すいません、釜山の探偵の方ですか?テレビで見ました!」

「あ、はい……まぁ、そうです」


そんなふうに声をかけられるのにも慣れた。

マスクと帽子で変装しているつもりでも、最近は釜山でも顔が割れている。


スマホに通知が届く。

父・洋佑から「夕飯は何がいい?」のLINE。

なんて平和な日なんだろう。そう思った――その時だった。


「キャアアアアア!!誰か、助けて!!」


反射的に音のした方向を振り返る。

事務所近くの小さな宝石店から、男が金色のバッグを持って飛び出してきた。


目が合った瞬間、私はコーヒーを置いて駆け出していた。



■Scene 2:走る、捕まえる、でも――


ヒールのないスニーカーだったのが幸いだった。

男が商店街の角を曲がった瞬間、私は思いきりタックルを決めた。


「っ……うぐっ!」


倒れた男の腕を後ろにねじり、警察に通報する。


通報から数分、パトカーが到着し、男は現行犯逮捕。

周囲から拍手が上がる。カフェの店員さんが言う。


「さすがキムチ探偵……!」


でも私は、なぜか胸騒ぎがしていた。

あまりにも、簡単すぎる。


そして逮捕された男が呟いた言葉が、私の心を捕らえて離さなかった。


「――これで、あの子が助かるなら……それでいい」



■Scene 3:キムチの記憶に見る“犯人の真意”


私は事務所に戻り、冷蔵庫から自家製の“トガニ・キムチ(牛すじ入り発酵白菜)”を取り出した。

口に入れた瞬間、胸の内側がざらりと熱くなる。


――記憶が、流れ込んでくる。


男はパク・ミヌ(29)。

5年前に妻を病で亡くし、現在は小学生の娘・スヨンと二人暮らし。

娘は重度の腎臓病で、移植手術を控えていた。

しかし――彼の会社は倒産。預金も底をつき、病院への前金4000万ウォンを払えなかった。


「助けられる方法は、もう……これしかなかったんだ」


そしてもうひとつの事実。

ミヌが強盗を行った宝石店は、脱税と保険金詐欺に関与していたこと。

彼がかつて清掃スタッフとして働いていた時期に知った事実だった。



■Scene 4:凛奈の決断と、静かな結末


事件の本質を知った私は、地元警察の担当刑事に事実を共有した。

「凛奈さん、それでも罪は罪ですよ」

「分かっています。でも、この人の動機と背景は“真実”です」


数日後。

ミヌには執行猶予付きの判決が出された。

保険金詐欺をしていた宝石店の店主も別件で逮捕された。


そして――


ある日、事務所に小さな封筒が届いた。

中には手紙と、一輪の造花のブローチが入っていた。


「娘が移植を受けられることになりました。

 あの日、あなたに出会えてよかった。

 ありがとう、キムチ探偵さん」



エピローグ:味と真実の境界線


父(火野洋佑)の日本料理店『和魂(わこん)』。

私はカウンターで、鯛の煮つけを食べながら、ふと独り言。


「キムチが見せてくれるのは、罪じゃなくて“その奥の理由”なんだよね…」


父は笑って言った。


「お前が探偵やってる理由も、きっと“その先”にあるんだろうな」


私はその言葉に、少しだけ涙が出そうになった。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ