第10話:キムチと涙と未来と――そして、私は私を選ぶ ―影との決別、過去との対話、未来への継承。ピリ辛な記憶が導く
■Scene 1:未来からの“最後のメッセージ”
釜山の夜。凛奈は再び、未来から届いたキムチ壺の封を開けた。
中には、赤黒く熟成された1枚のキムチと――一通の手紙が入っていた。
「凛奈へ。
君がこの壺を開けたということは、すべてが終わる準備が整ったということだろう。
これは君だけの物語じゃない。
君の母・梵夜、祖母・夏栄、そして僕――ヒョヌが繋いだ意思の連鎖だ。
さあ、最後の“時空跳躍”へ。
そこで君は“本当の自分”と向き合うことになる」
凛奈は震える手でキムチを口に運ぶ。
「行こう、ヒョヌ……約束したから。未来を変えるって」
青と赤の光が交錯し、凛奈の身体が“すべての時代を跨ぐ”跳躍を始めた。
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■Scene 2:時空融合エリア“クロスフィールド”
凛奈が立ったその空間は、時間の狭間に存在する“クロスフィールド”。
目の前には、2045年の焼け落ちたGLORY本部の廃墟と、1987年の地下研究所、そして現代の事務所が“重なり合う異空間”が広がっていた。
そこで彼女を待っていたのは――もう一人の自分。
“影凛奈”。
「……来たのね、私」
「うん。終わらせに来たよ、全部」
「何を終わらせるの? 人間の不完全さ? 感情の苦しみ? 記憶の喪失?」
「……“人間らしさ”を、切り捨てようとするあなたの全部を」
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■Scene 3:影凛奈との“記憶の決闘”
影凛奈は手を掲げ、凛奈の記憶を次々と映像として浮かべる。
•父と母の笑顔
•初めてキムチを作った日
•姉・信恵と夜中に怖い映画を見た日
•ヒョヌと交わした約束のキス
「これが……あなたの“心”?」
「そうだよ。全部、“あたし”をつくったもの」
「じゃあ壊してあげる。そのすべてを、私の中に“統合”することで」
影凛奈は凛奈に飛びかかり、記憶融合を始める。
ふたりの精神が“記憶の世界”で衝突を始める。
「これは私の記憶じゃない……」
「違う、これは私の記憶……!」
「私がヒョヌと笑ったの!」
「私が夏栄の娘よ!」
「わたしが!私が!わたしが本物――!!」
だがそのとき、凛奈はふと笑った。
「……違う。“記憶”ってね、コピーできても“感情”までは写せないの」
影凛奈の瞳にヒビが入り始める。
「あなたにはないでしょ? “味”の記憶が。ピリ辛のキムチで涙が出た、あの感情が!」
その瞬間、凛奈は“キムチ壺”を影凛奈の胸元に叩きつける。
■Scene 4:すべての時間が戻るとき
光が弾ける。
影凛奈は崩壊し、その中から“ヒョヌの記憶”が抜け出して空中を舞った。
「凛奈……ありがとう。君が、“君自身”を守ってくれた」
「ヒョヌ……!」
ヒョヌの意識は凛奈の記憶と融合し、彼女の中に戻ってくる。
「……帰ってきてくれたんだね」
「うん。“君の心”が、俺の居場所だったから」
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■Scene 5:釜山、現代。日常の始まり
数日後、探偵事務所は平常に戻っていた。
祖母・夏栄はキムチを漬け直し、母・梵夜は久々に韓国ドラマ出演の撮影へ。
兄・泰亨はアイドル活動を続け、姉・信恵は恋に再挑戦していた。
凛奈は、机に向かって日誌をつける。
「私の“記憶”は、世界を変える力を持ってるかもしれない。
でも一番変えられたのは、“自分自身の生き方”だったかもしれない」
今日も市場には、キムチの香りが漂う。
そして凛奈のもとには、新たな依頼者が扉を叩く。
「こんにちは。“キムチ探偵★凛奈”さん、ですか?」
「はい、そうです。ちょっと変わった探偵だけど、よければお話聞かせて?」
彼女は笑って言った。
「ピリ辛で、ちょっと泣ける。でも、それが私の正義です」
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