第43話:呪いの面と父の真実 ―山田家・10年目の告白―
■Scene 1:しのぶからの手紙
釜山に戻って数日後、私は韓国での撮影現場から帰宅したばかりだった。
ふと事務所のデスクに目をやると、一通の手紙が届いていた。
差出人は――山田しのぶ。
あの青森で出会い、私と一緒に事件を追った少女。
手紙にはこう綴られていた。
「凛奈さん、あのね。やっぱり私、お父さんの“自殺”が信じられないんです。
10年経ったけど、今も何か引っかかってて――
最近、“ある人”から父の死の“証拠写真”が送られてきました。」
同封されていた写真を見た瞬間、私の指が止まった。
それは、10年前に自殺したとされる山田恵一さんが
“倒れている横に誰かが立っていた”ことを示す影のような輪郭を捉えたものだった。
■Scene 2:再び鹿児島へ
私は飛行機に乗り、しのぶの待つ鹿児島へ向かった。
現地で再会したしのぶは、少し大人びた表情をしていた。
「あの時のこと……小さかったけど、ちゃんと覚えてる。
父は、ねぶたの面をずっと作ってた。夜も作業してて――
その日、来客があったの。黒い傘を差してた人。雨、降ってなかったのに」
その記憶と、届いた写真の影。
さらに私が調べた警察記録には――自殺とされた現場に、第三者の足跡があったが、当時は「搬送時のもの」とされていた。
■Scene 3:キムチで時を超えた夜
私は、しのぶの家の仏間で手を合わせたあと、
自作の“いぶし桜島大根入りキムチ”を口に運んだ。
――時が戻る。
10年前の鹿児島。
山田恵一は、紙細工の面を削りながら、誰かと言い争っていた。
「この面は渡せない……それは、戦争で死んだ兄の形見なんだ!」
男の顔は見えなかったが、その声には確かな怒気があった。
“形見を奪いに来た男”――
それは、恵一さんと長年対立していた**伝統芸能の資産ブローカー・五島清勝**だった。
彼は、戦時中に一族が隠していた“幻の面”を恵一が所有していることを知り、買収しようとしていたのだ。
そして――
「だったら、お前ごと……」
その言葉の直後、私は画面の奥で突き飛ばされた恵一が、頭を打ち倒れる姿を見た。
■Scene 4:10年目の告白と、証拠の復元
私はしのぶと共に、五島清勝が今も所有していたコレクション倉庫に向かい、
“幻の面”を見つけ出した。
そして裏面に付着していた古い血痕と、倉庫に保管されていた当時の防犯映像のテープを科学的に復元し――
そこには、倒れた恵一に覆いかぶさり何かを奪う五島の姿が、ぼんやりと映っていた。
鹿児島県警は再捜査を決定。
五島は遺族への妨害行為や証拠隠滅、虚偽申告の疑いで書類送検されることとなった。
■Scene 5:涙の面と、父の言葉
事件が明らかになった夜。
しのぶは、父の残した最後の面を手に、静かに涙を流した。
「お父さん、ずっと……守ってくれてたんだね……」
「うん。しのぶが真実を求めたから、私はここまで来られたよ」
私は微笑み、彼女の肩に手を添えた。
「君の未来には、呪いの面じゃなく、希望の面が必要だね」
■ラスト:凛奈、次の舞台へ
釜山へ戻る前日、私はしのぶの母と食卓を囲んだ。
鹿児島の郷土料理に、少しだけ自作のキムチを添えて。
「これが……娘さんの力の源なんですね」
「ええ、“思い”を味に変えるのが、私の仕事ですから」
釜山の空港に降り立った私は、深呼吸した。
「次は、俳優として。探偵として。
……私自身の“物語”を、始めよう。」
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そして、次作からは——
いよいよ 韓国編(釜山編)始動!
新たな事件、新たな街、新たな出会いが、凛奈たちを待っています。
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