第28話:舞妓失踪事件 ―祇園の影と、あぶり餅の記憶―
■Scene 1:祇園の路地裏と、消えた舞妓
立山登山の余韻も冷めやらぬ数日後、私は京都へ向かった。
目的は久々の休暇と取材兼ねたロケ撮影だったけど――
着いて早々、祇園南側の路地裏でざわめく人々の声が耳に入る。
「舞妓はんが、突然消えはったんやて……」
「“一和”さんに寄って、“かざりや”さんであぶり餅食べはった直後に……」
あぶり餅の有名店、かざりやと一和。
そのどちらにも姿を見せていたのは、20歳の舞妓――琴葉。
「また……偶然なのか、それとも引き寄せてしまったのか……」
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■Scene 2:消えた夜と“包み紙”の謎
関係者への聞き込みを始めると、1つだけ奇妙な共通点が浮かぶ。
•琴葉は事件の晩、2軒のあぶり餅屋をハシゴしていた
•その後、清水寺方面へ1人で向かったという証言が複数あった
だが、なぜか彼女の姿は監視カメラに映っていない。
そして“かざりや”の座敷には、半分だけ燃えた包み紙が。
そこに書かれていたのは――
「罪、消えず。京の華の血を、再び……」
「脅迫……? いや、もっと個人的な、復讐?」
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■Scene 3:キムチと、3年前の“舞妓転落死事件”
私は「柚子風味白味噌キムチ」を口にした。
白味噌に漬けた甘味のある京野菜のキムチ――
舌に広がった瞬間、過去が流れ込む。
そこには、琴葉がかつて姉のように慕っていた舞妓、**真宵**の姿。
《まよい姉さんが死んだのは……事故じゃない》
《わたし、信じてない……あの人が“手を離した”んやって……!》
3年前、祇園の料亭の裏階段から落ちて命を落とした真宵。
当時は不注意による事故とされていたが――
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■Scene 4:“もう1人の舞妓”の正体
私は、かざりや近くで再び一和の女将に会う。
「実は、あの子――琴葉ちゃん、事件の夜に“もう1人の舞妓はん”と口論してたんどす」
それは、祇園界隈で評判の若舞妓――綾鶴。
なんと彼女は、亡くなった真宵の従妹だった。
「姉さんのこと、勝手に“事故じゃない”って言わないで」
「あなたの言葉で……私の家族、壊れたのよ!」
怒りをぶつける綾鶴。そして――彼女はこう続けた。
「私は……“包み紙”なんか、知らない。
でも、琴葉は“真宵の死を暴く”って、誰かと会う約束してたの」
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■Scene 5:清水寺、舞妓はんはそこにいた
清水寺の裏手、森の中に続く山道。
そこにある高台の茶屋跡で、私は見つけた。
琴葉――生きていた。
「誰にも見つからへんように、ここで待っとった。
まよい姉さんの真相を……確かめたかった。あの人に、会って……」
その“あの人”とは、真宵の元恋人であり、事件当日、料亭で揉めていたという元仲居の男性だった。
彼が語った真実。
「手を……離したんじゃない。あの日、階段が腐ってて……俺も巻き込まれかけてたんだ。
でも、あの子は“舞妓は常に美しく”って言って……俺の手を、拒んだ」
それは――プライドと哀しみの混じった“美しき誤解”だった。
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■エピローグ:京の華は散らず
数日後。
琴葉は無事に戻り、綾鶴とも涙ながらに語り合った。
「姉さんはきっと……いまでも、私たちを見てる」
「祇園の華は、そう簡単には散らへんよな」
私は清水寺の舞台で、少しだけ深呼吸する。
「京都……やっぱり、綺麗で、怖くて、儚い場所」
帰りにもう一度“かざりや”に寄り、あぶり餅を一皿。
「……次は、どこでまた事件と出会うのか――」
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