第27話:黒ユニフォームと白球の謎 ―富山・野球場に立つ亡霊―
みなさん、こんにちは。
今回の舞台は、北陸・富山県。美しい立山連峰と、静かな街にある一つの高校グラウンドから物語は始まります。
立山登山を楽しむはずだった凛奈を呼び止めたのは――
かつてのプロ野球選手・富山球児の、謎の死。
「人生をやり直したい」
そんな一途な思いを胸に、グラウンドに立った男の真実と、
それに向き合う刑事たち、そして“キムチの記憶”が、静かに絡み合います。
野球を愛した一人の男が、最期に願ったこととは?
凛奈の静かな旅と、胸を打つ結末を、どうか最後まで見届けてください。
■Scene 1:立山へ――そのはずだった
その日、私は休日を満喫するつもりだった。
日本の富山県・立山連峰、あの壮大な山々を一度はこの目で見てみたくて。
韓国・金浦空港を飛び立ち、到着したのは富山きときと空港。
「きときと」とは富山弁で“新鮮”という意味らしい。
立山登山のための登山靴もウェアも完璧。
タクシーに乗り込み、軽快に携帯ニュースを開いた、そのときだった。
《速報:富山市内・富山第二高校にて男性死亡。ユニフォーム姿のまま遺体で発見》
しかも――誰一人その男性の素性を知らないという。
■Scene 2:遺体の正体は“元プロ野球選手”
「……富山、球児……?」
ニュースの写真には、どこかで見たような男の姿。
ユニフォーム姿で、土のグラウンドのど真ん中に倒れていた。
――彼の名は、富山球児。
かつて名を馳せたプロ野球の外野手だったが、賭博・カジノ依存の末、球界を追われた。
そして3ヶ月前――消息を絶ったままだった人物。
「どうして彼が、高校のグラウンドに?」
■Scene 3:県警の再会と、再びの捜査
現場にいたのは、富山県警の重鎮たち。
•舵村大輔:刑事本部長。冷静沈着な眼差し。
•千蔵吉宗:捜査一課・警部補。前回の“富山大学教授殺人事件”以来の再会。
•井上久義:警部。私のことを「辛いキムチの子」と覚えていた。
千蔵さんが笑って言った。
「まさかまた君と富山で会うとはね。……そういや、俺、同期の新村隆志にこの話をしたら驚いてたよ」
そして3人は私を連れて、富山第二高校へ。
■Scene 4:思わぬ“有名人”
校門をくぐると、生徒たちがざわざわし始めた。
「えっ、キムチの……」
「あの富山大学の事件、解決した子だよね?」
……なんと、私のことが富山県内で知られていたらしい。
(えっ……正直、ちょっと照れる……)
野球部の部室には、球児選手が残した“手帳”があった。
《人生をやり直したい。
もう一度、白球を追ってみたい――》
そこには、彼が“高校時代の原点に戻ることで、人生を立て直したい”という決意が綴られていた。
■Scene 5:キムチと“最後のキャッチボール”
私はベンチに腰を下ろし、特製の昆布締め風キムチを口にした。
過去の記憶が溢れ出す。
球児は深夜、ひとりで高校のグラウンドに立ち、空に向かってボールを投げていた。
涙を流しながら――
《人生を巻き戻したい。ここからやり直したい。野球だけが、俺を生かしてくれるんだ……》
しかしその後ろから、フード姿の誰かが近づいていた――
■Scene 6:犯人の正体
翌朝。
県警本部で分析した防犯カメラと指紋照合から、犯人が判明。
それは、球児の元後援会会長だった城戸一真。
球児に融資した金を踏み倒され、逆恨みで襲撃。
だが、彼はその場で言った。
「俺は……グラウンドに立って泣いてるアイツを見た時……
“殺すべきじゃなかった”って……思ったんだよ……!」
■エピローグ:立山の頂へ
事件はわずか1日で解決。
日曜の朝、私は改めて登山口へ。
天気は快晴。澄んだ空気の中、白く輝く立山連峰の稜線が美しかった。
「富山球児さん。あなたの夢、空まで届いてますよ」
キムチの小瓶をザックの中にしまいながら、私は登っていく。
次は……どこの県へ? 旅は、まだ続く。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回登場した富山球児は、かつての栄光と挫折、
そして「原点に帰ることでしか救えなかった自分」と向き合った人物でした。
事件そのものは一見、哀しい復讐劇のようにも見えます。
でも、球児がグラウンドに立っていた姿には、
“やり直したい”という純粋で切実な想いが確かに宿っていました。
人生に巻き戻しは効かないかもしれない。
けれど、**「もう一度やってみたい」**という気持ちは、誰にでもきっとあるはずです。
次回、凛奈が訪れるのは――京都… 祇園。
舞妓が失踪し、祇園とあぶり餅を食べる。
それではまた、旅とキムチの香りと共に、お会いしましょう。
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