第14話:血塗られた仮面―時を越える犯人の罠―
過去は変えられない。
でも、過去に囚われた心なら、変えられるかもしれない。
1988年、釜山。
一人の男の人生は、誤った逮捕で狂い、時を越えて狂気となった。
“仮面”をかぶったままでは、誰も未来に進めない。
だから私は、この手でその仮面を剥がす。
たとえ、相手が私の祖母に人生を壊された男でも。
さあ、釜山の夜に決着をつけに行こう。
“赦し”と“真実”を、キムチとともに。
■Scene 1:罠にかけられたキムチ探偵
凛奈は追跡するも、男は異常な速度で逃走。
だが、凛奈は彼の動きに“ある特徴”を見抜く。
「……この人、記憶に頼ってない。プログラムのように“ルート”をなぞってる」
ミンジュが情報を持ってくる。
「この男、GLORYの旧名義『SONAエンタ』にいたAD、“ペ・ギヨン”と一致するわ。
彼は1988年、夏栄に誤認逮捕されて失踪……そしてGLORYに“AI記録技師”として再雇用されてた」
「まさか、“記憶を元にしたAI人格”を自分にインストールしてる……?」
「つまり、彼は“過去と未来の人格”を1人で同時に持ってる――」
「……“時を越える犯人”って、文字通りだったんだ」
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■Scene 2:最後の仮面を剥がせ
凛奈は男を地下倉庫へ追い詰める。
そこで男は、狐面を静かに外した。
「……君の祖母に人生を壊された。
でも……記憶と記録が俺を生かした」
「違う。あなたは自分で自分を縛ってただけ。
過去に囚われて、未来まで殺そうとしてる!」
男がナイフを振り上げたとき、凛奈は“キムチ壺”を叩き割った。
中に入っていた“祖母・夏栄の録音ボイス”が再生される。
「あの時、間違えてごめんなさい。
でもあなたの未来を誰かが止めるなら、それは“あなた自身”しかいないのよ」
男の手が止まり、涙が零れる。
「……間違えてたのは、俺だ」
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■Scene 3:仮面は、風に消えた
事件後、釜山に平穏が戻った。
凛奈は祖母・夏栄の元を訪れ、報告をする。
「ばあちゃん。1988年の事件、全部終わったよ」
夏栄は静かに微笑んだ。
「キムチ探偵、立派になったな」
凛奈は市場の片隅に、白い狐面を埋めた。
それは、“記憶を越えた赦し”の証として。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!
今回の事件は、シリーズでも最も重く、でも最後は温かい結末を迎えました。
犯人・ペ・ギヨンは、ただの犯罪者ではなく「時代の犠牲者」。
1988年の釜山は、決してきれいな街ではなく、間違いも多かった。
でも、凛奈はそんな過去に怒るでも逃げるでもなく、
「赦しと向き合うこと」を選びました。
それは、祖母・夏栄から受け継いだ“本当の強さ”かもしれません。
そして、次回の舞台は――
東京・表参道。
華やかな街の裏側で起きた、未成年令嬢の誘拐事件。
凛奈は再び時空を超えて、真実を追います。
それではまた、釜山や東京のどこかで。