第133話:軽井沢アウトレットの夜にて
平穏な夜ほど、何かが起きる予感がする――。
旧軽井沢での事件を解決したその日、私はひとときの休息を求めてアウトレットパークを訪れた。
でも、探偵に“休み”なんて、やっぱりないのかもしれない。
静かな館内に響いた悲鳴、そして、
手にしていたのは――あの“キムチ”。
記憶をつなぎ、真実を暴く。
再び動き出す夜の物語、その一歩を、あなたとともに
■Scene1:静かなはずの夜、再び“事件の匂い”
夕方、旧軽井沢での事件を解決した私は、ひと息つくために軽井沢駅近くのアウトレットパークを訪れていた。
閉店間際の人の少ない空間――それでも、軽井沢の夜風に吹かれて歩く時間は、心を落ち着かせてくれる。
買い物袋を手に歩いていたそのとき、館内に響き渡る悲鳴。
「きゃあああああっ!!!」
人々がざわつき、パーク内の通路が一瞬で騒然となった。
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■Scene2:目撃者と「血」
現場に駆けつけると、アウトレットモール内のベンチに、血を流した女性が倒れていた。
店員と警備員が必死で応急処置をしている。
「この人……さっきまで一緒にいた男が突然刺してきて……」
「“お前の裏切りは許さない”って……」
ポケットに残されていたのは、空になったキムチのパック。
私はその匂いを感じ取った瞬間、視界が暗転した。
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■Scene3:キムチに映る“裏切りの断片”
ひとくち――。
キムチの酸味が舌に広がると、脳裏に別の景色が再生された。
夕暮れのフードコート。
倒れていた女性と、スーツ姿の男が座っている。
「……やっと見つけた。
あんた、会社の金持って逃げたって噂……本当だったのか?」
「違う!私はただ、あなたの……!」
男の手には既に凶器が。
そして、怒りにまかせて手が振り下ろされる瞬間までが再生された。
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■Scene4:容疑者の逃走、そして再会
軽井沢署の戸田刑事が再び登場。
「犯人、まだモールの敷地内にいます。
モール内カメラには逃走する男の姿が――」
私はすぐ、パーク内の動線を逆算した。
「人混みを避けて、駐車場から脱出するはず」
戸田刑事が指示を飛ばし、警官たちが出動。
男は、ちょうど車で出ようとしたところを取り押さえられた。
「探偵復帰、やっぱ本物ですね」
「ふふっ、事件は追いかけてくるみたい」
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■Scene5:容疑者の動機と女性の涙
取り調べによると、容疑者は元恋人であり、被害女性の勤務先の元上司。
会社の金が紛失した件で濡れ衣を着せられ、
その恨みを“彼女の裏切り”と勘違いして暴走してしまったという。
容疑者は泣きながらこう言った。
「彼女を信じるべきだった……
でも、キムチを見るたび、二人で食べたあの時のことを思い出して……狂いそうだった」
私はただ黙って、被害女性の横に座り、そっとティッシュを差し出した。
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■Scene6:再び、星の下で
事件が終わり、モールのライトが落ちた後。
私はベンチに腰掛け、夜空を見上げていた。
「探偵って……やっぱり、逃げられない宿命なのかもね」
手元に残ったキムチのパックが、静かに光っているように見えた。
ふと、凛音からメッセージ。
「映画で話題になってる“小学生探偵”のロケ地が軽井沢から行けるって聞いたよ。
明日、寄ってみたら?」
私は笑って返信した。
「うん。行ってみる。星を見に」
愛と誤解、そして過去の味――
人の心は、ときにキムチのように、
時間をかけて熟し、やがて爆発することがある。
今回の事件は、ただの暴力ではなかった。
信じたかった、けれど信じきれなかった想い。
それが引き金となった、哀しい結末。
でも、誰かがその“本当”に気づけたなら――
きっとまた、前を向けると私は信じている。
次は、星の下で。
新たな出会いと事件が、私を待っている。
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“キムチの記憶”とともに、
まだまだ、物語は続いていきます。どうぞお楽しみに!




