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第36話:上越・直江津編:死者が語る謙信の真実 ―春日山の遺言


ご覧いただき、ありがとうございます!

今回の舞台は、新潟県上越市・直江津。

日本海の港町、そして戦国最強の義将・上杉謙信のふるさとです。


■ 川中島の戦いとは

戦国時代、越後の上杉謙信と甲斐の武田信玄が信濃の川中島で何度も激突した、有名な戦い。

死闘を繰り広げる中でも、謙信は信玄が塩不足で困窮していると知ると、

「敵といえど困っている者を見捨てるべきではない」と、塩を送ったという逸話が残っています。


■ 上杉謙信の「義」

謙信公は「利」ではなく「義」を重んじ、

私利私欲よりも人としての道を貫いた武将とされています。


──そんな春日山城を舞台に、

現代にも続く「義」と「利」の対立が浮かび上がります。


・春日山城と直江津の町

・歴史研究者の不審死

・“義将”謙信の意外な真実

・翡翠色に輝くヒスイ海岸

・そして、笹団子の優しい甘さ


探偵・朴凛奈が、この歴史の町で、

過去と未来の狭間にある「真実」と向き合います。


それでは、どうぞ――

春日山に吹く風と共に、直江津へ。


■Scene 1:風が吹く町、上越市へ


柏崎から列車に揺られ、私は上越市・直江津へ向かった。

町に降り立った瞬間、潮の香りと、懐かしい風が肌を撫でる。


直江津は、かつて日本海を駆けた北前船の寄港地。

そして、この町にはもう一つ――上杉謙信公ゆかりの名城がある。


「春日山城跡に行こうと思って」


私はそう呟き、軽やかな足取りで城跡へと向かった。



■Scene 2:春日山城跡と“謙信の教え”


春日山城跡。

標高180メートルほどの山城跡には、今もなお謙信の気配が残る。


「敵に塩を贈る」


戦国の常識を覆したとされる、あの美談――

川中島で対峙した武田信玄に、物資が届かず窮していると知り、

塩を贈ったという逸話。


「その精神って、今でも通じると思うんだよね」


私は、訪れた直江津歴史資料館の展示室で足を止めた。


「利ではなく義に生きよ」


謙信の遺訓が刻まれたその一節が、まるで今日の事件の鍵のように思えた。



■Scene 3:研究者の“自殺”と残された史料


直江津で起こった事件――

それは、歴史研究者である**比留間宗佑ひるま そうすけ教授(67)**の死。


「春日山城に関する研究の最中、遺書を残して転落死。自殺と断定」


だが、私は何かが引っかかった。

遺書の文面が不自然すぎたのだ。


「『謙信公の真実を…世に出すことは叶わなかった』――そんなの、教授が書く言葉じゃない」


比留間教授をよく知る地域ガイドの**滝本慎吾たきもと しんご**は、涙ながらに語る。


「彼は、謙信公の“ある新史料”を見つけていた。発表直前に、死ぬなんておかしい」



■Scene 4:ヒスイ海岸に流れ着く真実


私は、比留間教授が最後に足を運んだというヒスイ海岸へ向かった。

翡翠のように光る小石が転がる海岸線を歩きながら、私はキムチをひと口。


視界が揺れ、過去へと遡る――


「これは……上杉謙信直筆の書状……? “我、武田との和議を求める”――」


教授は見つけてしまった。

“謙信=孤高の義将”というイメージを覆すかもしれない政治的な裏の書状を。


だがそれを暴けば、今ある地元の観光戦略が崩れてしまう。



■Scene 5:真相は、名士の中に


調査の結果、教授の死に関与していたのは、

地元経済団体の幹部・長谷川泰造はせがわ たいぞう


「教授の研究は危険だった。観光資源に泥を塗るつもりか!

あんな史料、世に出してはいけなかったんだ」


私は静かに言った。


「でも、それが“歴史”というものじゃないですか?

光も、影も、すべて受け止めるのが“真実”を知るということ」



■Scene 6:春日山にて


長谷川の罪が明るみに出た後、私は再び春日山に登った。


そこから見える直江津の町と、日本海の彼方――

比留間教授が守りたかった“義の世界”が、今も息づいていた。


私はバッグから一つの包みを取り出す。


「江口さんの笹団子、また食べよっと」


風に舞うよもぎの香りとともに、教授の言葉が聞こえてきた気がした。


「謙信公が生きていたのは、“戦”の時代じゃない。“信”の時代だよ」



エピローグ:旅路の先へ


新潟三部作――完了。


私は荷物をまとめ、次の地へ向かう準備をした。


そのとき、スマホが震える。


【着信:龍堂 翔一】


画面には、韓国で名を馳せる企業グループ「龍堂グローバル」の社長――

そして、その隣にはある名が。


「助けてほしいんです……綾瀬ひかりを」



ここまで読んでくださり、ありがとうございました!

直江津編では、戦国の英雄・上杉謙信公の「義」と、

現代社会の「利」をめぐる葛藤を描きました。


歴史は常に「光」と「影」の両方を持ち、

人が語り継ぐことで、その形を変え続けています。


今回登場した「敵に塩を送る」逸話は、

史実としての裏付けは少ないながら、

人々が謙信公に「そうであってほしい」と願った“理想の義”でもあります。


そして春日山城跡は今も静かに、

直江津の町と日本海を見下ろしています。


私はこの物語で、「歴史とは人の心に生きるもの」だと、

少しでも伝わればと思いました。


新潟三部作はこれで一区切りですが、

旅はまだ続きます。


次回は、韓国へ――

世界的企業「龍堂グローバル」の陰謀、

そして“綾瀬ひかり”救出編へ。


それではまた、次の旅先でお会いしましょう!

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