第11話:韓国俳優、消えた主演男優の謎を追え!
■Scene 1:消えたトップスター
釜山・広域撮影スタジオ。
その日、韓国の国民的俳優“ハ・ミンジェ”主演の新作映画『境界線の上で』のクライマックス撮影が行われる予定だった。
だが、予定時刻になっても、主演俳優が現れなかった。
「え? さっきまで控室にいたって……どういうことですか!?」
監督もマネージャーも、顔面蒼白。
控室にはミンジェの携帯電話、財布、そして“最後の台本”だけが残されていた。
その台本には、手書きの一文が添えられていた。
「これは“未来の自分”へのメッセージだ。僕がどこにいるのか、台詞を読めばわかる」
「これは……暗号か、狂言か、それとも……演出?」
撮影現場にいた助監督が、凛奈の名を出した。
「“パク凛奈”って女子高生探偵がいるらしい。あいつなら……もしかしたら」
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■Scene 2:探偵事務所に舞い込む依頼
凛奈は、胡麻キムチスープを食べながらミンジュに言った。
「俳優の失踪? それ、プロモーションかドタキャンじゃないの?」
「でもさ、ほら、これ見て!」
助監督から届いた“台本”の写真データには、こんなセリフが載っていた。
「僕は存在しない。
僕が生きるのは、“物語の外側”だ。
君がキムチを食べたとき、その世界に僕がいる」
「……え、台本、私のこと言ってる?」
「完全に“キムチ探偵の読者に向けたセリフ”みたいじゃない?」
凛奈は身を乗り出した。
「これは……ただの失踪じゃない。現実とフィクションの境界が混じってる」
「つまり?」
「これは、“作品の中に俳優が飲み込まれた”事件」
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■Scene 3:台本の中へ――キムチで世界を読む
凛奈は台本に挟まれていた“乾燥キムチ”の匂いをかぐと、確信した。
「……このキムチ、ただの小道具じゃない。記憶を運ぶ媒体だ」
彼女は特製キムチを一口かじり、読み始める。
すると、視界が歪み、文章の中へ“沈み込む”ようにして跳躍する。
着いた先は、映画『境界線の上で』の世界。
曇天の空、灰色の街、すべてがフィルム越しのような空間。
そこで凛奈は、“ハ・ミンジェ”本人と対面する。
「君が、パク・凛奈?」
「うん。でも、どうして“映画の中”に入ったの?」
ミンジェは笑った。
「僕は、もうずっと“本物の自分”がどこにいるのかわからなくなってた。
台本通りに演じ続けて、気がついたら“物語の住人”になってた」
「でも、現実には帰れるよ。あなたは“人間”なんだから」
「……わからない。そもそも俺の人生は、誰かの“脚本”だったのかもしれない」
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■Scene 4:シナリオの罠と“監督の闇”
現実世界では、凛奈の身体が昏倒し、ミンジュたちが焦っていた。
その間、凛奈は“物語世界”でミンジェの記憶に触れていた。
彼は、若手時代に台本をすべてAIに書かせていた監督と契約していた。
そのAIは、俳優の性格や癖、話し方までも“完全にデータ化”して再現するシナリオ生成装置。
「演じる必要なんてない。“お前”のキャラは、すでに完成されているんだから」
「……俺は、あの時から“自由”じゃなかった」
凛奈は言った。
「だから……逃げたんだね。物語の中に」
「でも……君が来たことで、“世界が変わった”。
君は、自分で台詞を書いて生きてるから」
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■Scene 5:選ぶのは、“生身の声”
凛奈は手を伸ばし、ミンジェの手を取る。
「帰ろう。あたしたち、“書かれてない未来”を生きようよ」
その瞬間、世界が赤く染まり、キムチの香りがふたたび舞う。
凛奈とミンジェの意識は、現実へ戻っていった。
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エピローグ:スクリーンに戻った男と、凛奈の呟き
数日後、ハ・ミンジェは復帰会見を開いた。
「あの日、僕は“自分の言葉”で生きることを思い出しました。
台本にはなかった道へ――ありがとう、“探偵”さん」
その映像をテレビで観ながら、凛奈はボソッとつぶやいた。
「やっぱりさ、“ピリ辛”だけど、“本音”が一番だよね」
ミンジュが笑う。
「キムチ食べるたびに世界救ってる女子高生、あんたぐらいよ」
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