第39話:鹿児島・桜島の告白 ―黒豚と火山灰の向こうに―
■Scene 1:桜島を望む日、電話の着信
「……鹿児島?」
朝、韓国・釜山の事務所で朝食のキムチスープを飲んでいた私――朴凛奈は、珍しく日本からの直通電話に目を細めた。
発信元は、日本の老舗旅館「山田館」。場所は鹿児島県・霧島温泉郷。
「お嬢さん……申し訳ありません。ウチの娘が、突然姿を消したんです……」
電話の主は女将の山田早苗。
旅館の看板娘である一人娘・山田しのぶが、昨日夕方を最後に姿を消したという。
「昨日は、桜島まで友達と一緒に行くって言ってたんですが……連絡が取れなくて」
なぜ私に?と聞くと、女将の知り合いであり、以前私が救った俳優・一之瀬湊の母親と高校時代の同級生なのだとか。
こうして私は、再び日本――鹿児島県へと飛んだ。
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■Scene 2:鹿児島市内、火山灰舞う中で
「……火山灰、すご……!」
鹿児島中央駅を降りた私は、まず市電に揺られて桜島フェリー乗り場へ。
目の前に広がるのは、雄大な桜島。活火山として知られ、今も噴煙を上げている。
強い風が火山灰を巻き上げる中、私はしのぶのSNSを辿りながら、彼女が行く予定だったとされる場所を一つずつ当たっていった。
「ねえ見て〜、“黒豚とんかつカレー”、最強ぉぉぉ!」
それは、彼女が失踪前に投稿していたストーリー動画の一部。
背景には、天文館の人気店の看板が。
私はそこに立ち寄り、名物の黒豚カツを口にしながら、周囲の聞き込みを開始した。
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■Scene 3:キムチを食べ、過去を見る
私は旅館の一室で、持参したキムチを一口。
――視界が変わり、数日前の天文館。
しのぶが、見知らぬスーツの男と話していた。
どこか緊迫した様子で、男が小さなUSBメモリを彼女に手渡し、こう言った。
「これを“あの人”に渡してくれ。お前の父の仇を取るチャンスだ」
“父の仇”――?
私は山田女将に再度尋ねた。
「……しのぶの父は10年前に亡くなりました。…自殺だったと聞かされてましたが、警察から“証拠不十分”の一言で……」
女将は震える手で語った。
「彼は昔、ある大手医療企業の内部告発をしようとしてたの」
その企業の元幹部が今、鹿児島でリゾート再開発を進める重鎮として活動しているという。
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■Scene 4:海辺の廃墟、隠された告白
私は桜島フェリーを再び渡り、しのぶの目撃情報があった旧海軍跡地の近くの廃墟へ。
中には――薄暗いランタンの光と、かすれた声。
「……凛奈、さん……?」
しのぶだった。
男に渡されたUSBを隠した彼女は、それを狙っていた何者かに追われ、ここに身を潜めていた。
「父の死の真相……これに全部、入ってるんです。
でもそれを渡した人も、もう……」
USBには、ある病院の患者カルテ改ざんと医薬品不正使用の証拠映像。
それは、鹿児島の医療と再開発の裏を暴くには十分だった。
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■Scene 5:未来へ繋ぐ告発
しのぶの身柄は確保され、USBの証拠は弁護士経由で警察へ提出された。
追っていた謎のスーツ男たちは――企業が雇った私設調査員だった。
「父の名誉は……守られました」
しのぶは、そう微笑んだ。
私は旅館のロビーで最後に、黒豚のしゃぶしゃぶと芋焼酎をいただいた。
「……凛奈ちゃん。今度は、宮崎でマンゴーも食べてってね。湊くんのお母さん、あっちに嫁いだのよ」
と、女将は言う。
次の舞台は、南国・宮崎。
完熟マンゴーの香りの中に、また別の“甘い罠”が待っている――。
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