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第120話:春の境界線──関東事件録・終着駅のカフェにて


■Scene1:上野駅から始まる小さな旅


私は久しぶりに、誰にも会わず電車に乗った。

向かったのは上野――今はロケでも仕事でもない、“ただの散歩”。


でも、駅を出てすぐの小さなカフェで、偶然彼と再会した。

舵村本部長。


「やあ、凛奈ちゃん。ここが“今回の終着駅”か」

「そうかも。でも……まだ続く気もしてるんです」


私は素直に言った。

「探偵業を休んだはずだったのに、いつのまにかまた事件を追ってて」



■Scene2:舵村との“報告会”


舵村は、私が関東で関わった事件の報告をじっと聞いてくれた。

失踪、偽装心中、密室、演奏家の死――

彼は言った。

「君が動いてる限り、“キムチ”も動いてるんだろうね」


「……まさか、私の人生、キムチに操られてる?」

「いや。君がキムチを使うって、キムチが信じてるのさ」


私は、吹き出して笑ってしまった。

「なんですかその名言みたいなセリフ」



■Scene3:キムチと境界線


私たちはしばらく、駅前のベンチで過ごした。

春の風が柔らかく頬をなでる。


「これで一区切り。じゃあ……また女優に戻るんですか?」

舵村の問いに、私は一瞬迷って――こう答えた。


「探偵でも女優でも、やることは一緒。

 “誰かの心をのぞいて、その奥の真実に触れること”」


だから私は、もう迷わない。



■Scene4:春、そして小さな旅の終わり


私は改札を抜けて、電車に乗る。

次の目的地は、まだ決めていない。

だけど――


車窓に映る桜並木と、鞄の奥のキムチ瓶が、

どこかあたたかく、優しく揺れていた。



■Scene5:手帳の最後の1ページ


私はそっと、関東旅の最後のページにこう記した。


『探偵か、女優か。それより大事なのは、何を選ぶかじゃなく“どう生きるか”。』


ページを閉じる音が、意外と重たく感じた。



■Scene6:プロローグへと還る


その夜、事務所に戻ると、父・洋佑と母・梵夜が出迎えてくれた。

「おかえり」

「長旅だったね」


でも、私の鞄には、まだキムチ瓶がひとつ残っている。

それが意味することは、たぶん――まだ、“終わっていない”。



最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

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