第31話:東京連続ストーカー事件 ―狙われた元高校教師、椎名遥香―
ご覧いただきありがとうございます!
今回は東京・新宿を舞台に、芸能界の裏でひそかに愛を育んでいた
国民的俳優・一之瀬湊さんと、その妻・遥香さんの物語です。
彼らの“秘密の結婚”を狙ったのは、
一人の少女――彼に憧れ、愛にすがった少女の、止まらない想いでした。
・芸能界の光と闇
・先生と生徒、そして夫婦になったふたりの絆
・誰かを好きになった気持ちの、切なさと危うさ
探偵・朴凛奈が、
この小さな恋と嫉妬の行方に優しく寄り添います。
今回はアクション控えめ、
少し甘く、少し切ない東京編。
ぜひ最後までお楽しみください!
■Scene 1:新宿駅の再会
日曜の午後、私のスマホに韓国から国際電話が鳴った。
「……信恵?」
姉・信恵の声はいつになく真剣だった。
「お願い、凛奈。東京に来て。湊くんの奥さんが――狙われてるの」
そのひと言で、私は釜山の空港へ向かった。
そして数時間後、新宿駅・南口。
「凛奈さん!こちらです!」
駆け寄ってきたのは、国民的俳優・一之瀬湊。
そして、隣には――彼の妻、椎名遥香。
凛とした目元に優しい声、落ち着いた所作。彼女は元国語教師で湊の元教え子だった。
現在は教職を離れ、教育支援センターに勤務しているという。
「……私、誰かに……見られてる気がするんです」
遥香は怯えた声でそう告げた。
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■Scene 2:秘密の結婚と“知りすぎた女”
遥香と湊はひそかに結婚していた。
当時は教師と生徒という立場。
卒業後に交際が始まり、数年後に極秘で入籍。
湊のファンや関係者への影響を考え、発表は控えていた。
だが、遥香が勤める教育支援センターに突如匿名の投書が。
《あの女は、一之瀬湊の奥さん。教師時代に手を出していた最低女だ》
さらに、自宅前に花束、無言電話、郵便物の中身を荒らされる嫌がらせ。
犯人は遥香の過去も住所も、あまりにも“詳しすぎた”。
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■Scene 3:キムチと“執着の記憶”
私は持参した東京風白菜キムチを口にした。
すると、遥香の通勤路が映る――
誰かが電柱の陰から、じっと彼女を見ていた。
さらに、遥香の旧勤務校の教頭室のパソコンに、ある記録が。
《湊くんと先生が仲良くしてるとこ、見たことある。
先生、あたしの“夢”を奪った》
パソコンにログインしていたのは、元生徒・佐野 彩音。
かつての湊の熱烈なファンで、遥香に一方的な嫉妬心を抱いていた。
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■Scene 4:対決、そして告白
新宿駅から尾行された遥香。
私はすぐに動き、警察に連携を取りつつ、追跡。
公園のベンチで遥香に近づこうとする少女――それが、彩音だった。
「湊くんは……あたしだけのものだったのに……
あなたが教師じゃなかったら、あたしが……」
「違うよ、彩音ちゃん」
遥香が一歩前に出た。
「私が湊くんと結ばれたのは、先生と生徒を終えてから。
彼の未来を想って、自分の役割を終えてからだったの」
彩音は泣き崩れ、警察に保護された。
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■Scene 5:釜山の夜、祝福の食卓
事件後、私は姉・信恵と湊、遥香を連れて、釜山へ戻った。
向かったのは、
私の父である朴 洋佑→日本名:火野 洋佑)が営む
日本料理店『和魂』。
広々とした個室で、父が次々と料理を運ぶ。
「君たち……強い絆だね」
父は酒を酌み交わしながら、そう呟いた。
信恵は笑いながら言った。
「遥香さん、今度の舞台は福岡でどう? あ、湊くんと共演でもいいかも!」
遥香は照れながら微笑んだ。
私は心の中でひとつ、こう思っていた。
(この日常が守られるように――私は、これからも探偵でいよう)
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エピローグ:そして新たな依頼へ
食後、スマホが鳴った。
《次は、金沢だ。君に会いたがってる“志芳”って子がいる》
「志芳……?」
心の奥がざわついた。
それは、信恵の古い友人であり、女優。
そして今、テルメ金沢で何かが起きているという。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
今回は、芸能界という華やかな世界の裏で、
ひっそりと育まれた「秘密の恋」と「静かな嫉妬」を描きました。
湊さんと遥香さん、
ふたりの穏やかな幸せが守られるように――
そんな想いで、探偵・凛奈も走り回りました。
恋も、憧れも、時には誰かを傷つけてしまうもの。
でも最後には、ちゃんと優しさで終わる物語であってほしい。
次回は、北陸・金沢編!
温泉とグルメ、そしてまた一つ、事件の香りが……?
また次の物語でお会いしましょう!