第139話:五稜郭の影 ― 滑り台の下の遺体
■Scene1:電車で向かう歴史の町
朝、私はJR小海線からJR東日本のローカル線に乗り換え、
目的地――JR竜岡城駅に降り立った。
ここには日本に2つしかない“和風五稜郭”の一つ、
**竜岡城跡**があり、地元の歴史好きからも密かな人気を集めていた。
私は軽くストレッチしながら、地図を片手に公園へ向かう。
「滑り台……そこが、この町で最も“平和な場所”のはずだった」
だが、その“はず”は、すぐに打ち砕かれた。
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■Scene2:地元の主婦の悲鳴
「きゃあああっっっ!!」
高原に響く悲鳴。
滑り台の下を掃除していた女性が、腰を抜かして座り込んでいた。
滑り台の下、砂場の縁の中に誰かの足が露出していた。
私はすぐに野辺山署に通報し、現場を封鎖。
内藤刑事もすぐに現場に到着。
「また、遺体か……これは“仕上げ”だな」
遺体は20代男性。
ポケットにはクシャクシャのレシートと、封筒の切れ端。
そして、小さな袋に入った“白菜キムチ”が残されていた。
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■Scene3:最後のキムチ、最後の記憶
私はその白菜キムチを静かに口に含んだ。
・男は、物流業者の中で“証拠を管理する役割”を担っていた
・彼が持っていた封筒は“口座と土地情報”の鍵
・殺された理由は、「最後の証拠隠滅」だった
・そして、犯人は……立て籠もり事件の兄とは異なる第三者
・詐欺グループの“裏スポンサー”だった――
映像の最後、誰かがこう呟く。
「全部、片付けろ。例の女(凛奈)にも手を出すな。
だが“彼”が口を割ったなら、仕方ない」
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■Scene4:もう一人の“黒幕”
封筒に残された半分の印影を照合すると、
そこに浮かび上がったのは建設会社の元幹部の名前。
それは、平沢峠で殺された男の上司。
現在は退職して行方不明。
私はすぐに、野辺山署と連携し、全国指名手配の手配に動く。
「これで……全てが、繋がった」
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■Scene5:五稜郭と“名もなき被害者”
事件の被害者となった20代の青年。
彼は末端の雑用係として動いていただけだった。
「詐欺の全体像なんて知らなかったはず……」
それでも、彼の命は失われた。
滑り台の下という、子供の夢と平和の象徴の場所で。
私は遺体の前でそっと手を合わせた。
「あなたの命が、真実を照らしました。
だから……あなたの死を、決して無駄にしない」
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■Scene6:帰路と次なる場所へ
内藤刑事と短く握手を交わし、私は次の地へと向かった。
「次は……帰国、だな」
そう呟いて私は、竜岡城駅から松本経由で長野駅へ。
そこから東京へ新幹線で移動し、羽田空港へと向かった。
機内の窓から見下ろす長野の山々に、
私は静かに別れを告げた。




