『富山再会編 ― 休業中の探偵、ふたたび歩く』
ご覧いただきありがとうございます。
今回は、かつて事件で関わった富山の人々と、
久しぶりに再会するエピソードです。
2年前、環水公園での事件で出会った
富山県警の舵村本部長、その家族、
そして当時高校生だった眞衣さん――
あの頃から少しずつ時は流れ、
彼らもまた自分の道を歩み始めていました。
今回は事件もキムチもお休みして、
「ただ人として、過ごす時間」。
でもその静かな旅路が、
凛奈にとっては新たな決意に繋がっていきます。
それでは、どうぞお楽しみください。
■Scene1:再び富山へ――懐かしき人たちと
「凛奈ちゃん、富山空港に着いたって?」
スマホの向こうで、懐かしい声が聞こえた。
2年前、あの環水公園での事件の後に別れた富山県警本部長・舵村大輔さんの声だった。
空港出口では、大輔さんと妻の莉嘉さん、
そしてあの時高校生だった娘の**眞衣**さんが揃って迎えてくれた。
「よう、女優さん。今回は事件なしの観光な」
と、笑って手を差し伸べる大輔さん。
私はその手をしっかりと握った。
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■Scene2:眞衣の成長と新しい夢
「もう大学5年目よ。実習も始まってて、忙しいの」
眞衣さんが少し恥ずかしそうに言った。
「でも、私……警察医になろうって決めたの。
だから今は、医師免許取るための最終段階。
父とも母とも違う道だけど、私らしく“誰かを救える仕事”がしたい」
「……かっこいい」
私は素直にそう思った。
莉嘉さんも優しく微笑んでいた。
「この子、真面目すぎてさ。
でも、あんたみたいな探偵がまた戻ってきたら……
一緒に現場に立たせてやってね?」
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■Scene3:富山の新しい景色を歩く
今回は、前とは違うルートでの観光だった。
・岩瀬浜の港町をゆっくり散歩
・富岩運河環水公園では夜景ではなく昼の姿を
・富山きときと市場で旬の海鮮を楽しみ
・富山県美術館でアートと触れ合い
・最後に立山連峰を望む展望台で深呼吸――
「凛奈ちゃん、なんか顔つき柔らかくなった?」
と莉嘉さん。
「きっと、事件のない日々も似合うってことよ」
と大輔さん。
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■Scene4:別れ際の約束
夕暮れが近づく頃、富山駅へと戻る道すがら。
「また来るよ。きっと」
私がそう言うと、大輔さんが腕を組んで笑った。
「次来る時は探偵でな。
俺も警察官として腕が鳴るわ」
「次は私も現場に立つから」
眞衣さんが少し照れながら言った。
莉嘉さんも一歩前に出て、私の目を見つめる。
「……また一緒に、事件を解こうね。
待ってるから、あなたの“復帰”を」
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■Scene5:釜山への帰路、静かな時間
新幹線で空港へ、そして飛行機で釜山へ戻る機内。
窓の外に広がる雲の海を見つめながら、私はそっと心の中で呟いた。
(あの場所にも、あの人たちにも、
“私”を待ってくれる声がある)
探偵ではない、でも探偵だった私。
いまはまだ“戻る”タイミングではないけれど――
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■Scene6:事務所の夜、キムチの瓶を見つめながら
釜山の事務所。誰もいない夜の部屋。
テーブルの上には、いつものキムチの瓶がひとつ。
私は開けることなく、ただ眺めていた。
そして、小さく笑ってひとこと。
「……少しずつ、準備はしておこうか」
誰に聞かせるでもないその言葉は、
やがて私自身の“決意”へと変わっていくのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は「富山再訪編」として、
かつての仲間たちとの再会、
そして事件のない静かな時間を描きました。
探偵として走り続ける人生でも、
ときどき立ち止まって、
「誰かが自分を待っていてくれる」場所に帰る――
そんな時間も、大切なものだと思っています。
眞衣さんもまた、自分なりの道を歩き出し、
次に凛奈が富山を訪れる時には、
きっと彼女も“現場”に立っていることでしょう。
凛奈はまだ、完全に探偵復帰するわけではありません。
でも、静かに「その時」に向けて準備を始めています。
次回は、また別の街で、
彼女の新たな物語が始まります。
また次の舞台で、お会いしましょう。




