第129話:夢の国の“2つの遺体”──千葉・ディズニー“同時殺人トリック”の謎
“夢の国”に、死体が二つ――。
東京ディズニーリゾート。
開園前の静寂を破ったのは、ランドとシー、それぞれで見つかった遺体の発見だった。
まるで休んでいるかのような不自然な姿勢。
監視カメラにも映らない、影なき殺人。
この事件に挑むのは、キムチを愛し、記憶を辿る女探偵・朴凛奈。
夢と現実が交差する舞台で、彼女が見抜いた“搬送のトリック”と“壊れた夢の復讐”とは──
シリーズの中でも特別な一編。
あなたも“夢の国の闇”を、共に覗いてみませんか?
■Scene1:開園前の、二つの悲鳴
千葉県浦安市。東京ディズニーリゾート。
まだ夜も明けきらぬ、早朝4時30分。
静寂の園内に、突如、清掃スタッフの叫び声が響き渡った。
「ランドのベンチに……人が倒れてる……!」
「シーの船着き場でも、同じように遺体が……!」
現場に駆けつけた警察が確認したのは、衝撃の事実だった。
•東京ディズニーランド:40代の男性、会社役員。首を絞められて死亡。
•東京ディズニーシー:30代の女性、元女優。頭部を鈍器で殴打されて死亡。
驚くべきは、その死亡推定時刻。
――午前3時30分前後、まったく同じ。
だが、周囲に目撃者はおらず、監視カメラにも不審な姿は映っていなかった。
そんな中、私は現場に呼び出される。
そして、違和感に気づいたのだった。
■Scene2:偽りの“夢”、不自然な姿勢
ランドの遺体は、まるでベンチで休んでいるかのように、穏やかな姿勢で横たわっていた。
ポケットからは、ディズニーの年間パスポート。
一方のシーでも、女性はあたかも眠っているように、うつ伏せで座るように配置されていた。
だが私は、見逃さなかった。
――靴底に付着していた、“濡れた砂”。
「この人たち……ここで殺されたんじゃない」
濡れた砂。つまり、水場のある別の場所。
そして、それが“裏方施設”を意味すると、私は直感した。
どうやって園内に遺体を持ち込んだのか?
なぜ、同時刻に別々の場所に配置されたのか?
私は無意識に、バッグの中からキムチ瓶を取り出し、ひとくち口に含む。
その瞬間――記憶が、私を導いた。
■Scene3:キムチの記憶、“搬送のトリック”
脳裏に浮かんだのは、パークのバックステージ、つまり裏方スタッフだけが行き来できる“秘密の動線”。
遺体は前夜のうちに搬送され、指定の時間に、指定の場所に配置されていたのだ。
まるで舞台の幕開けのように、完璧なタイミングで。
犯人は、ディズニーの委託搬送業者に勤務する男。
そして――被害者ふたりに共通する知人。
三嶋正嗣、39歳。
■Scene4:動機と復讐、“夢の代償”
三嶋はかつて、ディズニーシーでキャストとして働いていた。
誰よりもディズニーを愛し、夢を信じていた男。
しかし、副業で持ちかけられた投資話に騙され、金銭的に破綻。職場も追われ、人生は一変した。
彼を騙したのは――
•会社役員(ランドの遺体):投資詐欺グループの主犯。
•元女優(シーの遺体):その勧誘役。
「2人に“夢”を壊されたんだよ。だったら、俺の夢の場所で終わらせてやろうと思っただけだ」
三嶋は計画的に2人を呼び出し、それぞれをパーク外の倉庫で殺害。
そして、誰もが笑顔でやってくるこの“夢の国”に、まるで偶然のように遺体を配置した。
夢の中に、死を隠す。
――それが、彼の復讐だった。
■Scene5:真相と“夢の国”の涙
三嶋は警察により逮捕された。
だが彼は、最後にこう呟いたのだった。
「俺……ディズニーが好きだったんだよ。
だからこそ、ここでなら……2人の“嘘”も浄化されると思ったんだ」
私はランドとシーを歩いた。
そこには、笑顔の親子たち。
手をつなぐ恋人たち。
夢を信じ、今日という一日を楽しみにしている人々。
「夢の場所にも、現実がある。
でも、それでも“ここを守りたい”って思う人がいるから……この国は成り立ってるのよね」
そう、呟いた。
■Scene6:夕暮れのリゾートライン
帰りのリゾートラインの車内。
窓の外には、夕焼けに染まるシンデレラ城。
私はバッグからキムチ瓶を取り出し、ゆっくりと蓋を閉じた。
「夢の国でも、夢を壊すのは人間。
でも、夢を信じるのもまた、人間なのよね」
次の行き先は、東京都心の豪邸で起きる“眠り姫事件”。
キムチが、永遠の眠りを選んだ令嬢の謎に迫る。
──夢を、諦めない者たちのために。
キムチ探偵・朴凛奈、再び事件の真相へと挑む。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
今回の事件の舞台は、誰もが一度は訪れたことのある「東京ディズニーリゾート」。
あえて“夢の国”という明るい場所で、暗く静かな“現実”を描くことで、
探偵・朴凛奈が見つめる「人の罪」と「人の想い」のコントラストを強く浮かび上がらせました。
「夢を壊したのは人間。でも、夢を信じるのもまた、人間──」
この物語の中で、凛奈が残した小さな言葉が、
あなたの心にも静かに届いていたら、それ以上の喜びはありません。
次回作では、東京都心の豪邸で起きる“眠り姫事件”をお届け予定です。
死の謎に包まれた令嬢と、キムチに導かれる真実の物語──
ぜひ次もご期待ください!
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それでは、また次の事件でお会いしましょう。
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