第29話:五稜郭に消えた瞳 ―若手俳優失踪事件・すすきのの夜に―
ご覧いただき、ありがとうございます!
今回の舞台は、北の大地・北海道。
札幌・すすきののネオン、そして函館・五稜郭の雪景色――
冬の夜に、若き俳優がひとり、消えました。
・主演俳優の失踪
・札幌から函館への“氷の逃避行”
・失われた記憶と、星の形
・鮭トバ、大根キムチ、五稜郭の雪
探偵・朴凛奈が、冬の夜に隠された“心の闇”に寄り添い、
再び光を灯す物語です。
今回は、事件というより“心の再生”を描いた静かな物語。
旅の気分で、冬の北海道をご一緒いただけたら幸いです。
それでは、どうぞ――
冬の星へ、旅立ちましょう。
■Scene 1:北海道・すすきのの夜
12月初旬。釜山より一足早い冬を迎える北の大地、北海道・札幌。
イルミネーションが煌めくすすきのの夜。
一見平和そうなその街に、静かに不穏な空気が流れていた。
「主演予定の若手俳優・**佐伯煌翔**さんが行方不明になっています――」
私はそのニュースを釜山のカフェで目にした瞬間、
航空券を予約していた。
煌翔は、韓国でのドラマ撮影を経験した数少ない日本人俳優。
韓国事務所とのパイプもあり、うちの芸能事務所でも過去に共演経験があった。
「この事件……私が動くしかない」
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■Scene 2:撮影予定地と“消えた夜”
煌翔が消えたのは、札幌でのドラマロケ直前の金曜日の夜。
目撃情報によれば、最終的な行動はこうだ!!
•午後9時:すすきのの焼肉店でスタッフと会食
•午後10時半:1人で抜け、バーへ
•午後11時以降:消息不明
翌朝、宿泊予定のホテルには戻っていなかった。
「でも不思議なのは……スマホも財布も置いたまま。まるで“誰かと会うつもり”だったみたい」
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■Scene 3:キムチと“氷の記憶”
私は北海道限定の鮭トバと大根入りキムチを取り出し、一口。
途端に、すすきののネオンと冷たい風が目の前に広がる――
煌翔は、バーを出た後、電話をかけていた。
《……君、まだ覚えてる? 函館で一緒に見た、あの星の形……》
その後、向かったのは札幌駅。
そして、深夜の特急北斗に乗っていた。
「五稜郭……!?」
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■Scene 4:函館へ、そして五稜郭公園
私はその足で、列車に乗り函館市へ。
目指すは、星型の城郭・五稜郭公園。
この場所は、煌翔がかつて交際していた女性――椿ほのかとの“別れの場所”だった。
五稜郭の塔を昇ったその瞬間、私は驚愕する。
展望台のベンチに、煌翔が――震える体で、うずくまっていた。
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■Scene 5:消えた理由と、心の闇
「……全部、投げ出したかったんだ」
「何もかも……役者としての自分も、期待される自分も、過去の自分も」
煌翔は、かつて椿ほのかと“二度目の共演”を拒絶し、自分を責めていた。
「彼女は……事故で記憶を失って、俺のことだけ忘れてたんだ。
そんなの……辛すぎて、もう……」
だが、ほのかは、事故の後もずっと煌翔の演技を見ていた。
「あなたの演技だけは、心に刺さったって……」
凛奈はポケットから一枚のメモを取り出す。
《煌翔くんへ ──今度のドラマ、必ず観に行くね》
《“星の形”を忘れないで》
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■エピローグ:再出発の地
翌朝。五稜郭の雪はしんしんと降り積もっていた。
煌翔は凛奈の手を取り、深く頭を下げた。
「……ありがとう。もう一度、やってみるよ。
星の形を胸に、もう一度立ち上がる」
凛奈はそっと微笑む。
「芸能界も、探偵も。過去を背負うからこそ、前を向けるんや」
釜山へ戻る特急の中で、凛奈は次の依頼メールに目を通していた。
「次は……福岡? 女優の失踪? ふふ、休む暇もなさそうやな」
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