第150話:そして、釜山に陽が昇る
■Scene1:釜山空港・早朝
朝焼けの空に、飛行機が滑走路を走ってゆく。
凛奈とジウンは、巨済から戻りその足で空港へ。
「明日はドラマの撮影再開ですね」とジウン。
「うん。でも、今日は一日だけ“探偵じゃない日”でいさせて」
小さく微笑んだその時――
待合ロビーにて、ひとりの女性が凛奈に近づく。
赤い封筒を差し出し、こう言った。
「これは、私の弟の“最後の声”です。
彼は日本で失踪しました。どうか、探してもらえませんか」
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■Scene2:赤い封筒の中、“一通の辞書ページ”
封筒の中には、英和辞典の一ページが入っていた。
ある単語にだけ蛍光ペンで線が引かれていた。
“retrace(再びたどる)”
そして余白には小さな文字が。
「If I go missing, retrace my steps through the books I’ve touched.」
ジウン:「弟さんは、“言葉を通して行動の痕跡を残してる”……?」
依頼者:「ええ。彼は、東京・吉祥寺の古書店で翻訳と校正の仕事をしていました」
凛奈は、言葉の重みに気づく。
「“本の声を辿る”――また、“翻訳”が関係しているんですね」
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■Scene3:事務所にて、兄姉との会話
帰宅後、凛奈は家族に報告。
テヒョン(兄):「日本に行くのか?」
信恵(姉):「仕事、どうするのよ?」
凛奈:「主演ドラマは一旦クランクアップだし、撮影休み中に短期の調査ってことにする」
テヒョン:「それ、本当に“短期”で済むか?」
凛奈はキムチパックを胸ポケットにしまいながら笑う。
「わかんない。でも、“言葉を辿る旅”って、ちょっと素敵でしょ」
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■Scene4:夜、空港からの旅立ち
夜。
釜山空港から、日本へ向けて旅立つ飛行機。
凛奈は窓の外の闇を見つめながら、心の中で呟く。
(“再びたどる”――誰かの声を、また拾いにいく。
今度は、**日本の“言葉の迷宮”**へ)
〜釜山編を終えて〜
EP141から始まった釜山編、いかがでしたでしょうか。
事件の裏に潜む人間模様、そして少しずつ明かされる凛奈の過去や人間関係。いつもながら、平穏な日常は長くは続かず、次々と巻き込まれていく事件……。
釜山という大都市の喧騒のなかで、凛奈が何を見て、何を守り、何を失ったのか。読んでくださった皆さんが、それぞれの視点で感じていただけたなら幸いです。
さて、凛奈は再び日本へと向かいます。
今度はどんな土地で、どんな人々と出会い、どんな事件に挑むのでしょうか――
「事件が楽しみ」という言い方は少し語弊があるかもしれませんが(笑)、彼女の歩む先に待ち受ける新たな物語に、どうかご期待ください。
次章、日本編、まもなく開幕です――!
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それでは、また次の事件でお会いしましょう!




