第13話:血塗られた仮面―釜山連続殺人事件の闇―
釜山の夜は、いつもどこか香ばしく、辛さと冷たさが交錯している。
でも、今夜の空気は、ただ辛いだけじゃない――血の匂いが混ざっていた。
1988年。
あの年、釜山では何が起きていたのか。
そして、2026年。
誰が、なぜ、過去を再現しようとしているのか。
キムチの香りをたどり、私は“あの日”へと飛ぶ。
それは、家族の記憶と、消された真実を探す旅でもあるから。
さあ、狐面の仮面劇の幕が、再び上がる。
■Scene 1:仮面と血の街
2026年、釜山市内で立て続けに発生した3件の殺人事件。
すべての現場に共通していたのは、
・被害者の口元に残された「赤いキムチ」
・現場に残された“白い狐面”
・そして、「1988」という数字が血文字で壁に書かれていた
警察は「宗教儀式または模倣犯」と発表したが、記者たちはある噂に騒いでいた。
「これ、1988年に釜山で起きた“未解決の連続絞殺事件”とそっくりじゃないか?」
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■Scene 2:再現される“過去の罪”
探偵事務所。
凛奈のもとに、警察関係者からの極秘依頼が入る。
「君なら“キムチ”の力で……1988年に戻れるんだろ?」
凛奈は静かにうなずいた。
「でも、ただ行くだけじゃダメ。“今”と“あの時”を繋がないと、“仮面の男”は止められない」
彼女は祖母・夏栄から譲り受けた“1988年に漬けられたキムチ”を取り出す。
「行くよ。あの年の真実を見届けるために」
赤い光が彼女を包み、時空跳躍が始まった。
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■Scene 3:1988年、血と煙の釜山
空はスモッグに覆われ、街は今より荒く、空気が乾いていた。
その街の片隅――若き日の夏栄(刑事時代)と、同僚たちが捜査に奔走していた。
そこに現れた“透明な存在”としての凛奈。
彼女は見た。犯人とされる男が捕まりそうになる直前――
**「狐面をかぶった“もう一人”が、捜査資料を盗んで逃げた」**ことを。
「つまり……“本当の犯人”は別にいた」
そして、1988年の犯人は警察の誤認逮捕により自殺。
事件は迷宮入りとなり、記録は“封印”された。
「その“本物の犯人”が……2026年に再び現れたの?」
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■Scene 4:現在、四件目の殺人予告
凛奈が現代に戻ると、警察に1枚の予告状が届いていた。
「1988年、僕を忘れた街に
再び“正義”を問う。
次は、あの女の子――
“凛奈”だ」
その瞬間、事務所の電気がすべて落ち、監視カメラが白黒に切り替わった。
「来る……!」
凛奈が息を飲んだとき、ドアの前に“狐面の男”が立っていた。
読んでいただき、ありがとうございました!
今回の物語では、「1988年の釜山」と「現代」が交錯する、シリーズ屈指のシリアス回でした。
1988年といえば、韓国ではソウルオリンピックの前年。
釜山も発展途上で、まだまだ混沌とした空気が漂っていた時代です。
その時代背景の中で起きた“未解決事件”を、凛奈がどう向き合うか。
過去の刑事・夏栄、現代の探偵・凛奈、そして仮面の男。
それぞれの“正義”と“罪”が交錯していきます。
次回――
「狐面の男」との直接対決、そして隠された真実へと、
物語はさらに深く潜っていきます。
お楽しみに!