表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/120

第41話:青森・ねぶたの闇 ―灯籠に潜む殺意―


■Scene 1:ねぶたの国へ


宮崎から一転、私は北の地――青森県へ降り立った。

夏の始まり、ねぶた祭の準備で町全体が活気づいている。

青森駅を出ると、空気は澄んでいて、肌寒い。

私は目的地のひとつである青森ねぶた会館へ向かった。


そこには、私を待っていた人物がいた。

青森市役所文化課の職員であり、ねぶた保存会のメンバーでもある工藤みなとさん。


「凛奈さん……今年の祭の準備中に“事故”が起きたんです。

…でも、私はどうしても“事故”とは思えないんです」


その“事故”とは、ねぶた山車の組み立て作業中に起きた感電死事件。

犠牲者はベテランのねぶた師・高倉清志(65)。

その山車の灯りを調整していた最中、感電して絶命。


だが、彼の手袋には切り込みがあり、絶縁ゴムが意図的に剥がされていた形跡があった。



■Scene 2:祭に潜むもう一つの影


私は工藤さんに案内され、制作中のねぶたを見学。

紙と針金と灯りで構成された巨大な山車の内部には、緊張感と静けさがあった。


その時、ふと隅で少年が話す声が耳に入った。


「おい、あのおじさん死んだのって……あの“呪いの面”のせいなんじゃ?」


「ばっか、お前……それ、ほんとに言うなって……!」


私はその“呪いの面”に反応し、工房の裏にある収納庫に案内してもらった。

そこには、使われなかった古い面がいくつもあった。


その中に、一つだけ異様に黒ずんだ、笑っていない鬼の面があった。


「それは……20年前にも問題になった“呪われた面”って言われてて…

清志さんは、それを“あえて使う”って言ってたんです」



■Scene 3:青森山田高校付近での異常な事件


同時期、青森市内の別の場所――

青森山田高校近くで、奇妙な事件が相次いでいた。


夜道で男子サッカー部の学生が追いかけられたという証言が複数寄せられていたのだ。

被害はまだ軽微だが、不審者は“50代の男性”“帽子を目深にかぶり、足を引きずっている”という共通の特徴があった。


私はその報告を聞きつけて、青森県警の担当者に取材し、少しずつ裏を取り始めた。


「昔プロ選手目指してたって噂あるよ。でも、大けがしてダメだったって……」


調べると、その男は元Jユースの選手であり、高倉清志の実の息子であることが判明する。



■Scene 4:キムチが照らす“父と息子の業”


私は夜、青森のホテルで自作のキムチ鍋を食べた。

一口目を口に入れた瞬間、時間が揺れる。


――20年前。

若き日の高倉清志が、息子の試合を見に来ていた。

「俺が伝統を背負ったせいで、お前の人生まで縛ってしまったんじゃ……」


泣きながら面を握りしめる姿と、

怒りで山車を蹴り飛ばす少年の姿が、同時に見えた。


そして、今――

父を“事故”に見せかけて殺したのは、息子だった。



■Scene 5:ねぶたの夜、罪の灯り


息子――**高倉勇人(53)**は、父が自分の夢を奪ったと信じ込んでいた。

さらに父が“呪いの面”を使うと知り、

「ならば、ほんとうに呪われてしまえ」と絶縁手袋を細工したのだった。


私は勇人を追い詰め、涙を流す彼の胸にこう語った。


「呪いなんてものじゃない。

あなたが選んだのは、ただの“逃げ”だったんです。

父を憎んだあなた自身の弱さが、灯りを壊したんです」



■Scene 6:山車に灯る新たな光


祭当日。

高倉清志の弟子たちが完成させた山車が、夜の街を練り歩く。

中には、かつて使われなかった“笑わない鬼の面”が、

ほんのわずかに笑っているように見えた。


私は工藤さんに握手を求められ、少し照れながらも応えた。


「凛奈さん……やっぱり、あなたは“真実の火”を灯す探偵ですね」



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——


ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!


その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。

読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。


「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!

皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ