第20話:蜃気楼に浮かぶ殺意 ―うどんとラーメンと教授の影―
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今回の舞台は、北陸・富山。
立山連峰の絶景と、魚津の蜃気楼。
そして、煮込みうどんとブラックラーメン。
……と、旅気分で訪れた凛奈を待っていたのは、
富山大学構内での、密室殺人事件でした。
・大学教授の刺殺事件
・バラバラにされた古文書と、謎の組織GLORY
・助手の秘めた野心と、尊敬ゆえの葛藤
・富山のグルメと、春の風景
春の旅路は、やがて記憶をめぐる戦いへ――
探偵・朴凛奈が、キムチを片手に“過去”へ飛び、
富山の街に隠された真実を暴きます。
今回はちょっと観光も満喫しつつ、
じっくりと謎解き&人間ドラマを描いてみました。
それでは、どうぞ――
富山の春、旅のはじまりへ。
■Scene 1:富山の風、旅の香りと煮込みうどん
春のはじまり。凛奈は「富山の旅番組」のゲストとしてロケに訪れていた。
「ふふ……やっぱり来てよかった」
立山連峰を背景に、凛奈は“系庄の煮込みうどん”をすする。
地元の出汁と太麺の力強い味が、身体の芯まで染み込む。
彼女は明日、蜃気楼が現れるという魚津の海辺を訪れる予定だった。
「明日は立山行って、夜はブラックラーメンかな」
そんな呟きの最中――
サイレンの音が、凛奈の耳を切り裂いた。
⸻
■Scene 2:富山大学の構内にて
「富山大学文学部の教授が、研究室で刺殺されていたとの通報です」
駆けつけた先には、血に染まった本棚と、倒れた教授の遺体。
既に現場には県警が入っていた。
その中にいたのは――富山県警刑事部長・舵村大輔。
そして、捜査一課の千蔵吉宗警部補、
さらに、鋭い目つきの井上久義警部がいた。
井上が凛奈に近づき、驚いた顔をする。
「あなた……昨日、鯖江で行方不明になったGLS科学の社長令嬢を救出した少女では?」
「え? なんでそれ知ってるの?」
「全国ネットで話題になってた。“謎の女子高生探偵”って」
凛奈が目を見開いたとき、舵村が口を開いた。
「君、名前は?」
「朴 凛奈。探偵兼、女優、たまにキムチ時間旅行者です」
「……なんだそれは」
⸻
■Scene 3:疑われる秘書、奇妙な証拠
被害者は、考古学部門の著名な教授・天王寺真道。
現場には荒らされた形跡がなく、唯一おかしかったのは――
「棚にあった“古文書の模写”がバラバラに破られていたこと」
第一通報者は、助手の葉山沙織(20代後半)。
教授の共同研究者で、天才的な記憶力と古文書解読の技術で知られていた。
だが彼女の供述はどこか曖昧だった。
「研究室に着いたとき、教授はもう倒れていました……鍵も開いてましたし」
「じゃあ、どうやって外部の誰かが入ったと?」
「分かりません……でも、私じゃありません!」
凛奈の目が鋭くなった。
「ふぅん……じゃあ、聞くけど、“教授の血が付いたシャーペン”が、あなたのカバンから出てきたのは何?」
⸻
■Scene 4:一日目の夜、もう一度キムチを
事件解決に時間がかかると判断した凛奈は、
一日目の夜、予定していた「系庄の煮込みうどん」で身体を温める。
「これは……うまい。心がほどける味」
だが心のモヤは解けない。
──あの教授は、何を守ろうとしていたのか?
バラバラにされた古文書。
秘書の行動の不自然さ。
その夜、凛奈は宿でひとり、特製の“立山山麓白菜キムチ”を口にした。
すると――
視界が暗転し、教授の“最後の1時間”に潜り込む。
⸻
■Scene 5:教授の真実と、秘書の怒り
記憶の中で、教授はノートパソコンに向かい、こうつぶやいていた。
「沙織の研究は、私を超える……だが、GLORY財団と繋がっているのは許せない」
GLORY――凛奈がこれまでも追ってきた“記憶操作”を行う組織。
どうやら教授は沙織がGLORYに協力していたことを突き止め、研究の一切を打ち切ろうとしていた。
そして、凛奈は見た。
古文書の断片に書かれた“漢文”の一文。
「記憶とは、他人に与えられるものにあらず。己が刻むものである」
そして教授の背後に、ペンを持った沙織の姿が……
⸻
■Scene 6:ラーメンの香りと、犯人の涙
翌朝、凛奈は西町大喜の店先にいた。
「ふー、ブラックラーメンって本当に真っ黒いんだね……でもうまっ!」
そこへ警察から連絡が入り、県警本部へ。
「凛奈さん、昨日のキムチ……本当に過去に行ったんですか?」
「はい。私の能力、あれ、ガチなんです」
最初は懐疑的だった舵村も、凛奈の分析と証拠の提示を前に納得せざるを得なかった。
「沙織さんは、自分の“研究”を否定されたことで逆上して……?」
「でも彼女は、教授を尊敬していた。殺意というより、“最後の叫び”だった」
沙織は涙を流して認めた。
⸻
■エピローグ:賞状と、辛すぎたキムチ
後日、富山県警にて表彰式が開かれた。
凛奈には「特別協力探偵」として、感謝状が手渡される。
「キミの能力は、本当にすごいな。……ただ」
舵村本部長は顔をしかめた。
「昨日のキムチ、食べさせてもらったが……」
「辛すぎました?」
「……死ぬかと思った」
「ふふ、それが“真実の味”なんですよ」
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