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第125話:恋と嘘と“告白の夜”──東京・新宿“高校教師刺殺事件”


■Scene1:再会と、深夜の通報


東京・新宿のとあるカフェ。

静かな雨が降り出す前、私は椎名遥香さんと再会した。


「覚えてるかな、凛奈ちゃん。以前、一之瀬と一緒に事件で助けてもらった遥香です」

彼女の声は落ち着いていたが、どこか焦燥が滲んでいた。


「今日、ある子から“自分が人を殺したかもしれない”って相談を受けて……

彼女は教師だった男性と過去に関係があって……でも記憶が、曖昧なの」


――場所は新宿三丁目の小さなバー。

深夜2時、店の奥のトイレで、30代の男性が刺殺されていた。


その被害者は元高校教師・藤宮崇(ふじみや・たかし/36歳)。

既に退職していたが、教え子との“深い関係”が噂されていた人物だった。



■Scene2:椎名遥香と“伝えられた言葉”


現場に向かうタクシーの中で、遥香さんがぽつりと語った。


「直接の知り合いじゃないけど……

私の学生時代の後輩が、今彼女と働いてるの。

その子が“助けを求めてる”って、私に連絡をくれて」


“その子”の名前は安藤美里(あんどう・みさと/22歳)。

短大卒業後、フリーターを続けながら夜の飲食店で働く女性。

彼女は“元教え子”だったとされる存在で、今回の事件後、

自分から警察に出頭してきたという。


「私が、刺したのかもしれない。

でも……覚えてないの。

“先生の言葉”だけが、何度も頭を巡ってるんです」



■Scene3:キムチと、“最後の夜”


私は彼女と短時間だけ面会できた。

美里の目は怯え、そして泣き腫らしていた。


「ねえ……“私が全部悪い”って、誰かに言われた記憶があるの。

 でも、どこまでが事実かも分からなくて……」


私は控室でそっとキムチ瓶を取り出した。


あの日の、あの夜の記憶へ。

――そこには、静かに流れるジャズ。薄暗いバー。

そして、美里は泣きながら座っていた。


「先生、私のこと……全部、利用してたんだよね」


藤宮は答えなかった。

だが、美里がトイレに立った数分後、

店の裏口から、別の“女”が入ってくる記憶が見えた。


その人物は――20代後半。派手な髪色。

藤宮と抱き合い、何かを口論していた。


そして、血のついたナイフを手に、静かに消えた。



■Scene4:もう一人の“女の嘘”


警察との連携のもと、その映像に合致する人物が確認された。


藤宮の元交際相手・片岡沙耶(かたおか・さや/29歳)。

数年前に交際関係にあったが、破局後も執着を続けていた。


彼女はSNSで、美里の存在を執拗に探り、

“新しい女のせいで振られた”という一方的な思い込みから、

復讐心を燃やしていた。


あの夜、美里は藤宮に最後の“絶縁”を伝えに来ただけだった。

そして――“沙耶”が現れたことで事件は動いた。


ナイフを持ち込んだのは沙耶だった。

店を出た後、トイレから出てきた美里が

偶然その場に遭遇した“だけ”だったのだ。



■Scene5:遥香の言葉、私の答え


事件は解決へ向かっていた。


椎名遥香さんは、静かに私の手を取って言った。


「本当にありがとう。

この子は……自分の人生を、“誰かに決められる”べきじゃないのよね」


「うん。誰かの“言葉”じゃなくて、“自分の気持ち”で、生きていいんだよ」


私たちは雨上がりの新宿通りを並んで歩いた。


遥香さんは最後に、こう言ってくれた。


「今度、事件がない時に、また食事しましょう。

あのときのお礼、まだしてなかったから」



■Scene6:恋と告白の、その先に


事件は幕を閉じた。

でも――美里の人生は、これからだった。


私はそっと、最後に彼女にだけこう伝えた。


「“好き”って言葉を武器に使う人もいるけど、

本当にあなたを大事に思う人は、“黙っていても、そばにいる人”だよ」


彼女は涙を浮かべて、小さく頷いた。


私は次の地へ向かうため、新幹線のチケットを確認する。

舞台は――群馬県・草津温泉。


今度は、“湯けむりの中で起きた誘拐事件”が、私を待っていた。



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