第40話:宮崎・マンゴー色の罠 ―甘き香りと血の夕陽-
■Scene 1:南国の空港と、完熟の香り
鹿児島の桜島を後にして、私は高速バスで宮崎県へと移動した。
車窓から見える山々と、遠くに揺れる海岸線。
到着したのは、トロピカルな空気が漂う宮崎ブーゲンビリア空港。
マンゴーの香りを含んだ風が頬を撫でた瞬間、私はこの地でただの休暇を楽しみたくなった……が、そんな願いはすぐに打ち砕かれた。
「凛奈さん……助けてください。私の兄が、突然いなくなったんです」
連絡をくれたのは、坂元真衣。
宮崎市内で観光農園を経営する家族の一人娘であり、兄・圭吾はその後継者として農園の中心に立っていた人物だった。
「昨日の朝、農園に出かけたまま連絡が取れなくて。
兄の車だけ、県道沿いの小さな展望台に停まっていたんです……」
私は観光農園の写真に写った、圭吾の優しい笑顔に目を留めた。
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■Scene 2:日向灘の風と、黄金の果実
坂元農園は、宮崎市郊外の青島エリアに広がる約2ヘクタールの敷地を持ち、マンゴーやパパイヤなどの南国果実を育てていた。
特に「完熟マンゴー」は地域ブランドとして高級ホテルや百貨店に卸されるほどの品質だった。
「この農園、最近テレビ局が取材に来たばかりで……兄もすごく緊張してたんです」
真衣は言う。
だが、私は農園内にある作業小屋の一角で、違和感のあるテレビ機材の箱と、破かれた契約書のような紙片を見つけた。
しかも、その裏には鉛筆書きでこうあった。
《農地は売らない。譲らない。》
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■Scene 3:キムチで視た“夕陽の密約”
私は宿泊先でマンゴー入りのピリ辛キムチを口にし、能力を使った。
視界が揺れ、時間が戻る。
圭吾が、スーツ姿の男たち2人と、農園の休憩スペースで揉み合っていた。
「農地をリゾートに変えたい」「宮崎を“第二沖縄”にする」
男たちはそう言っていた――が、圭吾は拒否した。
そしてその翌日、彼は姿を消した。
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■Scene 4:謎の取材クルーと“映されなかった映像”
私は、農園を取材したという地元テレビ局の番組制作会社を訪ねた。
そこで出てきたのは、外注先のディレクターが行方不明になっているという情報。
さらに調べると――なんと、そのディレクターこそ、圭吾に接触していた男の一人だった。
彼らは観光番組を装い、農園を買収するための偽装取材をしていたのだ。
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■Scene 5:血の夕陽と、兄の行方
夕暮れの展望台。
私は、かすかな物音を聞き取った。
背の低いマンゴーの木の奥に、土に埋もれた古い貯水槽があり、そこから微かな声が。
「……助け……誰か……!」
圭吾は、生きていた。
突き落とされ、蓋を閉じられていたのだ。
警察により2人の“偽取材者”は逮捕された。
彼らは大手建設会社の関連企業の者で、土地買収のために恫喝まがいの手段を使っていた。
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■Scene 6:甘さと苦さの先にあるもの
事件の後、私は坂元家の自家製マンゴープリンと、果実をそのまま凍らせたアイスをいただいた。
真衣は笑顔で言った。
「兄は、もうすぐ農園にカフェを作るって言ってます。
“凛奈のマンゴーアイス”って名前にしたいそうです」
私は照れながらも、再び次の地図を広げた。
そして、ふと思い出す。
「青森のねぶた……一度、ちゃんと見てみたいんだよね」
火と風と、怨念と――
次なる舞台は、北の青森。
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