第119話:消えたバイオリンと無音の夜──横浜・山手“音楽家殺害事件”
■Scene1:山手の丘とひとつの悲鳴
神奈川県・横浜市山手。洋館が立ち並ぶ高台の住宅街。
私は取材ロケで訪れていたが、その夜、急に事件が起きた。
「近くの演奏家が殺されました」
被害者はヴァイオリニスト・三条涼真(34)。
彼の自宅兼音楽サロンで“ホーム演奏会”中に遺体で発見された。
だが奇妙な点があった――
**その夜、演奏会で“音楽が一切聴こえなかった”**というのだ。
「弦が鳴らなかった?」「無音のバイオリン?」
私は、違和感に目を細めた。
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■Scene2:最後の演奏と、聴こえない旋律
演奏会に出席していたのは常連客5人。
誰もが「演奏は始まったのに、何も聴こえなかった」と言う。
遺体には外傷も毒物反応もない。だが、右手はバイオリンの弓を握っていた。
バイオリンそのものは、どこにも見当たらない。
――音が消えた夜。
その謎を解くため、私は静かにキムチ瓶を取り出した。
「音も、記憶も、きっと残ってる」
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■Scene3:キムチが聴いた“最後の曲”
過去に遡ると、三条は演奏の直前、ある女性と話していた。
ピアニストの神代ひかり(かみしろ・ひかり)。
「あなたは、あの子の命を奪った。償いなさい」
彼女の妹はかつて三条の指導を受けていたが、自殺未遂を起こしていた。
その責任を問いに来たのだった。
三条は返す。
「僕は、音楽を教えただけだ」
直後、何かを飲まされ、ゆっくりと倒れた――
彼の手から、バイオリンが滑り落ちる。
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■Scene4:無音は“罪の証”
神代は彼を殺害後、バイオリンを持ち去り、
その音が“響かなかった演奏会”に仕立て上げたのだった。
彼の“最後の音”を聴かせずに、死を迎えさせた。
「あなたには、音楽を名乗る資格なんてなかった」
だが、キムチで視た過去では、三条が亡くなる直前に静かに一節を奏でていた。
“亡くなった教え子が最後に書いた楽譜”だった。
彼もまた、罪を背負っていた。
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■Scene5:夜の山手、静かに響いた旋律
私は神代に言った。
「彼は、亡くなった妹さんに謝りたかった。
でも、それを“音”でしか表せなかった。
だから……あなたには、その旋律を聴いてほしかった」
私は手帳に残された楽譜をコピーして、神代に手渡す。
泣きながら彼女は鍵盤に手を置いた。
静かに、静かに――音が流れ始めた。
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■Scene6:横浜の風と、聞こえなかった音
事件は終わった。だが、真実は“音の外側”にあった。
私は高台の洋館を離れ、港の見える丘公園を歩いた。
手帳にはこう書いた。
『音が消えても、想いは残る。沈黙もまた、証言になる』
鞄の中のキムチ瓶が、少しだけ軽く感じた。
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